チートスキル『死者蘇生』が覚醒して、いにしえの魔王軍を復活させてしまいました〜誰も死なせない最強ヒーラー〜

ノベルバユーザー364546

《死者蘇生》発動!

「俺は……何で死んでないんだ……?」

 リヒトは、崖の下で何事もなかったかのように目覚める。
 記憶を失っているということはない。
 しっかりと、心臓を突き刺されて崖から落とされたという過程を覚えていた。

「処刑失敗? いや、そんなはずはないよな……」

 リヒトの中で真っ先に出てきた考えは、すぐさま自分に否定される。
 あれだけ確実な処刑方法でミスをするなど、ど素人でも有り得ないだろう。

 崖の高さも200メートルはくだらない。
 普通なら、ここから落ちただけで確実に死んでいるはずだ。

「――傷が無い? どこにも無いぞ! 何で……?」

 そこでリヒトは、自分が全く怪我をしていないことに気付く。
 200メートルの高さから落ちたのにも関わらず、かすり傷一つ見当たらない。
 そもそも、心臓を貫いた傷も完全に塞がっていた。

「まさか……」

 この現象――実は一つだけ心当たりがある。

「《死者蘇生》のスキルに似てる……」

 リヒトのスキルである《死者蘇生》にそっくりだったのだ。
 これまでに何度も使ってきたスキルだが、蘇生させられた相手は、今回のリヒトのように万全の状態で蘇ることができる。

 《死者蘇生》が使用されたとしか思えなかった。

「――一体誰が……いや、このスキルを使えるのは俺しかいないはず」

 リヒトは困惑する。
 この世界に、全く同じスキルは存在しないはずだ。

 そもそも、この場にはリヒト以外誰もいなかった。
 こうなると、自分が自分に《死者蘇生》を使用したとしか思えない。

「自分が死んだ時にも発動するのか。初めて知った――って、当たり前だけど」

 結局、リヒトはそう結論付ける。
 自分で自分をツッコめるほど、リヒトの心は落ち着いていた。

「とりあえず、どこかに行かなくちゃ……」

 現状を把握したリヒトは、ひとまずこの処刑場から離れる。
 国にはもう帰れないため、どこかに身を隠すかしないといけない。
 追われるようなことはないだろうが、見つかってしまえばまた処刑されるだろう。

 安全な場所が必要だ。
 そして、その当ては一つだけあった。

「よし、ダンジョンに行こう」

 このリヒトの判断が。
 後に人間界を苦しめる魔王軍の始まりになる。

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