乙女ゲームの村人に転生した俺だけど悪役令嬢を救いたい
終わりの始まり
「怪しいものではありません、ゾンダル家令嬢アンジュ様を救出してお屋敷にお連れするところです」
ビィティがそう言うと一人の兵士が前に出て眼鏡をあげまじまじとアンジュを見て検分する。
「隊長様、確かにあのお方はアンジュ様です」
「分かった、だが魔法使いなら王都周囲30kmは飛行禁止区域なのを知らぬわけはあるまい?」
「すみません私は魔法使いではなく精霊使いなのです」
ビィティの言葉に兵士達が揃って笑い出す。だが隊長のにらみで兵士達はたたずまいを正し真剣な表情に戻る。
「嘘を言うならましな嘘を言え、精霊使いが飛べるなど聞いたことがない。今ので貴様は不審人物と言うことになる。取り押さえよ」
「「「ハッ!」」」
「逃げて!」
アンジュが手を両手に広げ兵士がビィティへ向かうのを阻止する。下手に公爵家令嬢を傷つけるわけにはいかない兵士達はビィティ捕縛に二の足を踏む。
「アンジュ様、これは国法でございます。公爵家のご令嬢とは言えど、犯罪者を庇いだてすれば罰せられますよ」
「ビィティ、私は良いから早くいって!」
「だけど」
「馬鹿! バッドエンディングにはちょうどいいでしょ!」
「分かった必ず迎えに来る」
ビィティはそう言うと約束をした小指を立て上空へと飛び去った。
「待ってるから!」
アンジュにサムズアップして答え、ビィティは来た道を逆戻りする。数発の砲撃があったが、ベルリの水の壁が防ぐと射程距離外に出たのか王都からの砲撃は鳴りやんだ。
ビィティはそのまま王都から離れるとカルロス博士の元へと向かった。2ヶ月間兵士達に物資を送る拠点として使わせてもらうつもりだ。もちろんその間に古代の知識を手に入れるつもりだ。
『しかしあいつらなんなんだよ送り届けてやったのによ』
『でちゅ』
二体の精霊が憤慨しながら王都の方を睨み付ける。
「まあ、法律じゃ仕方ないよ。知らなかった俺が悪いし」
しかし、また収穫があった。精霊使いは飛べない。飛ぶのは魔法使いだと言うことだ。
『メアリーワールド』のアンジュは魔法使いだ。子供のときから才能があって頭角を表していたと言う設定で。
マップを一瞬で移動する手段を飛行魔法と言う解釈をこの世界がしたのかもしれない。
だから魔法使いは空を飛べるのだろうとビィティは解釈した。
だが、杏子が演じるアンジュには魔法の才能は一切無い。正直今までよく生き残れていたなとアンジュの強運にビィティは感心する。
数時間、空の散歩を楽しんでいるとカルロス博士の小屋が見えてきた。
ワンワンとうるさく吠える犬のお出迎えに1回会っただけじゃ味方判定はしてくれないかと残念そうに頭を撫でる。
もちろん噛まれたのは言うまでもない。
怒る二体の精霊をなだめ小屋に入るとカルロス博士が作業をしておりビィティが入ってきたのも気がつかないほど集中していた。
声をかけるのも悪い気がしてビィティは椅子に座ると作業風景を眺めていた。
小一時間した頃、博士が額の汗を脱ぐり「完成だ」と呟いた。
「何ができたんですか先生」
「お! いつのまに来たんじゃ。ビックリさせおって。いや、ちょうどいいところに来た。ゴーレムが完成したんじゃ」
ビィティはアーティファクト精霊の修理ができたのかなと思っていたので少し残念そうな顔をする。
「そんな残念そうな顔をするな。あれはまだ研究中だ」
博士の話ではアーティファクト精霊の技術を解明してゴーレムが完成したとのことなので、一歩ずつだが進んでいるようなのでビィティはホッとする。
「よし動かすぞ」
組んでいた回路をゴーレムに繋げると起動する。
『ハジメマシテ ワタシ ハ……。アナタ ノ スキ ナ ナマエ ヲ ツケテ ネ』
博士とビィティはずっこけた。
「まあ、そうじゃろうな。遺物じゃなくてワシが作ったんだから。どうだビィティ、お主がつけてみるか」
「いいんですか? では、セフィーロで」
ビィティの考えた名前に博士は腕を組み考える。だが出した答えは否である。
「却下じゃ。その名前はダメな気がする」
「そうですか?」
「じゃあロボ子で」
「何となくありきたりな気がするな」
「うーん、ゴーレムからゴーを抜いてレムでどうでしょうか?」
見た目は操り人形のような感じだが顔だけは人間に近く作られている。髪の毛がないので今度青髪のカツラをプレゼントしますよと博士に言うとビィティは頭を殴られた。全く理不尽だと思ったが先生なので言うことを聞くことにして緑色のカツラを買ってくる約束をした。
「よし今日からお前の名はレムだ。ワシの名前はカルロス、こやつは弟子のビィティだ」
『かしこまりましたカルロス様、ビィティ様』
「「……」」
いきなり流暢に話し出すレムに二人は驚く。レムいわく元々カルロス博士と同等の言語能力はあって、二人のボケ突っ込みを聞いて調整したと言うのだ。
ビィティは完全にこの時点で頭の良さではレムに及ばないことを実感して勉強の先生になってもらった。
そして2か月後、兵士達を救出した。ビィティは王都へ向かった。今度はベルリの水の幕で姿を隠しながら低空飛行で王都へ向かったので気づかれずに侵入することができた。
ゾンダル邸の場所を探しだし到着すると、あまりの広さにビィティは驚く東京ドームくらいの面積があるのだ。ちなみにこの王都にある住まいは別邸なので自分の領地にある屋敷は城なのである。
ビィティはクリンに頼んでアンジュを探し出すとアンジュの回りには多数の兵士が取り囲んでいるそうなので幽閉されているには明らかだった。
アンジュのそばから人が離れるのを待ってビィティは部屋に突入しアンジュを連れ出した。
「待たせてごめん」
「すっごい退屈だった!」
そう言ってビィティの首をヘッドロックするアンジュはすごく良い笑顔をしていた。
―第2章 完―
ビィティがそう言うと一人の兵士が前に出て眼鏡をあげまじまじとアンジュを見て検分する。
「隊長様、確かにあのお方はアンジュ様です」
「分かった、だが魔法使いなら王都周囲30kmは飛行禁止区域なのを知らぬわけはあるまい?」
「すみません私は魔法使いではなく精霊使いなのです」
ビィティの言葉に兵士達が揃って笑い出す。だが隊長のにらみで兵士達はたたずまいを正し真剣な表情に戻る。
「嘘を言うならましな嘘を言え、精霊使いが飛べるなど聞いたことがない。今ので貴様は不審人物と言うことになる。取り押さえよ」
「「「ハッ!」」」
「逃げて!」
アンジュが手を両手に広げ兵士がビィティへ向かうのを阻止する。下手に公爵家令嬢を傷つけるわけにはいかない兵士達はビィティ捕縛に二の足を踏む。
「アンジュ様、これは国法でございます。公爵家のご令嬢とは言えど、犯罪者を庇いだてすれば罰せられますよ」
「ビィティ、私は良いから早くいって!」
「だけど」
「馬鹿! バッドエンディングにはちょうどいいでしょ!」
「分かった必ず迎えに来る」
ビィティはそう言うと約束をした小指を立て上空へと飛び去った。
「待ってるから!」
アンジュにサムズアップして答え、ビィティは来た道を逆戻りする。数発の砲撃があったが、ベルリの水の壁が防ぐと射程距離外に出たのか王都からの砲撃は鳴りやんだ。
ビィティはそのまま王都から離れるとカルロス博士の元へと向かった。2ヶ月間兵士達に物資を送る拠点として使わせてもらうつもりだ。もちろんその間に古代の知識を手に入れるつもりだ。
『しかしあいつらなんなんだよ送り届けてやったのによ』
『でちゅ』
二体の精霊が憤慨しながら王都の方を睨み付ける。
「まあ、法律じゃ仕方ないよ。知らなかった俺が悪いし」
しかし、また収穫があった。精霊使いは飛べない。飛ぶのは魔法使いだと言うことだ。
『メアリーワールド』のアンジュは魔法使いだ。子供のときから才能があって頭角を表していたと言う設定で。
マップを一瞬で移動する手段を飛行魔法と言う解釈をこの世界がしたのかもしれない。
だから魔法使いは空を飛べるのだろうとビィティは解釈した。
だが、杏子が演じるアンジュには魔法の才能は一切無い。正直今までよく生き残れていたなとアンジュの強運にビィティは感心する。
数時間、空の散歩を楽しんでいるとカルロス博士の小屋が見えてきた。
ワンワンとうるさく吠える犬のお出迎えに1回会っただけじゃ味方判定はしてくれないかと残念そうに頭を撫でる。
もちろん噛まれたのは言うまでもない。
怒る二体の精霊をなだめ小屋に入るとカルロス博士が作業をしておりビィティが入ってきたのも気がつかないほど集中していた。
声をかけるのも悪い気がしてビィティは椅子に座ると作業風景を眺めていた。
小一時間した頃、博士が額の汗を脱ぐり「完成だ」と呟いた。
「何ができたんですか先生」
「お! いつのまに来たんじゃ。ビックリさせおって。いや、ちょうどいいところに来た。ゴーレムが完成したんじゃ」
ビィティはアーティファクト精霊の修理ができたのかなと思っていたので少し残念そうな顔をする。
「そんな残念そうな顔をするな。あれはまだ研究中だ」
博士の話ではアーティファクト精霊の技術を解明してゴーレムが完成したとのことなので、一歩ずつだが進んでいるようなのでビィティはホッとする。
「よし動かすぞ」
組んでいた回路をゴーレムに繋げると起動する。
『ハジメマシテ ワタシ ハ……。アナタ ノ スキ ナ ナマエ ヲ ツケテ ネ』
博士とビィティはずっこけた。
「まあ、そうじゃろうな。遺物じゃなくてワシが作ったんだから。どうだビィティ、お主がつけてみるか」
「いいんですか? では、セフィーロで」
ビィティの考えた名前に博士は腕を組み考える。だが出した答えは否である。
「却下じゃ。その名前はダメな気がする」
「そうですか?」
「じゃあロボ子で」
「何となくありきたりな気がするな」
「うーん、ゴーレムからゴーを抜いてレムでどうでしょうか?」
見た目は操り人形のような感じだが顔だけは人間に近く作られている。髪の毛がないので今度青髪のカツラをプレゼントしますよと博士に言うとビィティは頭を殴られた。全く理不尽だと思ったが先生なので言うことを聞くことにして緑色のカツラを買ってくる約束をした。
「よし今日からお前の名はレムだ。ワシの名前はカルロス、こやつは弟子のビィティだ」
『かしこまりましたカルロス様、ビィティ様』
「「……」」
いきなり流暢に話し出すレムに二人は驚く。レムいわく元々カルロス博士と同等の言語能力はあって、二人のボケ突っ込みを聞いて調整したと言うのだ。
ビィティは完全にこの時点で頭の良さではレムに及ばないことを実感して勉強の先生になってもらった。
そして2か月後、兵士達を救出した。ビィティは王都へ向かった。今度はベルリの水の幕で姿を隠しながら低空飛行で王都へ向かったので気づかれずに侵入することができた。
ゾンダル邸の場所を探しだし到着すると、あまりの広さにビィティは驚く東京ドームくらいの面積があるのだ。ちなみにこの王都にある住まいは別邸なので自分の領地にある屋敷は城なのである。
ビィティはクリンに頼んでアンジュを探し出すとアンジュの回りには多数の兵士が取り囲んでいるそうなので幽閉されているには明らかだった。
アンジュのそばから人が離れるのを待ってビィティは部屋に突入しアンジュを連れ出した。
「待たせてごめん」
「すっごい退屈だった!」
そう言ってビィティの首をヘッドロックするアンジュはすごく良い笑顔をしていた。
―第2章 完―
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