乙女ゲームの村人に転生した俺だけど悪役令嬢を救いたい

白濁壺&タンペンおでん

やっと会えたね

 白い氷の天井がキラキラと輝いて幻想的な風景を作っていた。
 温もりが身体を包み冷えたビィティの身体を暖める。
 横を向くとアンジュに皮の敷物で包まれビィティを抱き締め体温で身体を温められていた。

「ビィティ、目が覚めた?」
『あるじぃ!』
『ご主人ちゃま!』
 そう叫んだのは二体の見たことがない魚の精霊と鳥の精霊だった。
 その姿はまるでアニメやゲームの世界から飛び出したような姿だった。
 だが、契約しているビィティにはその二体の精霊がベルリとクリンなのはすぐにわかった。

「なんで、二人とも、そんな姿に……」
『そんなことよりあるじぃが生きてくれててオレは嬉しいよ』
『絶対に離れないでちゅ』

 ベルリとクリンがクルクルとビィティの頭の上を回り目が覚めたことを喜ぶ。だがビィティが目を覚ましてすぐ二体は元の姿に戻った。

「なにが、起こっているんだ?」

「それは後で説明するわ。それよりビィティ、低体温症で身体が氷のように冷たかったよ。身体は動く?」
「う、ごかない……」
 腕を動かそうとするビィティの手をそっと握り、アンジュはビィティの手を元の位置に戻す。

「まだ末端は暖められないから、無理しちゃダメよ」
 その言葉にビィティは頷く。背中の傷は倒れてすぐにベルリが回復してくれたとのだと言う。ベルリにお礼を言うとビィティは身体をガクガク震わせる。まだ十分に温まっていないのだ。

 ビィティは火をつけようとバッグを探したがすでに焚き火があることに今更気がつく。アンジュが薪に火をつけることができたことに驚いた。
 アンジュは公爵令嬢といっても中身は自分と同じ日本人なのだから当然かと納得する。

「火、着けられたんだね」

「うん、クリンちゃんに協力してもらって着けたの、ビィティのアイテムバックから色々拝借したからね」
 よく見るとアイテムバックから、すべてのアイテムが放出されて端に山積みにされていた。
 アイテムバッグに気がついたことにも驚いたが、何よりクリンが言うことを聞いたことにビィティは驚きを隠せなかった。

「なんで、二人が、アンジュの言うことを、聞いたんだ?」
 動かない口を動かしなんとかアンジュに聞くが、アンジュにとってそんなことはビィティの命よりも優先順位が低いのであとで説明するからと言うと酒の瓶を取り出した。

「口移しで少し身体にお酒入れるわね」
「まて、自分で飲む」

「恥ずかしがらないの人命救助なんだから」
「ちが、俺には好きな人が――-」
 アンジュはビィティの話を最後まで聞かないで瓶から直接ブランデーを口に含み、口腔内へと酒を流し込む。
 柔らかい唇がビィティの冷えきった唇を暖める。
 ゆっくりと流し込まれる酒を味わう余裕もなく、ビィティは喉を動かし身体の中へと酒を導く。

 師匠のとっておきなのにとブランデーのラベルを見てアンジュに口移しで飲まされていることを救命措置だからと深く考えないようにした。

 飲み終わるとビィティはそっぽを向く。

「ビィティ、私を拒絶しないで」

「……拒絶はしてない、ただ、頑張れば自分で飲めたと思う。いや、ちがうな。……ごめん、ありがとう」
 これほど献身的に尽くすアンジュが、本当に痴漢冤罪で人を罪に陥れるだろうかと疑問がわき出る。もしかしたら本当に痴漢にはあっていて挙動不審な自分を犯人だと勘違いしたのかもしれないと。
 ビィティは意を決して聞くことにした。

杏子アンジュは死んだとき、本当に痴漢被害にあったのか?」

「ん? 違う違う。私はね痴漢にされそうな人がホームに落ちるのを助けたときに助けきれずにそのままホームから落ちちゃって、そのまま電車に轢かれて死んじゃったのよ」

「え、助けた方?」

「そうだよ。だって私はいつもあの人を見てたし、それ以前に絶対痴漢なんかする人じゃないの知ってるから」
 ビィティの心臓の鼓動が高鳴る。さっきまで被害者だと思っていたのに、自分が今度は加害者になったからだ。
 杏子アンジュは冤罪を作り上げた方の女性じゃなく自分を助けようとした女性で、その助けようとした手を掴まなければ杏子アンジュは死ななかったんだと頭の中で自分を責める声が渦巻く。

 杏子アンジュ明人ビィティが殺したのだ。

「どうしたの?」

「すまない……、俺だ、俺が杏子アンジュを殺したんだ」

「……」

「あのとき、君の手を引いたのは俺なんだよ」

「やっぱり、あなたがそうだったんだ。明人あきとさん……。やっと会えたね」
 そう言うとアンジュはビィティを抱き締めた。
 杏子アンジュ明人ビィティを生前から知っていた。そしてビィティを見たとき明人あきとだと直感がささや いていたのだ。だからこそアンジュはビィティに惹かれたのだった。

 

 

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