乙女ゲームの村人に転生した俺だけど悪役令嬢を救いたい

白濁壺&タンペンおでん

イケメンにもツンデレってあるのかな?

 馬車はクリンの風に後押しされ、風が空気のベールを作り空気抵抗がほぼ無い状態で走ると、あっと言う間にマルベクの町が見えなくなった。

「俺たち助かったのか?」
 御者席で馬車を操車するヴィックスがビィティに確認するように聞く。
 危機を脱したようだと言うビィティの言葉に彼はホッと息を吐き肩の荷を下ろす。
「安心するのは早いぞ、まだやつらのテリトリーだろうからな」

「わかってるよ。と言うか僕も貴族の子弟なんだから、ちゃんと敬語使えよな」

「ああ、そうなのか申し訳ないです」
 ビィティは大袈裟に腕を前に持ってきて礼をする。

「まあ良いけどさ。僕たちは、と、友達だしな」
 ヴィックスの話を受け流しつつビィティは周囲警戒を怠らない。
 クリンの探索でも数百mしか分からないので気が抜けないのだ。
「なんか言ったか?」

「……僕はさ、お前に嫉妬してるんだよ」
 急に自分語りをするヴィックスに緊張の欠片もない奴だなとビィティは心配になる。

「なんだ藪から棒に」

「お前さ、僕と年齢はそれほど変わらないだろ? それなのにあんなに強くてさ。僕だって剣術の稽古を毎日死に物狂いでしてたんだ。だけど……戦えなかった」
 一度目も二度目も泣いて震えてたヴィックスを特に恥ずかしい行為だとは思ってたなかったので、貴族の坊っちゃんにも悩みはあるんだなとビィティは最初の頃よりも親しみ易いかなと思う。

「べつに気にすること無いんじゃないか? 相手は俺たちよりはるかに大きい大人だし。盗賊なんて人殺しが当たり前にいる連中だろ? 怯えるなって方が無理な話だよ」
 だがビィティの答えにヴィックスは納得をしない。

「……お前は怯えてなかったろ、さっきも盗賊に殴りかかってたし」

「うん、頑張った!」

「プハハハ、なんだよそれ」
 元気いっぱいに言うビィティのその一言にヴィックスは腹を抱えて笑うので馬が驚き馬車が揺れる。

「おい、ちゃんと操車しろヴィックス!」
 後ろの席からメルリィが荒い運転をするヴィックスを叱る。
「ああ、すまない」
 そう言うとビィティの方に顔を向け舌を出す。

「まあさ、それが心理なんじゃないか? 人なんて言うのはそれほど能力に差がない、どれだけ頑張ったかが重要なんだよ。今日が駄目だったら明日頑張れば良いし。明日も駄目なら明後日頑張ればいい。頑張ってたら、いつか駄目じゃないときが来るよ」

「来なかったら?」

「駄目なのに頑張った俺スゲーで良いじゃん。そんときは俺が誉めてやるよ」

「そうか……そうだな。なんか吹っ切れたよ。ありがとう」

「はい、気にしなくて良いでございますよ」
 ビィティは腕を前に置きヴィックスに向かい軽く会釈する。

「敬語は使わなくて良いよ。それにお前の敬語なんかムカつくし」
 ヴィックスは頬をリスのように膨らませて怒る、こいつ以外とかわいい奴だなとビィティがニヤニヤしていると、ヴィックスが肘鉄をビィティに喰らわして「なにニヤケてんだよ」と不快感を示す。

「良いけど、あとで気安いとか怒るなよ?」

「怒らないよ、と、友達だろ?」
 ヴィックスは顔を真っ赤にしてそっぽを向く。もちろん危ないのでビィティはヴィックスの顔を正面に向かせて、よそ見運転は危ないと空気を読めない発言をする。

「お前、名前何て言うんだよ」
 そう言えば気絶してるときに自己紹介してるからヴィックスは自分の名前、偽名だけど知らないのかと、メルリィにみっともなく担がれ馬車に投げ捨てられた姿を思いだしビィティはクスリと笑う。

「なんだよ名前聞いただけで笑うこと無いだろ」

「ああ、すまない思い出し笑いだ。俺の名前はアルバだよろしくなヴィックス」
 友達だと言う人に偽名を言ったときビィティの胸がチクリと痛んだ。

「だけど王都でタメ口を聞くと罰せられるからな、気を付けておけよ、俺が良いと言っても許されない世界だから。二人きりの時は構わないけどな」
 まだ逃げ切れたわけでもないのにもう王都の話をしてるのかと呑気なヴィックスにビィティは呆れると同時に希望が湧いてくる気もした。
 このくらい楽天的な方が人生の道も切り開けるのだろう。

「言っとくけど伯爵家未満の子弟は友達にならんからな。まあ、冗談だけど」

「ふふん、それなら問題ない、うちの家は由緒正しい伯爵家だ」

「そうなのでございますか!」
 ビィティはお代官様にお辞儀する平民のように正座をして頭を下げる。

「殴るぞ」

「冗談だよ冗談」
 ビィティは起き上がると右手を左右に振り今のは冗談だと言うアピールをする。

「でもヴィックスが伯爵家だとするとメルリィもそれなりに高い地位の家柄なのか?」

「いや、あいつは平民だよ」

「そうなのか?」

「ただ、あいつはかなり高貴な家の出だと思う。どこかの王女クラスの」
 ヴィックスがそう思う理由を聞くと、あらゆる知識に精通しており魔法学にも長けているのだと言う。
 そこまでの知識は平民には得ることはできないし、上級の貴族でも家を出るものにそこまでお金をかけないと言う。

「すごい割りには盗賊にやられてたな」

「魔法は発動まで時間がかかるからな。不意打ちには対応しきれないし何より俺と同じでビビってた」

「メルリィがか?」

「ああ、お前が助けにきたとき混乱してて『なんで、なんで』と騒ぎまくってたぞ」
 沈着冷静が服を着ているような彼女がそこまで取り乱す状態だったかと疑問に思うものの、クラリスのことになると冷静さを無くすので自分を危険人物として認識したのかもしれないなとビィティは納得した。

「そんなことより、そろそろ馬車の中に入れよ」

「警戒してるから外で大丈夫だ」

「違うんだよ。先程から姫様がお前のこと気にしてるんだ。中に入って安心させてこい」
 そう言われ、後ろを見るとビィティはクラリスと目が合いニコリと微笑む。
 クラリスは顔を赤らめると口を尖らせてうつ向いた。

「分かった、見えないだろうけど、一応精霊は置いておくから安心して良い。クリン、警戒しつつこいつを守ってくれ」
『あいでちゅ』
 名前を言っても分からないクリンに指を差して教えると。こいつとか酷いなとヴィックスがしょげる。
 名前を覚えられない精霊のためだと理由を教えてやると「そうなのか!」と喜ぶあたりマジかわいいなこいつとビィティはヴィックスの肩をパシリと叩く。

「ふふん、礼は言わないぞ。友達だからな」

「馬鹿、親しき仲にも礼儀ありと言う言葉を知らないのか?」

「なんだそれは?」
 そんなんだから友達ができないんだぞとゲーム時代のヴィックスを思い出しながら仏頂面のヴィックスと言うあだ名を思い出す。

「とりあえず友達でも礼はした方が良いと言うことだ。人生が変わるぞ」

「ふむ、そうなのか? 分かった友達の言葉だ信じよう。ありがとうビィティ」
 イケメンでいけすかなかったヴィックスが素直だとこうもかわいいとは、これがツンデレの魔力と言う奴かとビィティはウンウンと納得する。

 もういいから行けと言うヴィックスにハイハイと敬礼してビィティは馬車の縁を伝い後部座席へ向かう。中に入ろうとするとメルリィが扉を開けてくれ中へ迎い入れてくれた。
 風のベールのお陰で吹き飛ばなかったが、無かったら開けた瞬間吹き飛んでたぞとビィティはクラリスに注意する。

 それを見てメルリィが怒るがクラリスは素直に謝りビィティを隣に座らせる。

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