乙女ゲームの村人に転生した俺だけど悪役令嬢を救いたい

白濁壺&タンペンおでん

旅篭町マルベク

 馬車は何事もなく進み旅籠町マルベクにたどり着いた。
 ここは港町と貿易都市の中間地点にあり、安全に休むために作られた旅籠町で旅館いくつも建ち並ぶ。
 この町はテッドスコルピオン団にミカジメ料を払っているおかげで襲われることはない。

「申し訳ない、私は宿の手配をしてくるので、その間姫様の護衛を任せる」
 デオゼラはビィティにそう頼むと旅館街の方へ消えていった。
 兵が二人馬車の周りに立っているが、護衛が出来るほどの実力は無い。
 周囲を確認すると所々に露店商がおり結構な人がいて繁華街のように賑わっていた。
 これではこちらを監視しされていても分からないと思ったビィティは精霊たちを使い怪しい奴がいないか監視させた。

『おい、あるじぃ、こっち見張ってる奴が何人かいるぜ』
『五人でちゅ』

 地上の捜索能力においてはクリンの方が優秀なので完全に敵を把握できている。ベルリは数まで言われて悔しそうな顔をする。
 魚顔なので分からないが。
 念のためビィティはデオゼラにベルリをつけさせ、もし何かあるようなら助けてやれと護衛を命じた。

「ちょっとごめん」
「おい貴様、どこに行く気だ。姫様の護衛をちゃんとせんか!」

「馬車の外にいるから心配しなくても良いよ」
 騒ぐヴィックスを放っておいてビィティは監視してる人間を確認する。
 できるだけ目を会わせずにクリンに言われた人相の人間を見ると確かに怪しい動きをしていた。
 

「クリン、マーキングみたいなことできるか?」
『風をまとわせとくでちゅ』
 風をまとわせとくことで纏っている人間の動きが手に取るように分かるとクリンは胸を張る。
 鳥胸で張るような胸はないが。

 しばらくしてデオゼラが小走りで帰ってくると皆を宿屋へ案内する。

 兵士二人にはこのまま馬車の警護をさせると言うデオゼラに、兵士は不満げな表情するとデオゼラの叱責が飛ぶ。まるで苛立ちを八つ当たりするように。

 宿はこの町では一流の部類にはいるが二階建ての質素な作りの宿屋だった。
 普通一流と言えば三階建て以上で石作りの建物だが、ここにはそう言う建物はない。

 クラリスの部屋は一番奥の角部屋でデオゼラとヴィックスその前の部屋。ビィティは姫たちの横の部屋を取り囲うような部屋割りになっている。
 メルリィはクラリスと同室で護衛をすると言う。

 食事は宿屋の給仕が持ってきてくれて、各自部屋で食事をすることになった。
『眠り草入りでちゅ』
 クリンが眠りそうに気がつき注意勧告する。

「まあ、普通に考えたら盗賊に金を払ってる町だ、当然繋がっていると考えるのが妥当だよな」

『あるじぃどうするんだ』

「この眠り草の成分だけ抜けるか?」

『それなら任せろ、オレができるぞ』
 役に立てそうな予感にベルリは騒がしく宙を舞う。

「じゃあベルリ頼む。みんなの部屋の食事も一緒にな」

『おう、まかせとけよ』

 ベルリが食事から眠り草の成分を取り出すと、その成分は空中で小さな玉になり浮いていた。

「これで食べても大丈夫なのか?」

『おう成分取ったから大丈夫だぞ』

「ありがとうな」
 ビィティがそう言うとベルリは照れて彼の頭の上を旋回する。
 他の部屋も早く行けと怒ると少しふてくされて壁を抜けて行った。

「壁抜けられるんだ?」
 精霊使いに襲われたら一発でアウトじゃないかとビィティの背筋が凍る。
 なにかクラリスを守る方法を考えないといけないなと思案していると、ベルリが帰ってきた。横にはフワフワと眠り草の成分が浮いていて、ベルリはビィティにこの成分をくれと懇願する。

「別に構わないが、どうするんだそんなの」

『あるじぃの為に使うに決まってんだろ』
 そう言うとベルリは眠り草の成分を飲み込んだ。飲み込んだ玉はベルリの体から丸い緑色の宝石となり体を飾る。

「おお綺麗じゃんか」

『へへへ、やっと綺麗って言ってくれたな』
 ベルリはビィティがクリンにだけ綺麗だと言ったのが心に引っ掛かっていたのだ。だからやっと綺麗だと言われてベルリの心は晴れやかになる。
 ビィティはベルリがなぜこれだけ喜ぶかがわかっていなかった。
 ベルリは雌なのだ。いや、精霊化したせいで気持ちは女の子に近いのだ。
 オレッ娘なのだ。

「そう言えば、ベルリいつのまに水の刃なんか使えるようになったんだ?」

『ん? オレそんなの使った?』
 ベルリはフンフンと鼻唄混じりにビィティの頭上を旋回する。
 鼻など無いが。

「クラリスを殺そうとしたときに首元に突きつけてたろ」

『クラリスって誰それ?』
 精霊達には主人以外の名前を覚えない。ビィティはそれを知らないので、しりきりにクラリスのことを思い出させる。

『あー、あるじぃのこと殴ったあいつか。ムカつくよなあいつ死ねば良いのに』

「護衛対象だからな? 殺しちゃダメだからな」
 怒りを思い出したベルリをなだめながら、ついでに技を思い出させたがどうやらカッとなってできただけで何で出来たか分からないらしい。
 ただビィティのことだけが脳裏に浮かんでいたと言う。

「まあ、できないならできないで良いか」

『あるじぃ使えなくてごめんな』

「ばか、ベルリがいるから喉も乾かず旅ができるし、今も眠り草で眠らなかったんだぞ。もっと自分に自身もって良いんだからな」

『おう、分かったじゃあオレが最強だな!』

「それはどうかな?」
 そう言うとビィティはクリンの頭を撫でる。

『あるじぃのそう言うとこダメだぞ!』

「ごめんごめん」
 ビィティはベルリに謝り、ご機嫌とりのために体をペン回しを回す要領でクルクル回してやるとキャッキャキャッキャと喜んで機嫌を直した。

 食事を終えると給仕が入ってきて首をかしげる。ビィティは美味しかったですと満面の笑みで挑発したが、給仕は申し訳なさそうに出ていくので、たぶん無理矢理やらされてるのだろうと考えビィティはその給仕にはなにもしないで帰した。

 下で待ち構えてたクリンのマーク済みの野盗は眠らせるのに失敗したのを聞くと、この町から出て森の中へと消えていった。

「これで今日は静かに眠れるかな?」
『警戒はしとくでちゅ』

「うん、よろしく頼むよ」
 ビィティはベッドに横になるが今まで外で寝ていたせいか居心地が悪いので、クリンの風でテラスから屋上へと上がり屋根の上で寝転んだ。

「アルバ、アルバ」
 ビィティはそれが自分を呼ぶ声だとすぐには気がつけず、そう言えば自分の偽名だと気がついたのは呼ばれてから3分ほど経ってからだった。
 

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