乙女ゲームの村人に転生した俺だけど悪役令嬢を救いたい

白濁壺&タンペンおでん

ステータスアップ薬、オール1

 翌朝目が覚めたビィティが一番最初にしたことはダンジョンに入って竹槍の箱を確認することである。
 ダンジョンに入ると竹槍の箱の横には大量の金貨やアイテムが落ちていた。

 寝ている間に大金を稼ぐ、まるで株式投資のようだと苦笑する。
 実際、卑怯な気もするがレベルの無いビィティには怪我もせず安全にお金を手に入れられる方法なのだ。
 ただ、この装置は金貨を手にいれるのが目的ではないのだ。

 ビィティは山積みの金貨を拾おうとしたが、金貨を指で掴むと滑り拾うことができなかった。

「あれ、なんでだ?」

 何度取ろうとしても固定オブジェクトのように動かすこともできなかった。
 理由が分からないビィティは小一時間竹槍の箱が魔物を倒すのを見ていて、金貨が音を立てて他の金貨と重なり動きを止める。

「あっ、ルート権か!」

 この罠を作ったのはビィティだが、ここで戦ってるのは魚なのである。だからこのアイテムは魚の物なのである。
 そして、このアイテムを手にいれる方法は唯一つだけ。

「魚君ごめんよ……」

 ビィティが心にもない謝罪をして魚に短剣を振り下ろした。だがその短剣はいくら振り下ろしても当たらない。魚の動きがあり得ないほど早い。

「まさか、お前レベルアップしたのか!」

 一晩中魔物を倒してた魚のレベルは10を越えていた。ビィティは恐怖におののく。
 村人にレベルが無くて魚にレベルがあることは驚きだが、このままでは魚に殺されると。

 だが魚は攻撃してこない。殺るなら今だ、殺られる前に殺れの精神で桶をひっくり返す。

「どうだこれが人間の叡知だ、レベルあるからって舐めんなよ!」
 桶を倒しただけの行動が叡知だとか言ってて恥ずかしくなるような台詞だが、ビィティはドヤ顔で言い切った。
 ダンジョンの床でピチピチと跳ねる魚にトドメとばかりに短剣を突き立てようとするがビィティの耳に人の声が聞こえる。

『やめろ!』

 辺りを見回してもなにもいない。気のせいかと思い再び短剣を魚に向ける。

『やめるんだ、オレは良い魚だ!』

 その声は床をピチピチ跳ねている魚からだった。

「は? お前しゃべれるの?」

『お前がレベルアップさせてくれたお陰でな。このままだと動けないからオレと契約しようぜ』

「よし殺そう」
 ビィティは無慈悲に短剣を振り上げる。

『ちょ! 待てよ。なんでだよ!』

「いやいや魚に、お前とか言われたくないし。いきなり契約しようとか言うやつは詐欺師で悪魔って決まってんだ」
 ビィティが短剣を振り上げる。魚、絶体絶命のピンチ。どうなる魚、生き残れるのか魚。

『あるじぃ!』

 その瞬間振り下ろされた短剣は止まった。魚のギリギリ1cm手前だ。

「主か……。だがな、契約とかなんだよ。魂ならやらんし死んでから地獄落ちとか嫌だぞ?」

『違う、違う。魂なんかいらないし地獄にも落ちないから。生気を少し分けてもらうだけだよ』

「エロい意味か? 卵に射精とかなら勘弁だぞ?」

『バカなのかな?』

 魚に短剣が――

 小一時間の問答の末、魚は無事ビィティと契約をすることになった。
 レベルアップした魚は人間と契約することにより精霊化するのだと言う。

「アピールポイントは?」

『旅のお供に欠かせない水が出せます!』

「それだけ?」

『あーう、あーう、空飛べます!』

「よし採用!」

 こうして魚の仲間化が決まった。
 旅には水は必須で動く水サーバーを手にいれてラッキーと言うなんともひどい理由だが。
 なにより空も飛べるという最後の一押しが効いたのだ。

 契約をすませた魚のヒレは虹色に光ると長くなり空中に浮けるようになった。
 枯渇した精霊の体にビィティの生気が注ぎ込まれたのだ。

「ほう、綺麗じゃないか。これで俺も飛べるのか?」

『ん? 飛べるのはオレだけだぞ?』

「は? アピールポイント飛べるようになるって言ったろ?」

「うん、オレが飛べるようになる!」
 ドヤ顔の魚にイラついたビィティがヒレを切り落とそうとしたのは言うまでもない。

『あるじぃは悪魔かな?』
「うるさい、解雇されないだけでもありがたいと思え」

 ビィティをツンツン口先でつつきながら不満をあらわにする魚を無視して道具を回収する。
 魚を仲間にしことで、落ちているアイテムのルート権をビィティは得ることができ、金貨やアイテムを拾えるようになった。

 アイテムを拾っていると、茶色い腐ったような魚の部位が見つかる。
 それらを組み合わせると魚のようなアイテムになった。

「なんだこれ、たい焼き?」

『魚用の革鎧じゃね?』

 確かに、言われてみれば魚用の革鎧だった。魔物を倒したのが魚なのだから当然の結果なのだが、納得のいかないビィティは革鎧を投げ捨てた。

『あるじぃ、捨てるならオレにくれよ』

 魚がすごく欲しそうな死んだ目でビィティを見るので彼は革鎧を拾い上げると魚に装備してあげた。
 魚は空中を跳ね躍り、喜びの舞を踊る。
 アイテムが出たら換金するつもりだったので売れない商品を手にいれても仕方なかったが魚が喜んでいるなら良いかと納得した。

「あった……」

 大量の金貨とゴミアイテム(魚の革鎧)の中から震える手で一つのカプセルを取り出した。

『あるじぃ、なんだよそれ』
「これは永久ステータスアップの薬、オール1だ」

 オール1はすべてのステータスを1上げることができるアイテムで、レベルの無いビィティはこれでステータスを上げようとしているのである。

 早速オール1を飲むと身体が淡く光り、ビィティ本人は分からないのだがすべてのステータスが1上がった。

「魔法使えるのか?」

『精霊魔法で良いなら力貸せるぜ』

「ほう、どんな魔法だ?」

『MP1ならコップに一杯の水を作るくらいかな?』

「水作れるなら、お前いらないじゃないか」
 そう言うとビィティは短剣を魚に向ける。

『ヒィィ、あるじ、俺がいなきゃ使えないから! 俺必要だから!』

「冗談だよ、冗談」
 冗談と言いつつも、あの狂気に満ちた目は確実に人殺し、いや魚殺しの目だと魚は恐怖を覚える。
 昨日魚二匹食べたしね。

「お前に名前つけてやらないとな」

『俺の名前はディスカルド=ベルリネッタ=マスティロネランスって言うんだぜ』

「長いよ……。お前の名前はベルリな」

『そんなー』

 ベルリは不満の声を出すツンツンとビィティをつつくが、その声を無視して他にオール1が無いかアイテムの山の中を探す。しかしオール1はあれ一つきりで見つかることはなかった。

 オール1は万匹倒してやっと一個とかいうレアアイテムでまず手に入らない品物なのだ。
 今回は運が良かった方だとビィティはアイテムを回収してダンジョンを出た。

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