クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...

がいとう

86話 迷宮王戦開幕

 ファルゴ






「それではファルゴさん。ご武運を」




 ここまで俺とシェリーを連れて来てくれたフーマはそう言うと、残りの皆を連れて第35階層へと転移して行った。
 そんなフーマ達の去った位置を背に正面を向くと、迷宮王のサイクロプスが胡座をかいてその一つ目でじっとこちらを見つめていた事に気がついた。




「なぁファルゴ。どうやら私達はハズレを引いたみたいだ」
「ああ。サイクロプスの迷宮王、サイクロプスキングを二人で相手するのは骨が折れそうだな」
「そうじゃねぇよ。この迷宮王が数日前に遭遇した金色の眼のサイクロプスよりも弱いからがっかりしてるんだ」
「そうなのか?」
「ああ。変異種の方が迷宮王よりも強い事があるって聞いた事があるが、サイクロプスはどうやらそうみたいだな」




 シェリーはそう言うと、握っていた大剣で肩を軽く叩きながらサイクロプスキングの目の前に向かって歩いて行った。
 俺もその横を歩きながら片手剣を構えて周囲を警戒する。
 俺たちがこの部屋に転移して来た時点でこの部屋は入り口と出口を封じられたが、ダンジョンは何があるのか分からない魔窟だし、戦闘中に横槍が入ることぐらいは想定しておいた方が良いだろう。




「なぁファルゴ。このサイクロプスの魔眼は何だと思う?」
「さぁ?  一番確率が高いやつなら魔力視なんだろうが、こいつは迷宮王だしもっと良いやつを持ってるんじゃないか?」




 以前洞窟の中で片腕のサイクロプスと戦った際、フーマがサイクロプスの一番厄介なところは魔眼の効果が分からないところだと言っていた。
 仮にこいつがあの変異サイクロプスの様に光線で攻撃してくる様な魔眼であったら、俺とシェリーで倒すのは厳しいと思う。
 はぁ、こんな事なら一人であの金色の眼のサイクロプスを倒して来たというエルセーヌに詳しく話を聞いておくんだった。


 そんな事を考えながら渋い顔でサイクロプスキングに向かって歩いていると、俺の少し前を歩いていたシェリーがパッとこちらを振り返ってニっと笑いながら話しかけて来た。




「まぁ、あいつの能力が何であれ私達には関係ねぇよ。さっさと倒して次の迷宮王のとこに行くなり、エルフの里の防備に加わるなりしようぜ」
「はぁ、お前は随分と楽しそうだな」
「そりゃあそうだろ。大好きなファルゴと一緒に戦えるなんてこんなに楽しい事が他にあるかよ」
「そ、そうか」
「お、おう。ほら、そろそろあちらさんもヤル気になったみたいだから集中してこうぜ」




 シェリーは自分の言ったセリフのせいで赤くなった顔を隠す様にサイクロプスキングの方を向いて剣を構えると、一度深く深呼吸をして精神を研ぎ澄ました。
 俺も片手剣を構えて、もう片方の手も魔法を使う準備をしながらサイクロプスキングの動きを注視する。


 サイクロプスキングはそんな俺たちを見てようやく戦意を持ったのか、ゆっくりと立ち上がり側に置いてあった粗雑な片刃の剣を持ち上げて大声で叫んだ。




 グゴォォァァァ!!!




「行くぞファルゴ!!」
「おう!!」




 こうして、俺とシェリーVSサイクロプスキングの戦いが始まった。
 よし、そろそろ俺もカッコいい武勇伝の一つくらいここで作っておくとするか。






 ◇◆◇






 ユーリア






「へぇ、僕達の相手は蜂なんだね」
「勝ったらフーマ様のハグ。勝ったらフーマ様のハグ。勝ったらフーマ様のハグ」
「うんうん。飛ぶ魔物は厄介だけど、僕達は水魔法が得意だからあの羽根を少しでも濡らす事が出来たら有利に戦いを進められそうだよね」
「無傷で勝ったらフーマ様に頭を撫でてもらえる。無傷で勝ったらフーマ様に頭を撫でてもらえる。無傷で勝ったらフーマ様に頭を撫でてらえる」
「はぁ、ご褒美に夢中で僕の声は全然届いてないみたいだね」




 僕は威嚇する様に羽音を立てながら飛ぶスピアビーの迷宮王から目を外しながら、僕の後ろで両手を頬に当てながら同じ事をブツブツと繰り返すトウカ姉さんを呆れ顔で見てそう言った。
 姉さんがこうなったのは先程僕達をここに残してフーマ達が転移しようとした時の、「その迷宮王に勝ったらフーマくんがトウカさんを優しく抱きしめるわ!  無傷で勝ったら頭も撫でてもらえるわよ!」というマイムの去り際のセリフのせいである。




「おーい、姉さん?  ご褒美も良いけど、早く迷宮王を倒してフーマの援護に行くんじゃなかったの?」
「はっ、そうでした。私としたことが申し訳ありません。それで、私のご褒美の素はあのうるさい羽虫でよろしいのですか?」
「あぁ、うん。そうだよ。というより、今の今まで目の前の迷宮王が視界に入っていなかったんだね」
「ふふふ。もちろんその様な事はありませんよ。大事な弟との会話をするための話題づくりです」
「へぇ、それはどうもありがとう。ところで、姉さんは前衛と後衛どっちがやりたい?  無傷で勝ちたいならやっぱり後衛?」
「いいえ。どうせやるのなら前衛で無傷で勝ってフーマ様にさらなるご褒美を要求します」
「あ、そう。………僕は姉さんが元気になって嬉しいよ」
「ふふふ。急にどうしたのですか?」
「いや、何でもないよ」
「そうですか。では行きますよユーリア!  私の後に続きなさい!!」




 トウカ姉さんはそう言うと、一つに結んだ長い髪を揺らして弓を構えながらスピアクイーンビーに向かって勢いよく走って行った。
 姉さんが迷宮王に向かって走っていくうちに、荒々しく渦巻いている水の槍が姉さんの周りに物凄い勢いで増えていっているし、この様子なら姉さんは本当に無傷で迷宮王を倒しきってしまうかもしれない。




「あれ?  もしかして僕の出番なくない?」




 僕はそんな事をボヤキながら、笑顔で迷宮王に向かって行く姉さんの後ろを走ってついて行った。






 ◇◆◇






 エルセーヌ






「オホホホ。終わってしまいましたわ」




 ご主人様に第40階層まで送っていただいた直後、魔王様の言いつけ通りに本気で戦ったら数秒で迷宮王を倒してしまいました。
 相手はおそらく精霊の一種であったとは思うのですが、視界に入った瞬間にひたすらに魔法を打ち込んだためどの様な迷宮王を相手にしたのか全く覚えておりません。




「オホホホホ。まぁ、この程度のダンジョンなら私のステータスを考慮するとこうなって当然ですわね。おそらく魔王様も迷宮王如きに構っていないで、早く別の場所の支援に迎う様伝えたかったのでしょう」




 魔王様は看破を使って私のステータスを見破っておいでだし、私のスキルや魔法の構成もおそらく魔王様もご存知であるはず。
 やはりそう考えるのが筋が通っているのでしょう。




「オホホ。しかし、支援に行くとは言ってもどこに向かうのが宜しいでしょうか。迷宮王と戦っていらっしゃる皆様の支援はおそらく必要が無いでしょうし……」




 そうして頭を回していたその時、私はある一人の興味深いエルフを思い出しました。
 あのエルフとは一度話をしてみたかったですし、ちょうど今は暇なところでしたから会いに行く良い機会でしょう。




「オホホホ。それでは、あのエルフの忍者に会いに行くとしましょうか」




 そう呟いた私は、自身の周りに結界を張って姿を消しながら悠然と迷宮王の部屋を後にしました。






 ◇◆◇






 ローズ






「さて、妾もここで別れる事になるんじゃが、大丈夫かフウマ?  お主、先程から上に行けば行くほど顔色が悪くなっておる気がするんじゃが」
「だ、大丈夫だ。エルフの里のために頑張って戦うから応援していてくれ」
「そうは見えんのじゃが、まぁ良い」




 第45階層の迷宮王の広間にて、フウマの転移魔法で転移して来た妾達3人はこの階層の迷宮王を視界に収めながらそんな話をしておった。




「心配いらないわローズちゃん。今の風舞くんは覚醒する一歩手前なのよ。あえて自分を追い込む事で自ら進化を促しているのよ!」
「そ、そうか。妾にはよく分からんが、お主らがそう言うのならとやかく言うまい」
「あぁ、そういう訳だから何の心配も要らないぞ」
「うむ、あまり気張り過ぎず程々にの」




 フウマは多くのものを背負って戦うのは初めての経験じゃし、かなり緊張してしまうのも無理は無いんじゃが、出来ればいつも通りの飄々(ひょうひょう)とした態度で戦闘に臨んでほしい。
 可能ならば妾がその緊張をほぐしてやりたいんじゃが、何分兵を鼓舞する事はあっても緊張をほぐした事は今までなかったからのう。


 そうして妾は微妙な無力感に苛まれつつも、とりあえずはフウマのために雑談でもして気をほぐしてやる事にした。




「まぁ、なんじゃ。これが終わったらまた3人でソレイドの串焼き肉でも食べに行くとしよう」
「あぁ、駄目よ。駄目ねローズちゃん。そういう死亡フラグっぽい事は言っちゃ駄目なのよ」
「む?  死亡フラグとは何じゃ?」
「説明するよりもフラグを折った方が早いわね。風舞くん、串焼きを三本出してちょうだい」
「ああ」




 フウマはそう言うと、アイテムボックスからちょうど今し方話に出た串焼き肉を三本取り出して、妾とマイに一本ずつ手渡した。
 そういえばフウマは食料をアイテムボックスに保管しておく癖があったの。
 そんな事を考えながら出来立てのままアツアツの串焼き肉を眺めておると、その串焼き肉を美味しそうに食べながらマイが笑顔で妾に話しかけて来た。




「さぁ、ローズちゃんも食べてちょうだい。今それを食べれば死亡フラグが折れるはずよ」
「よく分からんが、食べれば良いのかの?」
「ええ。ささっ、迷宮王さんも待っていてくれてるし早く食べましょう」
「う、うむ」




 いささかマイの考えておる事がよく分からんが、フウマも妾達の様子を見ながら自分の分の串焼き肉を頬張っておるし、日の本の国に伝わる決戦の前の儀式なのかもしれぬ。
 そんな事を考えながら妾も自分の分の串焼き肉を食べ始めると、既に一本分の肉を全て食べきったマイが妾の頭を撫でながら話しかけてきた。




「良いかしらローズちゃん。勇者や魔王である私達はどんな戦いでも勝って当然、勝てたらなんて不確定の未来は無いの。仮に力及ばなかったとしてもそれはいつか勝つ為の布石で最終回には絶対にどんなに強大な相手でも勝てるのよ。それにほら、グリフォンなんてペットにしたい魔物ランキング第4位の魔物にローズちゃんが負ける訳ないでしょう?」
「う、うむ。今一意味は分からぬが、要は勝つ気で戦えという事じゃろう?」
「まぁ、有り体に言ってしまえばそういう事ね」
「それならば任せておけ。空の王ごときに負ける妾では無いことをお主らに見せつけてやろう!」
「おお、頑張れよ。それじゃ、俺達はそろそろ上にいくから後はよろしく」
「って、おい!  ちょっと待て!  いくらなんでもそれは無いじゃろう!」




 折角妾がカッコつけてグリフォンに立ち向かおうとしておるんじゃから、もう少し興味を持ってくれても良いと思うんじゃが。
 いつの間にかフウマがいつも通りの調子に戻っておるのは喜ばしい事なんじゃが、これではわざわざ派手な演出で吸血鬼アルカード顎門スレイヴを顕現させた妾が道化の様ではないか。




「なんだよ。俺達も上の迷宮王と戦わなくちゃならないんだから、ローズの戦う所を見てる時間は無いだろ?」
「それはそうなんじゃか、もっとこうあるじゃろ?」
「えぇ、我が儘言わないで頑張ってくれよ。ていうか、さっきからフレンダさんがお姉様に戦の前の口づけをしろって煩いからもう上に行って良いか?」
「よし、それでは妾は手早くグリフォンを倒すとしよう。お主らも勝ってくるのじゃぞ!」
「おう、ローズも頑張れよ」
「ええ!  例え何が相手でも風舞くんと圧勝してくるわ!」




 フウマとマイはそう言い残すと、転移魔法で第50階層の迷宮王の元へと向かった。


 かなり緊張しておったフウマもどうやらフレンダのおかげで緊張が解れた様じゃし、あの様子なら第50階層の迷宮王を任せておいても問題ないじゃろう。
 フウマに気を使って自ら道化を演じるとは流石は我が自慢の妹じゃな。


 ………、心なしか妾に口付けをしたいというのがフレンダの心からの願望である気もしなくは無いが、このような状況でフレンダがそれを言う事は無いじゃろう。
 無いはずじゃ。
 無いと思いたい。




「さて、長らく待たせてすまんかったの」




 妾がそう言いながら振り返ると、グリフォンが四本の足で立ち上がりってその翼を大きく開いた。
 どうやら迷宮王として妾と正面から戦ってくれるつもりらしい。




「ふむ。どうやらこれ以上の言葉は無用の様じゃな。それではいざ尋常に、勝負!」




 かくして、元魔王の妾と空の王グリフォンとの一騎打ちが始まった。






 ◇◆◇






 風舞






『おいフーマ!  折角お姉様に口付け出来る機会でしたのに、何故むざむざと転移してしまったのですか!』
「あぁ、はいはい。すみませんでした」




 ローズと別れて第50階層に転移すると、これまでの世界樹内部の様相とは打って変わって神殿の様な場所に俺と舞は立っていた。
 地面はこれまでの木製のものから苔の生えた石畳に変わり、石の壁は草木に飲み込まれていて長い年月を感じさせる。


 天井の隙間から差し込む太陽の光に目を細めながら周囲を見回していると、隣に立っていた舞が俺の手を離してゆっくりと歩きつつ周囲を見回して口を開いた。




「なんだか綺麗な場所ね」
「ああ。さっきまでガヤガヤとうるさかったのに、ここはかなり静かだし神秘的な場所だよな」
「そうね。もしかすると、世界樹はこの神殿の下から生えてきたのかもしれないわ。ほら、流石にダンジョンがあんな風に書物まで作るとは考え辛いでしょう?」




 そう言った舞の指指す方に目を向けると、壁側に古ぼけた本棚とぼろぼろになった本が積まれているのが見えた。
 触っただけでそのまま砂になってしまいそうなほど本は古びている様に見える。




「ねぇ、シスコンのフレンダさん。フレンダさんはこの光景を見て何か気付く事はありますか?」
『私はシスコンではなくお姉様を世界一愛しているだけですが、おそらくこの神殿は古代文明のものです。魔族領域でこの神殿によく似た建築様式の遺跡を調査した事があります』
「へぇ、古代文明の遺跡ですか。それじゃあ、オーパーツとかあるかもしれませんね」
「オーパーツ!?  それは是非とも手に入れたいわね!  あ、あそこの棺なんてまさしくオーパーツが入ってそうじゃないかしら!?」
「えぇ、あれはオーパーツっていうよりミイラとかゾンビとかが入ってそうじゃないか?」
「それならなおさらお供え物の魔剣とかがあるはずよ!  どうやら迷宮王はお留守みたいだし、開けてみるわね!」




 舞はそう言うと、神殿の中を一直線に走って行って棺の周りをペタペタと触って調べ始めた。
 確かに迷宮王の姿は確認出来ないけど、普通見るからに怪しい棺を真っ先に調べようと思うか?




「ねぇフレンダさん。雰囲気的にここが最後の迷宮王の部屋っぽいんですけど、迷宮王が留守だなんて事あり得るんですか?」
『何者かが迷宮王を倒した後は一時的に迷宮王は不在となりますが流石にその可能性は低いでしょうし、この神殿のどこかにいると思いますよ』
「それじゃあ、いるとしたらあの棺の中ですよね?」
『はい。私もその可能性が高いと思います』




 なんて事をフレンダさんと話しながら棺に向かって歩いていると、舞が手をブンブンと振りながら俺に話しかけてきた。




「ねぇ風舞くん!  この棺、どうやっても開かなそうだから壊しても良いかしら!?」
「壊しても良いけど、その中に迷宮王が入ってるかもだから気をつけろよ!」
「分かったわ!」




 舞はそう言うと、腰に差していた妖刀星穿ちを抜いて上段に構えた。
 おぉ、やっぱり刀を構えている舞は凄くカッコいいな。
 もしも舞がフィギュア化したら鑑賞用と布教用と保存用を購入するとしよう。


 そんな事を考えながら歩いていた俺が棺に手の届く距離まで来たその時、舞が閉じていた目をカッと開いて目にも止まらぬ速さで刀を振り下ろした。




「土御門舞流剣術 奥義の壱 きらめき!!」




 おお、舞の剣術には奥義なんてあったのか。
 なんて思っていたその時、棺の蓋が真っ二つに割れてそのまま真横に落ちた。




『この娘、以前から中々の手練れだとは思っていましたがかなりやりますね。まさかスキルを使わずにこれほどの威力の斬撃を繰り出すとは思いもしませんでした』
「俺も舞の奥義は初めて見ましたけど、確かに今の技は凄かったですね」




 今までの舞は両手剣でもかなり強かったけれど、一番得意な刀を持った舞はここまで強くなるのか。
 今度俺も今の奥義を教えてもらいたいな。
 なんて事を考えながら舞のそばに行って棺を覗き込もうとしたその時、舞が振り下ろしたままの刀を手離して俺の方へ勢いよく下がって来た。




「風舞くん転移!」




 舞のその声を聞いて反射的に棺から離れる様に転移すると、棺の中から舞の刀を素手で掴んだ銀髪で褐色肌の女性が出て来た。
 その女性の目は閉じているが、初めてローズに会った時に睨まれたのと同等の圧迫感を感じる。




「なぁ舞。もしかして、あれが迷宮王か?」
「ええ。私は棺を真っ二つにするつもりで刀を振ったのに、あの女性に素手で止められたから間違い無いでしょうね」
「それじゃああいつ、かなり強いな」
「そうね。でも、見た目は完全にエッチな褐色お姉さんだし、何の魔物なのか検討もつかないわ」
『あれはドライアドです。樹木を操り、土魔法を自在に扱うかなり強力な魔物ですね』
「ドライアドだって。むちゃんこ強い魔物らしい」
「そう、あれがドライアドなのね」




 ドライアドの放つオーラをピリピリと感じながらそんな事を話していると、全裸だったドライアドが舞の刀を投げ捨ててその身を真っ白な服で包み込んだ。
 白い服は一人でに動いてドライアドを包みこんでいたし、あの服はドライアドの意思に従って動くものなのかもしれない。
 ていうか、服がギリシャ神話の女神みたいなやつだからそこそこに露出が多くて目のやり場に困るんですけど。
 おっぱいも舞と同じくらい大きいし。




『おいフーマ。マイの刀を回収しなさい』
「あぁ、はい。分かりました」




 フレンダさんの指示通りにドライアドによって投げ捨てられた舞の刀を手元に転移させて舞に手渡すと、俺の横でじっとドライアドを見つめていた舞が気味の悪い声を上げながら笑い始めた。




「ふひひひ。見つけた。遂に見つけたわ!」
「は?  見つけたってあのドライアドを探していたのか?」
「そうよ!  正確には私の従魔を探していたのよ!」
「従魔ってあのドライアドと契約するつもりなのか?  相手はこの世界樹で一番偉い迷宮王さんだぞ?」
「それでこそこの私の従魔に相応しいわ!  常々風舞くんばっかりシルビアちゃんやアンちゃん、…それにエルセーヌみたいな可愛い娘を従者にしていてズルいと思っていたのよ。私だって可愛いくて強い従者が欲しいの!」
「えぇ、ズルいって言われても…」
「ともかく、私はあのドライアドを何としてもゲットするわ!  ねぇフレンダさん、従魔契約ってどうやるのかしら?」
『従魔契約をするためにはまず、対象となる魔物を屈服させる必要があります」
「まずはあのドライアドを屈服させろって」
「なるほど。要はポケ○ンと同じって事ね!!  さぁ、私が可愛がってあげるからかかってらっしゃい!」




 こうして、野生のドライアドと舞と俺によるガチンコバトルが始まった。


 はぁ、折角フレンダさんとローズのお陰でいつも通りのテンションで戦えると思ってたのに、予想外の展開すぎて今度は逆に気が抜けちゃったんですけど。
 俺はそんな事を考えながら、重心を低くしてドライアドの次の行動に備えた。

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