クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...

がいとう

63話 男子三日会わざれば

 風舞




 ターニャさんに世界樹の朝露をもらって訓練場に向かう前に身支度をすることにした俺達3人は、一度宿泊している部屋に戻って来ていた。




「なぁミレン。世界樹の朝露を出してもらってもいいか?」
「む?  何に使うんじゃ?」
「早速アンに届けて来る」
「届けて来るって、今からソレイドに向かうのかしら?」
「ああ。アンの病気も早く治った方が良いだろ?」
「良いだろってそれはそうだけど、どうやって帰るつもりなのかしら?」
「そりゃあ転移魔法で」




 椅子から立ち上がった俺はそう言いながら、ローズの目の前に転移した。
 あ、目を丸くして驚いてる。
 ローズ達を驚かせようと思って、転移魔法が使える様になったのを黙っておいて正解だったな。




「ふ、フーマくん?  いつの間にまた魔法を使えるようになったのかしら?」
「昨日の晩フレンさんが俺の魂を治療してくれたんだ。まぁ、フレンさんに出来たのは転移魔法を使えるようにする事だけだったんだけどな」
『ふん。どうせ私は大した事ない女ですよ』
「そんな事ないですって、マジで助かりましたよ」
「そうか。フレンがフーマの魂を治療にしてくれたのか。礼を言うのじゃ」




 ローズはそう言いながら俺に抱き着き、満面の笑みを浮かべた。
 あ、ちょっと嫌な予感。




『あぁぁぁぁ!!  お姉様!!  その様なお言葉をかけていただき、感涙の極みでございます!!!』
「うるせぇ」
「あら、どうかしたのかしら?」
「ああ。またフレンさんが頭の中で騒いでる」
「そ、そう。よく分からないけれど大変そうね」
『ああっ、お姉様!本日も美しゅうございます!!』
「おいミレン。そろそろ離れてくれ。フレンさんが興奮しすぎてうるさい」
「ふむ。いささか名残惜しいが、それならば仕方ないかの」
『あ、お姉様』




 ローズが俺からパッと離れたからか、フレンダさんが残念そうな声をあげた。
 仮にフレンダさんが俺の体を動かせたら、ローズに向かって手を伸ばしていたかもしれない。




「それじゃあ、そろそろ行ってくるから世界樹の朝露をくれ」
「うむ。落とさないように気を付けるんじゃぞ」
「あいよ。それと、マイム達はどうする?」
「どうって何がかしら?」
「マイム達も一緒にソレイドに行くか?」
「ああ、確かにアンちゃんとシルビアちゃんには久しぶりに会いたいけど、今日は遠慮しておくわ。流石に私たちまで一緒に行くと魔力消費が多いでしょう?」
「それじゃあ、今日はアンに世界樹の朝露を飲ませたらすぐに帰ってくるから、また今度一緒に行こう」
「ええ。シルビアちゃんとアンちゃんによろしく伝えておいてちょうだい」
「ああ。それじゃあ早速行ってくるわ」
「うむ。妾達はここで待ってるから、終わったら戻ってきてくれ」
「あいよ。じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃいフーマくん」
「妾からもシルビア達によろしくと伝えておいてくれ」
「了解。それじゃあ、テレポーテーション!」




 こうして、俺はエルフの里からソレイドまで転移した。
 一応遠距離転移のためテレポーテーションと口にしたが、特に問題もなくソレイドまで転移することができた。
 さて、皆に会うのは久しぶりだけど何やってんのかね。






 ◇◆◇






 風舞






「さてと、先ずはボタンさんの所に行くか」


 ソレイドのすぐ近くの丘の上に転移してきた俺は、体をぐいっと伸ばしながらそう言った。
 ボタンさんはアンの主治医な訳だし、世界樹の朝露の正しい使い方を教えてくれるだろう。




『こちらはかなり暑いのですね』
「まあ、エルフの里からは大分南にありますからね」




 なんて言ってから気づいたのだが、ソーディアは北半球にあるのか。
 日本人の俺には北に行くほど寒くなってくというのが普通過ぎて、特にそんな事を考えもしなかった。




『それで、ボタンというのはお姉様の新たなご友人だという獣人の方ですか?』
「はい。フレンダさんと違って落ち着きのある素敵なお姉さんですよ」
『おいフーマ!  それでは私に落ち着きがない様ではないですか!』
「はいはい。それじゃあ早速行きますね」




 ついさっきまで騒いでいたフレンダさんのどの口が落ち着きがあると言うのかは分からないが、それを言うとまた頭の中で大声を出されそうだったからやめておいた。
 そういえば、フレンダさんと感覚共有を初めたのはエルフの里についてからだったから、フレンダさんがボタンさんに会うのは初めてになるのか。
 貧乳のフレンダさんが巨乳のボタンさんを見てどんな感想を言うのか楽しみだな。




 俺はそんな事を考えながら、ボタンさんの料理店である雲龍まで転移した。






 ◇◆◇






 風舞






「あらあらあら、誰かと思うたらフウマはんやないの」




 記憶にある雲龍の店内に転移すると、カウンターに立っていたボタンさんがいつもの様に俺に声をかけてくれた。
 そういえば着物のデザインが以前とは違う気がする。
 もしかすると、夏使用なのかもしれない。


 そんな事を考えながら久しぶりに会ったボタンさんに挨拶を返すと、手を拭いた彼女がカウンターから出てきた。




「久しぶりボタンさん。元気だったか?」
「うちは特に問題あらへんよ。それにしても、また魔法が使えるようになったんやね」
「あぁ、そういえばそれも伝えないとだったか。どうする?  とりあえず記憶を読むか?」
「そうやね。何か気になることがあったらうちから質問するんよ」
「それじゃあどうぞ」




 そう言ってボタンさんに記憶を読んでもらうために右手を差し出したのだが、彼女は俺の右手を掴まずに抱きついてきた。
 そのままボタンさんのたわわな胸に俺の顔が押し付けられる。




「あのー、ボタンさん?」
「久しく合わない間に、フウマはんが随分と男前になってはったから気持ちを抑えられんかったんよ」
「そ、そうですか」
「それに、フウマはんもこうして欲しかったんやろ?」




 確かにボタンさんの胸に顔を埋められて幸せではあるが、そんな事考えてたか?
 もしかして、フレンダさんがボタンさんの胸にどんな感想を持つのか気になっていた事を言ってるのだろうか。




『くっ、これは中々やりますね』




 ああ、多分正解だろうな。
 結果はフレンダさんがボタンさんの胸を感じて、片膝をつく展開だったか。
 もっと悔しそうな声をあげて暴れると思ってたのに、少しだけ意外だ。


 そんな事を考えながら何やらぶつぶつ呟いているフレンダさんの声に耳を傾けていると、ボタンさんが俺から離れながら口を開いた。




「まずは、初めましてフレンダはん。うちはボタンと言います。今はこの小さい料理店の店主とフウマはんのめかけをやってます」
「は?  いつの間にボタンさんは俺の妾になったんだ?」
「嫌やなぁ、フウマはん。あの夜はあんなにうちの事を激しく求めてくれはったのに」
『そうですか。フウマは胸の大きい女が好きなのですか。そういえば、マイも大きな胸を持っていましたものね』
「いやいや、そんな人をおっぱいにしか興味が無い人みたいに言わないでくださいよ」
「あらあら、フウマはんはおっぱい以外にも興味があったん?」
「あれ?  ボタンさんまでそんな事言うのか?」
「そうは言うけど、今だってうちの胸を凝視してるやないの」
「いや。まぁ、それは久しぶりにボタンさんに会ったから仕方なく」




 だってボタンさんのおっぱいは凄く大きいんだぞ。
 それが目の前で強調するかの様に腕を組まれてたらついつい目で追っちゃっても仕方ないじゃんね。




「あらあらあら、何ならいつでもうちの胸をさわってもええんよ?」
「いや、流石にそれをすると色々とマズい事になりそうなんでやめとくわ」
「そうなん?  うちはフウマはんに乱暴に揉みしだいてもらいたかったんやけど、残念やわぁ」
「はいはい。で、アン達の様子はどうなんだ?」
「アンはんは相変わらずやね。多少体調が悪そうではあるけれど、特に問題はあらへんよ」
「それじゃあ、シルビアは?」
「シルビアはんは……元気やよ」
「おい、その間はなんだよ。もしかしてシルビアに何かあったのか?」
「ふ、フウマはんが心配しはるような事は何もあらへんよ?」
「露骨に目をそらしといて何が心配ないだよ」
「フーマはんはしばらく会わない間に随分と立派になったんやね」
「はいはい。それじゃあ、俺が留守の間にシルビアに何があったのか説明してくれよ」




 こうして、俺はボタンさんがシルビアに何をしたのかを聞き出すために取り調べをする事となった。
 ボタンさんが保護者としてついていながらシルビアが危険な事に巻き込まれる訳が無いし、十中八九ボタンさんがシルビアに何かしたのだろう。
 俺の大事な従者に手を出すとはいただけないな。
 あぁ、本当にいただけない。
 俺はそんな事を考えながら、満面の笑みでボタンさんを座敷へ連れて行った。


 座敷にボタンさんを連れ込んで約15分後、頬をほんのちょっぴり紅くしたボタンさんが自分で着物をはだけだせながら、よよよと口を開いた。




「あぁ、あんなに恐ろしい尋問は始めてだったんよ」




 ボタンさんを取り調べ、もといしっぽをモフらせてもらった俺は、掘りごたつに脚を入れてよく冷えたお茶を飲みながらボタンさんの向いに座っている。
 ボタンさんのしっぽは俺が両手で抱えてもあまりあるぐらいの大きさでかなり上等な毛並みをしており、そしてなにより凄く良い匂いがした。
 俺的には、ボタンさんのおっぱいよりもしっぽの方が触り心地的には好きかもしれない。




『おいフーマ。ボタンの毛並みの余韻にいつまでも浸っているんじゃありません。お姉様を待たせている事を忘れたのですか?』
「ああ、そうでした。それで、どうしてボタンさんはシルビアにダンジョンを数日で攻略させたりドラゴンの巣に行かせたりしたんだ?」




 ボタンさんの話によると、シルビアは僅か数日でソレイドのダンジョンを踏破した後に、今度はソレイドから歩いて十日ほどのドラゴンの巣まで旅に出ているらしい。
 もしかしなくても、今のシルビアは俺よりも余裕で強いんじゃないか?
 以前聞いた話によるとソレイドの適正レベルは階層プラス10らしいし、少なくともシルビアのレベルは100近くあるんだと思う。




「それだけは例えフウマはんでも言えへんなぁ」
「はぁ、シルビアに強制させている訳では無いんだよな?」
「それはそうやよ。うちがフウマはんの大切な女の子に手を出すわけないやろ?」
「それじゃあ、もういいや。どうせシルビアが死なないようにはしてくれてるんだろ?」
「ごめんなぁフウマはん」
「良いって、多分シルビアがボタンさんにお願いしたんだろうし、これからもシルビアを気にかけてやってくれよ」




 俺はそう言いながら掘りごたつから出て、靴を履いて立ち上がった。
 ボタンさんも座敷から出て草履を履きながら口を開く。




「アンはんの所に行くん?」
「ああ、早速アンの魔力拒絶反応を治しに行こうぜ」
「あらあらあら、フウマはんがエスコートしてくれるなんて嬉しいわぁ」




 俺はそんな事を言いながらころころと笑うボタンさんと共に、久しぶりの我が家へと転移した。
 さてと、アンの調子はどんなもんかね。

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