クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...
幕間 とある勇者の信念
篠崎明日香
「でりゃぁぁ!!」
この世界に来ておよそ50日が過ぎたある日、ウチは今日もレベル上げをするためにパーティーメンバーと共にラングレシア王国王都の近くにあるダンジョンに潜っていた。
始めの頃は魔物を斬るのも殺すのにも怯えていたウチ達だったけど、今では大分戦うのにも慣れてきて、クラスのみんなが魔族との戦争に向けて頑張ってレベルを上げる様になっている。
お姫ちんの話だと、称号のお陰で精神的に戦い易くなっているらしいんだけど、あまり頭が良くないウチにはよく分からなかった。
「おつかれあーちゃん。やっぱりあーちゃんは私達のエースだね!」
ウチの大親友であるさっちゃんこと、岸辺桜子が私に抱きつきながらそう言った。
この世界に来て始めの頃はクラスの雰囲気はすごく悪かった。
みんな親や友達に会えなくなった悲しみを感じていたり、共に暮らす上での不満は自然と湧いてくるものだからそれも仕方ないのかもしれない。
でも、私達は何回も喧嘩しながらも沢山一緒に話して、泣いて、笑って、共に暮らす内に確かな絆が芽生え、今ではクラスメイトの全員とまゆちゃんせんせーが私にとってかけがえのない大切な仲間になっている。
「別にそんなことないっしょ。さっちゃんの魔法とけーくんの盾のお陰でウチが斬り込めたんだし、オサムちんの支援魔法が無かったらあの一撃でトドメをさす事が出来なかった。それに今もこうして佳織ちゃんがウチの傷を治してくれてるし、これはみんなの勝利だよ。言うなれば、みんながエース。的な?」
「もう、何それ。あーちゃんはいつもそうやって私達の事を立ててくれるけど、もっと誇っても良いんだよ?私達のパーティーリーダーはあーちゃんなんだし」
「でも、別にウチは大した事ないよ?  あ、佳織ちゃん回復ありがとね。次はけーくんの回復をしてあげて」
「う、うん。ありがと」
ウチの傷を治してくれていたボブヘアーが可愛らしい佳織ちゃんはニコっと笑いながらそう言うと、スタタタっと彼女の彼氏であるけーくんの元へ走って行った。
佳織ちゃんとけーくんは二人とも人と話すのが苦手でこの世界に来てすぐの頃はみんなと馴染めずにいたけれど、大人しい者同士で何か共感するところがあったのか今では恋人同士の関係になったらしい。
今も二人揃って顔を赤くしながらテレテレと話しているし、二人の仲は良好の様だ。
「ほら、やっぱりあーちゃんは私達のリーダーじゃん。今だってあの二人の仲を取り持とうとしたんでしょ?」
「別にそんな事考えてないよ。ほら、さっちゃんはオサムちんの様子を見に行かなくていいの?」
「べ、別に私とアイツはそういう関係じゃないし。おいオサム!  期待した顔でこっち見んな!」
「え!?  別に俺何もしてないのに酷くね!?」
「うるさい!  あんたみたいなオタクにガン見されると反吐が出んのよ!」
「はぁ?  お前みたいなビッチの事誰がガン見するかよ!」
「何ですって!?」
「やんのか、コラァ!」
「はいはい。相変わらずお二人の仲が良いのは分かったからそこまでにしてそろそろ帰ろ?」
「「べ、別に仲良くなんてないわよ! (ないし!) 」」
そう言って同じような顔をしながら二人揃って顔を赤くするさっちゃんとオサムちん。
やれやれ、昨日の晩だって二人揃ってお城の中庭でイチャイチャしてたのに、どの口が仲良くないだなんて言うのだろうか。
まったく、素直じゃない二人だ。
私はそんな事を考えながら、このダンジョンの二体目の迷宮王の魔石をカバンにしまってステータスカードを取り出した。
よし、これでレベルも30を超えたし、また少しだけ強くなれた。
およそ半年後に迫った魔族との戦争までもうあまり時間が無いし、まだまだ強くならなくちゃ。
この世界に来てから私達は一人残らず戦う勇気と力を手に入れはしたけれど、それは称号やスキルに支えられた仮初めの力に過ぎないと天満っちは言っていた。
お姫ちんの話によると魔族は人族と良く似た姿をしているらしいし、戦争の時に私はこの剣をしっかりと振れるかはわからない。
もしかすると、今こうして私が戦えているのは自分よりも弱い魔物を相手にしているからで、自分よりも強い魔族相手には何も出来ずに殺されてしまうのかもしれない。
でも、私の幼馴染である風舞は多分そうはならない気がする。
あいつは幼い時に父親を亡くしてから命に関しての倫理観や道徳観念が緩くなっているし、私が攫われたあの日から後悔の為かその傾向が強くなっていった。
私があいつを避ける様になった原因の一つには、そんなあいつが怖かったというのもあるのだろう。
頭の悪い私には魔物や動物を殺すようになった今でも、命を奪うという事の意味がよく分からない。
日本にいた頃の私なら、何も考えずに命を奪う事は悪い事だって言っていたかもしれない。
でも、こうして武器を持っていると命を奪う事は良い事でも悪い事でも無いのだと感じるようになる。
この感覚が称号によるものなのか、自分自身の考えによるものなのかは分からない。
それでも、私がこの世界でやるべき事はクラスのみんなと私達に助けを求めてきたお姫ちんとこの国を守る事だけだ。
その為には例え怖くても剣を取らなくてはならないし、例え苦しくても命を奪わなくてはならない。
きっとそれが、勇者の仕事だから。
そして、それが私が風舞に追い付く一番の近道だと思うから。
「あーちゃん?  帰るんじゃないの?」
「あぁ、うん。帰ろっか。みんな忘れ物はない?」
「うん。大丈夫!」
「だ、だいじょうぶ」
「うん」
「ああ、俺も大丈夫だよ」
「よし、それじゃあ帰ろっか」
今日も明日も明後日も私は剣を振る。
またあいつに会えた時に、胸を張って顔を合わせられるように。
またあいつに会えた時に、あいつにごめんなさいって言えるように。
「でりゃぁぁ!!」
この世界に来ておよそ50日が過ぎたある日、ウチは今日もレベル上げをするためにパーティーメンバーと共にラングレシア王国王都の近くにあるダンジョンに潜っていた。
始めの頃は魔物を斬るのも殺すのにも怯えていたウチ達だったけど、今では大分戦うのにも慣れてきて、クラスのみんなが魔族との戦争に向けて頑張ってレベルを上げる様になっている。
お姫ちんの話だと、称号のお陰で精神的に戦い易くなっているらしいんだけど、あまり頭が良くないウチにはよく分からなかった。
「おつかれあーちゃん。やっぱりあーちゃんは私達のエースだね!」
ウチの大親友であるさっちゃんこと、岸辺桜子が私に抱きつきながらそう言った。
この世界に来て始めの頃はクラスの雰囲気はすごく悪かった。
みんな親や友達に会えなくなった悲しみを感じていたり、共に暮らす上での不満は自然と湧いてくるものだからそれも仕方ないのかもしれない。
でも、私達は何回も喧嘩しながらも沢山一緒に話して、泣いて、笑って、共に暮らす内に確かな絆が芽生え、今ではクラスメイトの全員とまゆちゃんせんせーが私にとってかけがえのない大切な仲間になっている。
「別にそんなことないっしょ。さっちゃんの魔法とけーくんの盾のお陰でウチが斬り込めたんだし、オサムちんの支援魔法が無かったらあの一撃でトドメをさす事が出来なかった。それに今もこうして佳織ちゃんがウチの傷を治してくれてるし、これはみんなの勝利だよ。言うなれば、みんながエース。的な?」
「もう、何それ。あーちゃんはいつもそうやって私達の事を立ててくれるけど、もっと誇っても良いんだよ?私達のパーティーリーダーはあーちゃんなんだし」
「でも、別にウチは大した事ないよ?  あ、佳織ちゃん回復ありがとね。次はけーくんの回復をしてあげて」
「う、うん。ありがと」
ウチの傷を治してくれていたボブヘアーが可愛らしい佳織ちゃんはニコっと笑いながらそう言うと、スタタタっと彼女の彼氏であるけーくんの元へ走って行った。
佳織ちゃんとけーくんは二人とも人と話すのが苦手でこの世界に来てすぐの頃はみんなと馴染めずにいたけれど、大人しい者同士で何か共感するところがあったのか今では恋人同士の関係になったらしい。
今も二人揃って顔を赤くしながらテレテレと話しているし、二人の仲は良好の様だ。
「ほら、やっぱりあーちゃんは私達のリーダーじゃん。今だってあの二人の仲を取り持とうとしたんでしょ?」
「別にそんな事考えてないよ。ほら、さっちゃんはオサムちんの様子を見に行かなくていいの?」
「べ、別に私とアイツはそういう関係じゃないし。おいオサム!  期待した顔でこっち見んな!」
「え!?  別に俺何もしてないのに酷くね!?」
「うるさい!  あんたみたいなオタクにガン見されると反吐が出んのよ!」
「はぁ?  お前みたいなビッチの事誰がガン見するかよ!」
「何ですって!?」
「やんのか、コラァ!」
「はいはい。相変わらずお二人の仲が良いのは分かったからそこまでにしてそろそろ帰ろ?」
「「べ、別に仲良くなんてないわよ! (ないし!) 」」
そう言って同じような顔をしながら二人揃って顔を赤くするさっちゃんとオサムちん。
やれやれ、昨日の晩だって二人揃ってお城の中庭でイチャイチャしてたのに、どの口が仲良くないだなんて言うのだろうか。
まったく、素直じゃない二人だ。
私はそんな事を考えながら、このダンジョンの二体目の迷宮王の魔石をカバンにしまってステータスカードを取り出した。
よし、これでレベルも30を超えたし、また少しだけ強くなれた。
およそ半年後に迫った魔族との戦争までもうあまり時間が無いし、まだまだ強くならなくちゃ。
この世界に来てから私達は一人残らず戦う勇気と力を手に入れはしたけれど、それは称号やスキルに支えられた仮初めの力に過ぎないと天満っちは言っていた。
お姫ちんの話によると魔族は人族と良く似た姿をしているらしいし、戦争の時に私はこの剣をしっかりと振れるかはわからない。
もしかすると、今こうして私が戦えているのは自分よりも弱い魔物を相手にしているからで、自分よりも強い魔族相手には何も出来ずに殺されてしまうのかもしれない。
でも、私の幼馴染である風舞は多分そうはならない気がする。
あいつは幼い時に父親を亡くしてから命に関しての倫理観や道徳観念が緩くなっているし、私が攫われたあの日から後悔の為かその傾向が強くなっていった。
私があいつを避ける様になった原因の一つには、そんなあいつが怖かったというのもあるのだろう。
頭の悪い私には魔物や動物を殺すようになった今でも、命を奪うという事の意味がよく分からない。
日本にいた頃の私なら、何も考えずに命を奪う事は悪い事だって言っていたかもしれない。
でも、こうして武器を持っていると命を奪う事は良い事でも悪い事でも無いのだと感じるようになる。
この感覚が称号によるものなのか、自分自身の考えによるものなのかは分からない。
それでも、私がこの世界でやるべき事はクラスのみんなと私達に助けを求めてきたお姫ちんとこの国を守る事だけだ。
その為には例え怖くても剣を取らなくてはならないし、例え苦しくても命を奪わなくてはならない。
きっとそれが、勇者の仕事だから。
そして、それが私が風舞に追い付く一番の近道だと思うから。
「あーちゃん?  帰るんじゃないの?」
「あぁ、うん。帰ろっか。みんな忘れ物はない?」
「うん。大丈夫!」
「だ、だいじょうぶ」
「うん」
「ああ、俺も大丈夫だよ」
「よし、それじゃあ帰ろっか」
今日も明日も明後日も私は剣を振る。
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