もふもふ好きの異世界召喚士

海月結城

リュメル〜回避不可能の魔力弾〜

「あら〜? 避けるのですね〜」
「ふぅ。危なかった」

 リュメルは、一手打った。

「では〜、もっと数を増やしましょうか〜」

 そう言って、メリュカは更に倍の約200個の魔力弾を作り出した。

「さぁ〜、倒れなさい〜!」

 そして、魔力弾の雨がリュメルの周りに降り注ぐ。

「冷静に、視野を広く、逃げに徹する!!」

 息を大きく吸い、吐く。そうするだけで、頭が冷えて行くのが分かる。

(見える。魔力弾の軌道がよく見える)

 その間、0.3秒。そして、0.01秒後。リュメルの目の前に魔力弾が迫って来た。
 1発の目の魔力弾を横に体をずらして避ける。
 そこから、リュメルはステージの端っこに沿って走りながら魔力弾を避けるが、それに沿ってメリュカは魔力弾をリュメルに向かって放ち続ける。

「ほらほら〜、さっさと倒れなさい〜」
「喋り方と言葉が一致してないわよ!!」
「あら〜? まだ喋る余裕があるのですね〜。でしたら〜、更に倍です〜」

 リュメルに放ち続けていた魔力弾が切れかける頃、メリュカはさっきの宣言通り、先ほどの倍約400個もの魔力弾を生成した。

「うふふ〜、えい〜!」
「行けるかな? ま、行くしかないでしょ!!」

 メリュカは、ここまで魔力弾を一斉に生成して来たことは今まで一度も無かった。
 だから、これで終わると思っていた。けれども、現実はそう簡単に行かない。

「なんで? なんでこれを避けられるのよ!!」

 いつもの喋り方とは程遠い、素の喋り方が出るほどに驚いていた。
 400個もの魔力弾をその体に触れさせずに避け続けるなんて、針の穴に糸を10m離れた位置から通すぐらい難しい。不可能と言っていいだろう。

 そして、メリュカはそこで致命的なミスを犯した。

「ふざけるのも大概にしてよね!!!」

 ステージが埋め尽くされるほどの魔力弾を生成してしまったのだ。自分の魔力弾の性質を忘れるほど冷静じゃなかった。

「待ってたよ」

 リュメルはそう言って、指を上から下に向けて振り下ろす。ステージを埋め尽くしていた魔力弾の一つが爆発を起こした。それは、連鎖の始まりに過ぎなかった。
 魔力弾の一つが爆発し、更に隣にあった5つの魔力弾が誘爆した。更に、そして、更に。
 メリュカはそこで、自分が犯したミスに気が付いた。自分のすぐ隣に魔力弾があるのだ。

「あ、うそ」
「さぁ、自爆しなさい!」

 次の瞬間。ステージが一つの大きな爆発に呑まれた。

「……リュメル……リュメル!!!!!」

 爆発が収まり、そこにあったのは倒れて黒焦げになった少女と、それを見下ろしている女の子だった。

「……しょ、勝者!! リュメル選手!!!!」
「「「「「オォォォォォォォ!!!!」」」」」

 リュメルは実況の勝利宣言と共に握り拳を空高く上げた。

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