もふもふ好きの異世界召喚士

海月結城

水の精霊

 水色の衣を纏った女性はキョロキョロと周りを見て、僕のことを見つけた。

「貴方が私の事を呼んだキュ?」

 水の中でも綺麗に聞こえるその問いに、僕はコクコクと頷いた。

「それで、もしかしなくても、私の事を呼んだのはあの化け物を倒せって言うキュ?」

 ぶんぶんと横に首を振る。僕は、周りにいるクロたちの事を見る。それで、その女性は何かを勘づいた。

「なるほどキュ。水の精霊ウンディーネ力を貸すキュ。水の中での戦闘の手助けをするキュ。『水中戦闘Lv.5』『水中呼吸Lv.5』『水中移動Lv.5』『水中会話Lv.5』」

 クロたちに付いたバフは全て強力だった。

「全部のスキルがLv.5って、流石精霊だね」
「ありがキュ。さ、これで、戦えるわよ」
「クロ、ルル、ウミ。ここなら、どんなに力を解放しても周りに影響は少ないよ。存分に戦いな!!」
「分かった」「うん!」「うむ」

 ものすごい速さで水上に向かっていく。僕はウンディーネに連れられて水上に向かう。

「なに!? あれで死んでないのか!?」

 水上に現れたクロたちに、ポセイドンは驚いていた。

「ん? 奥にいるのは……ウンディーネ様!?!? そうか。ウンディーネ様がそっち側についたのか」
「さぁ、ポセイドン。ここで、お前は終わりだ。世界は海に沈まない!!」

 クロ、ウミ、ルルが自分の魔力を全力で解放した。
 すると、大気は震え、海が震え、星が震えた。
 クロから、黒と白の魔力が、ウミからは黄金の魔力が、ルルからは銀色の魔力が溢れている。

「それでも、俺には届かん!! 『雷雨』!!」

 ポセイドンが叫ぶと、空に黒い雲が集まり雷の雨が降り注いだ。

「なんてスキルだ」

 その光景に、僕は世界の終わりを連想した。

「ウミ、ルル。邪魔な水を頼んだ」
「うん!」「うむ」

 ウミとルルがポセイドンに向かって刀と爪で戦う中、クロは空に向かって口から何かを放った。

『咆哮砲』

 クロの口から出た何かは空の雲に当たると、その部分の雲が丸く円を描くように穴が空いた。

「まだまだ!」

 クロは、そのスキルで空の雲を無くそうとしているのだ。それを察知したポセイドンが水を操ってクロの邪魔をしようとしたが、それをウミが刀で斬り、ルルがそれに噛み付いたり、爪で切り裂いたりしてクロを守っている。

「小賢しい!!」

 ポセイドンは海に向かって槍を突き刺した。

「……一体なにを?」

 その答えは、すぐに分かった。
 槍を海に入れた衝撃で、それはそれは大きな津波が発生してウミ、ルル、そしてクロを飲み込んで再び海の中に押し戻してしまった。

「クロ! ルル! ウミ!」
「お前の仲間は、今度こそ海の藻屑に変わっただろうな」
「そんな事させるわけないキュ」

 そう言って、ウンディーネが腕を上げると泡に包まれたクロたちが海の中から持ち上げられた。

「既に、空の雲は無くなったキュ。もう、貴方を邪魔するものは無いキュ!!」

 泡が割れた瞬間。クロたちはポセイドンに向かってスキルや魔法を使い始めた。

「もふもふ好きの異世界召喚士」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く