もふもふ好きの異世界召喚士

海月結城

船の揺れ

 クロを探して船内を歩き回っている。

「あれ? クロどこだ?」

 船内は結構狭いんだが、全然クロが見つからない。

「一体どこで魚食べてるんだよ。おーい、クロー!?」
「……ゃ」
「? 聞こえた、のか?」

 もう一度呼んでみる。

「…にゃー」
「外だな」

 なんとなく、外だと思い出てみる。

「あれ? どこだ?」
「何やってるんだ?」

 聞いて来たのは、同じ船員の1人だった。

「黒い猫見ませんでした?」
「黒い猫? いや、見てないぞ」
「そうですか。あ、魚取れましたか?」
「あぁ、取れたよ。それも、いつもよりも質が良いんだよ。君のおかげだな」
「え!? そ、そんな事無いですよ。皆さんの技術ですよ」
「ははは、そうか。ありがとうな。黒い猫、見つけたら教えるよ」
「はい。ありがとうございます」

 今回の大漁は、少しながら僕の運も影響してるかもしれない。

「まぁ、その事は置いておいて、クロー!」
「にゃー」
「やっぱり、クロの声だ。あっちかな?」

 船の先端の方に行ってみるが、それでもクロが見つからない。

「あれ? 本当にどこに行ったんだ? 後、探してないのが……」
「にゃー」

 その声で、後ろを振り返ってみると、いた。

「全く、船の屋根の上にいるとは思わなかったな」
「にゃー」
「どうだった? 美味しかったか?」
「にゃー」
「あ、スキルスキル」
「美味かったぞ!」
「お、おう。そっか、良かった」
「まだ、余ってるか!?」
「いや、3匹だけ絞めて、他は海に返しちゃったよ」
「な!? そうか……」
「そんなに、落ち込まないでよ。また、釣りしにみんなで来たら良いんだから」
「……そうだな。……っ!?」
「クロ? どうしたの?」
「……こいつは」

 クロは、屋根から飛び降りて船の一番後ろまで駆けて行った。

「ど、どうしたんだよ」

 クロの背中を追う様にして、移動しようとした瞬間。船が、大きく揺れた。

「うわぁぁぁあ!! な、なに!?」
「イサミくん!! 船のどこでもいい! 掴まれ!」
「は、はい!!」

 近くの柱を掴んで、その揺れに耐える。

「一体なにが……」
「近寄り過ぎだ」
「な、何にですか?」
「海の王の巣にだ」
「……海の王。何者なんですか?」

 その答えに、ケダンさんが答えるより早く、海の王が姿を現した。

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