螺旋階段

山田 みつき

6

少し前、雪の未だ溶けていない頃。
初めてパパの靴を履きたくなかったけれど、パパの怒鳴り声が怖くてブカブカな黒い靴で走った。
その時、とても苦くて塩っぱい血の味が口の中にいっぱい広がった。

紀一からの恭子への愛情の重さのパンチが偶然に私の左頬に直撃したのだ。

驚いた桜が目を見開いて、私よりもうんと先に早く飛び出した時、ママのピンクのサンダルを履いて駆け出した事、秘密にしたでしょ。

それなのに桜が走る矛先、近所のコンビニエンスストア迄走る速度は追いつけなくて。
二人の靴音が滑稽な音でザクザク鳴らしてる。


香澄「はぁはぁはぁ…待って…桜!!私が怒られるでしょ!早く一緒に戻ろう?ね?」


桜は走り過ぎて、水色のジャージですっ転んだ。


桜「…うっうっ…うわぁーん!お姉ちゃーん、痛いよぉ、痛いよぉ。」


桜の膝には雪が付着していた。
私は桜の膝を手で、雪を軽くほろって、その後私が恭子から怒鳴られる事を想定して怖かった。


香澄「…こんなの、なんともないから!言う事聞きなさい!私はあんたのせいで怒られるんだからこのぐらい何ともないでしょ!」

桜「御免ね、お姉ちゃん。」

香澄「なんで…どうしてお前ばっかり!」


軽く桜に叩いた後、桜は笑ってのけた。
其はまるで少年の様な笑顔で、私は桜にズルイとさえ感じた。
私は苛立って桜の膝を目掛けて、蹴り飛ばした。
桜のジャージの膝部位に穴が開いた。
どのみち怒られる。

桜の血液が、真っ白な雪に飛び散った。
私は其を見て、何故だか興奮し、更に苛立つ。

でも、それでも…
私は大好きなピンクのジャージで良かった。
桜には譲ってあげるよ。
私が少し痛いと感じた、ピンク色の、ママの健康サンダル。


いつか、桜も知ると良い。
心も何もかも、散って、散っていけばいい。
そう。
心さえも。

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