異世界に飛ばされたが選択肢を間違うと必ず死んでしまうなんてあんまりだ!~早く元の世界に帰らせてくれ!~

やまと餅

異変と謎の男

「なんだ……!? 」


 明らかな異変。
 暫く、地が揺れ、辺りの木々がざわざわと揺れた。森の動物達も異変を察して居るようでびくびくとしている。
 遠くで聞こえた大きな音と地響き。
 何があったはわからないが、何だか嫌な予感がすると思っていた時だった。
 "ザッザッ"と少し離れた場所から複数の足音が聞こえた。
 そっと木陰から確認すると、武装をした集団が居た。兵士……というものだろうか。








「なっかなか見当たらないわねぇ」


 口調は女だが低く野太い声……1番前にいる大柄の男から出た声であった。
 後ろの兵士達よりしっかりしていそうな鎧を着ており、赤いマントもついている。
 体格も後ろにいる兵士達とは2倍以上は違うので、恐らくこの男がこの集団のリーダーなのだろう。


「……あら? 」


 バチっと目があった。
 男がにやっと笑い近づいてくる。
 舐め回すような気持ち悪い視線で、上から下まで確認してから男は問いかける。


「……貴方、人間に見えるけどこの森に居るってことはエルフかしら? 」


「いっ、いや、おっ、俺は人間です……!」


 吃り焦って答える。
 何故びくびくしてしまうのかというと、謎の威圧感があるということもあるが、男の手に大きな剣があるのが大きな要因だろう。
 返答によっては迷わず殺す、と言うような意思を感じるのはきっと気のせいではない。


「ふぅーん、じゃあどうやって結界を抜けて森に入ったのぉ? 私達が結界を壊した後に入ったとは考えられないし、エルフの知り合いでも居るのかしらぁ」


 目を細め甘えるような気持ち悪い声と口調で問われる。
 あの大きな音は結界を壊した音だったようだ。
 そしてエルフの知り合い、という言葉にふとリーシェの事が頭に浮かぶが、別にリーシェのお陰で森に入れたわけではない。


「なっ、何で入れたかはわからないんだ……! エルフの知り合いなんてものも居なっ「私に嘘は通じないわよぉ?」」


 居ないと言おうとした言葉を遮り、スッと男の手が伸びてくる。
 ビクッと身体を跳ねさせるが、男は構わずその手を頬に持ってくる。


「αγλώίαελλικήγλσα……」


 目をつむり良くわからない言語を喋ったと思ったら、男はまたにやっと笑う。


「……何で入れたかわからないってのは本当みたいだけれど、エルフに心当たりはあるみたいねぇ? 」


「なっ、何で……」


「私に嘘は通じないって言ったでしょう?」


 ウフフと気持ち悪い笑いをしながら、男は手に持っていた大きな剣を一振りすると、ズズズッと言う音と共に木が倒れた。
 ――殺す気だ。
 恐怖からか震えが止まらなくなり歯がガチガチと鳴る。血の気も引いて顔も真っ青だろう。


「その木の様になりたくないのなら、そのエルフの元まで案内しなさい」


 ……案内なんてできるわけがない。
 リーシェに出会えたのは全て偶々だ。
 彼女が何処に居るかなんて俺は知らない。
 どうしたらいい!? なんて答えれば生き延びられる? と焦りつつも下を向きながら考えていると、ふと威圧感の様なものが無くなっていることに気づく。




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 ・適当な場所を案内する
 ・戦闘する
 ―――――――――――――――




 バッと顔をあげると選択肢が出ていた。
 そして驚くことに、男達が動かない。瞬きすらしていないのだ。


「……選択肢が出ている間は時間が止まってる……? 」


 きっとそういうことだろう。
 今まで、選択肢が出た時は一人だった為気づかなかった。
 確かに、良く思い返してみると、選択肢が出た時は何時も静かだった様な気がする。選択肢に気を取られていて風がやんでいたりすることに気づけなかった。


 俺は動けたが、小さなボックスの中に居るような感覚で、それ以上は動くことが出来なかった。
 つまり、と言うことだ。


 じゃあ、今のうちに作った弓を構えて、戦闘するを選んだ瞬間放てば勝てるのでは? と考え、バッグからはみ出ている弓に手をかけたが、弓を取り出すことは不可能だった。何故か鉛のように重く、全く動かなかったのだ。




 ――選択肢のお陰で少し冷静になってきている。
 ならば、選択肢にない選択は選べるのか? と考える。
 正直今出ている2つの選択肢、どちらも死ぬ未来しかみえない。
 適当な場所を案内したところで、リーシェには恐らく出会えないだろし、出会えなければこの男の様子からして間違いなく殺される。
 それに、仮に出会えたとしてもこの男をリーシェに会わせてはいけない気がした。
 この男の目的はわからないが、良くない事のような気がするのだ。
 戦闘も、勿論経験の差もあるが、俺が持っている武器は弓とパチンコ。
 この距離では剣を持っている相手の方が有利だろう。しかも俺は構えてすらいない。恐らく構えようとした瞬間に殺られる。


 ――どうせ死ぬのならば少しでも検証をしたい。
 出ている選択肢以外を選べるのか……
 なにか、この2つの選択肢以外に何かないかを考える。






「……逃げられれば…………。俺は、俺は逃走するを選ぶぞ! 」






 大きな声で意思を主張する。
 すると、ウインドウ画面の文字が文字化けしていく。
 何だ……? と思いながら眺めていると、少しずつ目の前が真っ暗になっていく。




 ――最後に出た画面を俺が見ることは出来なかった。








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 表示されている選択肢以外の
 選択肢を選ぶことはできません。
 ペナルティを与えます。
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