異世界に飛ばされたが選択肢を間違うと必ず死んでしまうなんてあんまりだ!~早く元の世界に帰らせてくれ!~

やまと餅

武器を作ろう!②

 木々の枝葉から漏れる太陽の日差しで目を覚まし、昨日と同じように顔を洗う。
 異世界にきてからまだ数日しか経っていないが、この生活に少しずつ慣れてきている自分がいる。


「何だかんだ適応できるものだなあ……人間ってすごいな。」


 まあ、死んでループしてるのも全て含めると結構な日付が経っているし、ある程度適応出来るのも納得か……とも思う。
 勿論ループ、というか死ぬことに対しては適応したくないが。


 周りを見渡すと、昨日失敗した武器作りの残骸がある。改めて材料を組み立ててみるが、やはり上手く形にはならない。


「はぁ……やっぱり今日はあの子を探すしかないか」


 ため息をつき、何処に居るか、というかまだこの森に居るかどうかもわからない少女を探すことにし、散らばっている材料を片付ける。
 植物の繊維で作った縄やゴムのような蔦、小さな木の枝達を入るだけバッグに詰め込み、バッグに入りきらなかった少し長めの木の枝だけは別で手に持ち歩き出す。


「あてもなにもないんだよなあ……」


 歩きながらぽつりと溢す。
 不安だらけだが、一人でどうにか出来る気はしない。とにかく探し回ってみるしかないだろう。








 ――――どの位の時間を歩き回っただろうか。
 恐らく実際はそんなに時間は経っていないのだろうが、体感では数時間は歩いている気分だ。
『少女を探す』という目的はあるが、見付からず、ただただ歩いているだけだと正直かなり疲れる。


「昨日みたいに材料集めとかならまだ足の痛みとか疲れもある程度忘れられるんだけど……」


 はぁ……と疲れた身体を木に預ける。
 疲れているというのもあるが、木漏れ日と風が気持ちよく、うとうととしてしまう。
 そのままゆっくりと目を閉じると、眠りの世界に落ちてしまうのだった――




  






 ――両頬に謎の違和感
 何だ? と思いながら目を開けると、あの少女の顔がどアップである。
 キラリと輝くエメラルドグリーンの瞳から目が離せなかったのと、あまりの驚きで、暫くは瞬きをすることしか出来なかった。


「はっ!? なん、ふぇ? 」


 暫くして口からでたのは変な言葉だった。
 両頬の違和感の理由は、少女がつねっていたからのようで、上手く言葉を発することが出来なかったのだ。


「あっ、良かった。生きてた」


 つねっていた手を離し少女が言う。
 心配……してくれたようだ。
 にしても、これはチャンスだ。今この少女を見失えば、また森を探し回らなければならない。




「…………君を探してた」


「?? 私を?」


 少女はきょとんとしている。
 初めて……いや、殺された日を入れれば2回目か。
 何だか雰囲気が違う様に感じるのは、その時より警戒を感じないからだろうか。




「森にある材料で武器を作ろうと思っているんだけれど上手くいかないんだ。頼む。手伝ってくれないか? 君も作り方がわからないなら、弓の構造を見せてくれるだけでもいい。」


「……その武器はこの森からに必要なんだよね? 他の理由はないよね? 」


「?? 勿論」


 他の理由とは? と聞き返そうと思ったがわざわざ聞いてきたということは、その理由は少女にとって良くないことなんだろう思い聞き返すのを止めた。


 少女は暫く悩んでいたが、了承してくれたので、とりあえず昨日集めた材料を広げて見せる。
 材料は揃っていたようで木を削り、少し水をつけしならせた状態で、植物の繊維で作った縄を巻き付けとめていく。
 昨日は縄ではなく蔦を使おうとしていた為、上手く止めることが出来なかったのだが、縄に変えただけでしっかりととめることができた。
 弦の張り具合をチェックして大丈夫であれば、これだけで弓の本体は完成らしい。
 矢に関しては数本少女からもらうことができた。


 他にもY字の枝とゴムのような蔦をつかったパチンコを一緒に作ってもらった。
 試しに使ってみたが、弓矢程ではないにしろ、ある程度の破壊力があった。
 その辺の石やドングリなどを使えるのもいい点だ。


 武器作りの最中彼女の名前も知ることができた。
 この少女の名前は『リーシェ』というらしい。




「こんな簡単に……本当にありがとう」


「無事に都市までたどり着けるといいね」


 ニコッと少女は笑う。
 花が咲くような、そんな笑顔に思わず見とれる。


「毎日リーシェに会えるならずっとここにいてもいいんだけどね」


 なんて、冗談混じりではあるが、もし受け入れてくれるならわりとそれもありかなと思っている言葉を口にする。


「ふふっ、冗談はやめてよ」


 くすくすと笑いながら、そう言うリーシェは、俺が本気で言ってるとは思っていない様だ。


「結構、本気で言ってるんだけどなぁ……。むしろ、一緒に着いてきてくれたりしない?」


 可愛くてもっと一緒に居たいなと思う邪な考えもあるが、ループ前、走って近づいた俺の心臓に一発で矢を当てるくらいだ。
 無事に都市にたどり着ける的な意味でも、もし一緒にきてくれたりしたら万々歳である。


「それは……無理だよ」


 リーシェは困ったように笑う。
 だが、嫌がっているというよりは、出来ないと諦めているように見える。
 無理強いするつもりは無いが、その様子が気になり質問をぶつける


「どうして? 」


「それは――
 ……この森を出た辺りの魔物はわりと強いから気をつけてね。幸運を祈るよ」


 そういうと、なにかを口ごもったリーシェは、出会った時と同じ様にくるりと向きを変え、逃げるように走り去っていく。




「っ……本当に助かった! ありがとう! 」














 ―――彼女と別れてから、その場で休憩をとり少し暗くなってきたその時だった。
 遠くで"ドォン!!!!" という音が聞こえ、地面が揺れ森がざわめいた。

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