鮮血のレクイエム

あじたま

Genocide編 8話 神々の処刑場

目の前にいる謎の少女…何故だか分からないが、こいつからは何か嫌なものを感じた。
「私ね、とっ…てもいい気分なの!今まで中々遊べなかったけど、久々に外で遊んでいいよってお姉様が言ってくれたんだ♪」
「い…妹様…。」
「でもね、ここにいるオモチャはみんな脆いんだー。ちょっとドカーンてしたらすぐ無くなっちゃうの。でも貴方達は中々壊れないらしいから。」
「……何もんだよ、あんた。」
「あ、そういえば自己紹介してなかったね。私の名前はフランドール・スカーレット、気軽にフランって呼んでね。少しは楽しませてくれると嬉しいな♪」
それを聞いた瞬間、俺はとっさにファイティングナイフを構える。他の奴らも各々警戒態勢に入った。
「…気をつけなさい。妹様は…フランお嬢様は今までの怪物共とは訳が違うわよ。」
「なぁ、さっきお前あの少女のこと妹様って…。」
しかし俺が咲夜に尋ねるよりも先に、少女は攻撃を仕掛けてきた。
「きゅっとして…ドカーン!」
「なっ!お前ら伏せろ!!」
俺はとっさに皆に呼びかけ、建物の外へと飛び出す。それと同時に建物は一瞬の爆発と共に崩れ去った。
「あはははははははははは♪」
「はぁ、はぁ…。生きてるか!お前ら!」
「こっちは大丈夫よ、アレン!」
「とにかくここでは分が悪いわ。近くの大通りまで走るわよ!」
「あれ?今度は鬼ごっこをするの?負けないよーーー!」

大通りまでの道のりは分かっていたので、ものの2分でたどり着いた。しっかしあいつ、空飛びやがって…反則過ぎるだろ!
「もーー!どこまで逃げるの!」
「はぁはぁ、おい!どうすんだよアレン!」
「っち、決まってんだろ。覚悟を決めて戦うしかない!」
「私も同意見よ。このまま逃げ続けていてもいずれ体力の差でこちらが先に限界が来わ。」
「………。」
「俺とルイスが前に出る。お前らは後方で援護してくれ!」
「…分かったわ。行きましょう咲夜。」
「…………。」
「……咲夜?」

「へへ、お前と共闘なんざ何年ぶりだ?」
「さぁな…遅れるんじゃねーぞルイス!」
「おうよ!」
俺たちは各々の武器を展開し、少女のいる方向に向かって走り出した。
「もう鬼ごっこは終わり?それじゃ、いくよー!」
そういうと少女は1枚のカードを取り出す。…あれは、スペルカード!
「ルイス!来るぞ!」
「んなもん分かってる!」
「スペルカード!禁忌『クランベリートラップ』」
宣言と共に無数の弾幕が自分たちを囲み始める。俺はベレッタで進行方向から迫る弾幕を打ち消していき、隙を見て少女に発砲する。だが、俺の銃弾は密度の高い弾幕によってかき消されてしまった。
「ふふふー♪そんな攻撃当たらないよー!」
「くっそ!頼むアリス!」
「ええ!スペルカード!蒼符『博愛の仏蘭西人形』」
アリスの元から散会した人形達から色とりどりの弾幕が放たれ、相手の弾幕を次々と打ち消していく!
「あははははっ!もっと楽しも♪」
「はぁ、はぁ…。」
「おい、大丈夫なのかよアリス!」
「私なら問題ないわ。それよりも目の前の敵に集中して!」
そうだ、こんな緊迫状態で他人の心配をするなんて自殺行為じゃないか。それにこんなの…俺らしくない。…あの頃と同じように…目の前の敵を殲滅することだけ考えろ…。
「……すぅーー…はぁーー。」
大きく深呼吸。両手に持っていた拳銃をしまい…あの時のナイフを両手に構える。
(アレンの奴…まさか、また昔みたいに。)
「……ふっ!」
勢いよく地面を蹴り出す。ターゲットは俺から距離20m、高さ10mの位置で浮遊している。このままでは俺のナイフは届かない。…なら敵をナイフが届く位置まで誘き寄せれば良いだけだ。俺は懐から強力なスモークグレネードを取り出し、地面に叩きつける。それと同時にルイスにアイコンタクトをとった。
「目くらまし!?でも、これくらい…って、え?」
恐らく少女はあの一瞬で俺が少女の視界から消えたことに驚いたのだろう。そして煙の中から現れたのは俺ではなく。
「よう嬢ちゃん。悪いが次は俺と遊んでもらうぜ!」
ルイスだ。元相棒におとり役にするのも気が引けたが、こうでもしないと俺の攻撃が当たらないのだから仕方ない。俺は丁度近くにあった非常階段を駆け上がった。

サイドチェンジ ルイス

あのアイコンタクトで全てを理解した。要は俺におとりをやれってことなんだろう。…ほんと、昔から人使いだけは荒いよな…お前。
「…アリスちゃん。あの嬢ちゃんの相手は俺に任せてあんたはルイスが飛び降りた時に受け止める準備をしてくれ。」
「飛び降りるって…え!一体どういう事!?」
「説明している暇はない、とにかく頼んだ!」
それだけ言い残すと俺は再び前線へと走った。
「よう嬢ちゃん。悪いが次は俺と遊んでもらうぜ!」

サイドチェンジ 咲夜

あれは私の知っている妹様ではない。そうと分かっていても体は言うことを聞かなかった。どうしても、あの時のことを思い出してしまうから。
『咲夜!命令よ!その手で私を殺しなさい!!』
あの方たちは…途方に暮れていた私を家族同然に受け入れてくれた。そんな人たちに…刃を向けるなんてこと…。
「……駄目ね。…本当に。」
みんな命を懸けて戦っているというのに自分はどうだろうか。あの時もそうだ、結局自分はお嬢様の最後の命令さえ全う出来なかった。…そのせいで…お嬢様達は。
「……さ…や。」
私は今も逃げ続けている。あの時の苦しみから。
「咲夜!!」
「……あ、アリス?」
「協力してほしいことがあるの!」

サイドチェンジ アレン

あれから非常階段の最上階までたどり着いた。だがこのままジャンプしたところであの少女までたどり着くことはできない。…それなら。
「よし、もう十分だ!ルイス!」
わざとフランにも聞こえるように大声で叫ぶ。注意をこちらに向けるためだ。
「い、いつの間に!でも壊しちゃえば問題ないよね♪きゅっとして…」
よし。後はタイミングよくジャンプできるかどうかだ。
「どかーん!!」
「……ここだ!」
俺は勢いよく階段から飛び降りた。それと同時に階段が爆発し、その勢いでフラン目掛けて突撃する。
「え!う、うそ!?」
「はぁあああああああ!!!」
一気にフランの翼にナイフを振り下ろす!そのまま加速度に身を任せフランを地面に叩きつけた!そして同時に俺も落ちようとした瞬間、時は止まった。

「だ、大丈夫?アレン。」
「あぁ…何とかな。」
どうやら俺が地面に叩きるけられる寸前に咲夜が時を止めて、アリスが人形で俺をここまで連れてきてくれたようだ。
「…アレン、あなた私とアリスがいなかったら今頃死んでたわよ…。」
「ほんとお前は無茶苦茶なことしかしないよな。」

「アハハ……。」

「お、おい!あいつまだ生きてるみたいだぞ!」
「あれだけの傷を負ってまだ立ち上がれるなんて……。」
「…俺に任せろ。」
「アレン?」
「良いから…そこで黙って見てるんだ。」
俺は立ち上がるとフランの元まで歩いた。その間にベレッタを懐から取り出す。
「…一つ教えろ。お前は何者だ、何故俺たちを襲う。」
そう言ってフランの額に銃口を向ける。
「フフフ…さぁ?誰だろうね。」
「…話にならないな。消えろ。」
そう言って引き金を引こうとした瞬間、フランが急に口を開いた。
「お話にならないのはそっちだよ。…アレンはどっちの味方なの。」
「はぁ?いつから俺はお前らの仲間になったんだ。気でも触れたのか?」
「…まぁいいや。どうやらお姉様の言った通りみたいだし。」
「お前一体何言って…。」
「スペルカード!禁忌『レーバテイン』」
「なっ!?」
俺はすぐさまバックステップでフランから距離をとる。…どうやらまだ戦えるだけの力が残っていたようだ。
「あはははははははははははは♪さぁ!本番はこれからだよ♪」
「大丈夫かアレン!!」
「っち、悪い。俺としたことが油断した!」
「さっきはビックリしたけど、次は当たらないよ♪はぁああああ!!」
そう言ってフランは身の丈に合わない炎の剣で俺たちに切りかかる。
「くっそ!回避が間に合わな…。」

「スペルカード『仮面喪心舞 暗黒能楽』。」

それは瞬間の出来事だった。急に辺りが暗くなり、何者かがフランの剣を舞うようにすべて捌ききったのだ。やがて再び辺りに光が戻り、現れたのは青く光る長刀を持った一人の少女だった。
「大丈夫?アレン。」
「お、お前!あの時の!」
「どうやら覚えててくれたみたいだね。」
「…おいアレン!一体誰なんだこいつは!」
「あ、そういえばアレンにしか自己紹介してないんだった。私は無意識のポーカーフェイスの秦こころ。キラーーン!!」
『………。』
おい、絶対変な奴だと思われてるぞこころ。…いや元々可笑しかったか。一方フランはと言うと、こころを睨みつけていた。
「…また、私の邪魔をするんだね…こころちゃん。」
「私はアレンを助けただけ。」
「あの時もそうだよ!!こころちゃんが私を止めなければ…ゆうとは……優斗は死ななかったんだ!!」
「……ごめん。」
「…なんで、なんでこころちゃんは私の邪魔ばかりするの!!教えてよ!」
「それが…フランの為だったから。」
「もう…いいよ。なんだか疲れちゃった。」
そういうとフランは空へと飛び出した。
「今度は…たとえこころちゃんでも……壊すから。」
「ちょっと!待ちなさい!」
フランはアリスの言葉に一切耳を貸さず紫色の霧の中へと消えていくのだった。

「で、どういう事なんだこころ。お前もこの事件に巻き込まれてたのか。」
「そう。というかこの町にいる全員が巻き込まれてる。」
「首謀者は私たちを一体どうしようっていうのかしら。」
「……そんなの、殺すためだよ。」
「じゃあ何で俺たちを殺そうとするんだ!」
「……咲夜は…知ってるんじゃない?」
「…ええ。」
そういうとみんなが咲夜の方へ向いた。
「…まず、今私たちがいるこの世界はExecution ground for gods(神々の処刑場)って言うの。」
「神々の処刑場!?俺たちは別に神じゃないぞ!」
「恐らく何かの例えだと思うわ。…私が以前に一度こことは別の場所で同じような体験をしたことは話したわよね?」
「そういえばそんなこと言ってたな。たしかその時はある人物に助けてもらったんだろ?」
「その通りよ。それでその時に教えてもらったのよ、何で首謀者共はこんなことをするのかを。」
「一体何の為に…。」
「彼が言うには『悪魔の王』を復活させるため…だそうよ。」
「悪魔の…王?」
なんか聞いたことがあるような……。

『ごめんね……アレン君…。』

「うぐっ…ああ…!」
な、なんだ!?急に頭が…。それにさっきのは一体。
「ちょっと!大丈夫、アレン?」
「あぁ、大丈夫だ…続けてくれ。」
(…さっきのアレンの反応……やっぱり。)
「どうしたの?こころ。」
「……なんでもない。」
「なぁ、悪魔の王って一体何なんだよ。」
「それは…私にも分からないわ。」
「取り敢えず俺たちはその良く分からない奴の為に殺されようとしているわけだ。」
「へっ!このままそう簡単に殺されてたまるかってんだ!なぁ、お前ら!」
「ん、ルイス良いことを言う。」
「そうね。私もやられっぱなしは気に食わないわ。」
「だがその首謀者は一体どこにいるんだ?場所が分からなければ反撃のしようがないぞ。」
「それは大丈夫。みんなに会う前にもう見つけてあるから。」
「…こころ、お前今までそんなことしてたのか。っていうかどうやって見つけたんだよ。」
「なんて言うか……勘?」
「嘘つけ。勘で見つかったら誰も苦労しねぇよ!」
「まぁまぁ、もしかしたら本当に勘だったのかもしれないじゃない。場所さえ分かれば手段なんてどうでもいいわ。」
「…そうだな。」
何だか釈然としないな…。本当にまぐれなのか?
「それで?そいつはどこにいるんだ。」
「ここから少し歩いた場所にある公園。そこに首謀者がいるはず。」
「よしっ!それじゃあ早速向かうとするか!」

『おおーーーーーー!!!』

こうして俺たちの反撃が……始まった。

続く

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