勇者にとって冒険の書は呪いのアイテムです

ハイイロチョッキリ

⑬こだいへいき(3)



冒険の書のセーブポイントから再開します。
『おお、勇者よ、死んでしまうとは情けない!』


 

[……我…ヒーロー…セツリと……達の誕生……!……まで賭けた…は倍率100倍………が10000Gに大化け……だ、クソッタレ!そんでもってこのまま前人未到3回戦にいくぜ。さぁ、いってみよー!]

実況の声がうっすらと聞こえ、セツリの意識と共に段々と明瞭になっていく。

正面の扉がゆっくりせり上がり、巨大なロボットが目の前に姿を現わす。

「おいおいおいおい、なんだよ、これは」

ユージーンが聞き覚えのある言葉を繰り返す。

「古代兵器ゴーレム…本では読んだことがありますけど、これは本当にシャレになりません。対竜族兵器ですよ」

「ドラゴンを倒すことを想定した兵器?それはヤバそうな響きね」

ゴーレムがリエルの方を向き、頭部につけられた目が赤く光る。

「ちょっと…なんかヤバいかも」

 ゴーレムは先程同様に水色の光の刃を出現させる。

『アリエス!』

セツリは咄嗟に精霊加護の絶対防御魔法を唱える。

そしてリエルとの間に割って入る。

あの装甲には水切りの剣は無力だ。

そしてあの刃はユージーンの防御すら無いものと同じだ。

セツリの脳裏で様々なシミュレーションがなされる。

しかし、突破する術が全く思い浮かばない。

状況は理解した。先程セツリは死んだのだ。

そして冒険の書で復活した。

しかし、今回はいつものように仲間に状況を伝える時間がない。

「セツリ、俺が…」

『めいれいさせろ!ぜんいん→いのちをだいじに!』

セツリはユージーンの言葉を遮り、全員へ指示を出す。

一撃だけなら防ぐことはできる。

セツリは鱗の盾を構えてゴーレムの懐に飛び込む。

そして、リエルに襲いかかる凶刃の柄の部分を全力で盾で叩いた。

刃に触れた部分の盾が溶け出すが、構わずゴーレムの剣の軌道を逸らす。

リエルもセツリの声で咄嗟に回避動作を取っていたため、ギリギリでゴーレムの攻撃を回避する。

『リエル…めいれいさせろ!「エルファ」→セツリ』

「エルファ!」

珍しく行動を指定してくるセツリに只ならぬ事態と察したのか、なにも言わずリエルは指示通りにセツリに攻撃速度を倍加させる「エルファ」を唱える。


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品