勇者にとって冒険の書は呪いのアイテムです

ハイイロチョッキリ

⑬こだいへいき(2)

「ミスリル…古代人が創り出した金属です。ユージーンさんの魔鉄と同じかそれ以上の物理・魔法耐性があります」

「…なにそれ、絶望的じゃない」

「とにかく、ユージーンさんが危ないです。回復します。…「アガペラ」!」

ミリが回復呪文を唱える。

地面に魔法陣が出現し、範囲内の味方に癒しの光が降り注ぐ。

ユージーンの顔色が少し良くなる。

「「バブリー」!」

リエルも続けて詠唱し、ユージーンの身体を癒しの泡で包みこむ。

「…サンキュー、落ち着いてきた。…アイツの攻撃は受けられねーな。どうする?」

全身ミスリルでできた対竜族兵器はなおもリエルを狙い続ける。

「…セツリ、私が囮になるから隙をついて一太刀入れられない?」

『…』

セツリは無言で水切りの剣を構える。

「…リエル、セツリ、俺がやる…『赤化』」

ユージーンの身体がゆっくりと朱に染まる。

ユージーンは完全には塞がりきっていない失った左腕から血を流しながら、右腕に力を込める。

「おらぁ!」

ゾンビキラーを最短距離でゴーレムへ叩きつける。

しかし、ミスリルの装甲が魔力のこもった剣を完全に防ぎきり…

ゾンビキラーは砕け散った。

ゴーレムはユージーンに目もくれず、リエルへモーターの駆動音を響かせながら突進する。

「セツリ!」

リエルが叫ぶと同時に横へ飛び退く。

『真・稲妻斬り!!!』

セツリが『雷歩』を使い、一瞬で距離を詰め、至近距離からゴーレムの頭部目掛けて全力の必殺技を放つ。

雷鳴が轟く。空気が震える。激しい熱が周囲を焦がす。

しかし、ゴーレムは無傷。

『!?』

ゴーレムの持つ水色の光の刃がセツリごとリエルを両断する。

セツリの意識はそこで途絶えた。

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