勇者にとって冒険の書は呪いのアイテムです

ハイイロチョッキリ

⑫とうぎじょう(6)

[さあ!皆さんお待ちかねの挑戦者だ!今日の挑戦者はセツリと愉快な仲間たちだ!]

闘技場全体に魔法で増幅された実況者の声が響き渡る。

控え室の扉が開き、セツリ達は闘技場の中へと招き入れられる。

[今日の挑戦者はひと味違うぞ!なんと東の大陸出身の冒険者達だ!まずリーダーのセツリはあの病魔パンデラや海魔ヒルテデスを倒しているらしいぞ。まるで勇者の再来だ!]

ワーッ!と歓声が上がる。

[そして、その傍にいる小柄な女性はあの東方協会の期待の新人!魔導学院を最年少で首席で卒業した天才魔導師のミリだ!]

「え?ちょ…魔導学院卒業生だってのは聞いてたけど最年少で首席卒業ってマジ?」

ユージーンがアナウンスを聞いて思わずミリに尋ねる。

「…ええ、まあ」

ミリが眉をひそめながら頷く。

「とんでもねぇな」

ミリの反応から察するにあまり話したくないのだろうか?とユージーンは思いそれ以上は聞かない。

[そして、今の実況を聞いておったまげてるヒゲ面金髪マッチョはユージーンだ!セツリの相棒で怪力の持ち主。パーティのムードメーカー的なお調子者野郎だ]

「おい!俺だけ悪意があるぞ!」

ユージーンはアナウンスに文句を言うが実況者はお構いなしにアナウンスを続ける。

[そしてそして、皆さん知りたがってる人も多いのでは!?あの麗しの女性はリエル!彼女はなんと海底都市の歌姫…人魚だ!女神にすら愛される彼女の魅力は魔物すらも魅了するらしいぞ]

「…変ね。私が人魚だなんて、誰にも話してないけど」

リエルは違和感を覚える。

「そうなんですよ。誰もプロフィールなんて伝えてないのに、なぜこの実況者は私達のことを知っているんでしょう?」

ミリがリエルの疑問を明確に言葉にする。

しかし、その疑問について向き合う間も無く、正面の扉が開き、中から銀色に光る身体を持った魔物が現れた。

[それではまずは小手調べ。1回戦はアイアンデビル!ではセツリと愉快な仲間たち、いってみよう!]

アナウンスと同時に銀色の悪魔が翼をはためかせ、こちらへ突進してくる。

アイアンデビルが現れた!

「ッ!来ます」

ミリが叫ぶ。

セツリの攻撃!

セツリは水切りの剣を鞘から引き抜き、アイアンデビルに斬りかかる。

強い衝撃と共にセツリの剣が跳ね上がる。

アイアンデビルの身体は鉄のように硬く、ダメージを与えられない。

「ちょ…今のセツリでノーダメージかよ」

「物理攻撃耐性が高いようね。…ならこれならどう?「ウォルタン」!」

リエルの身体の前に無数の魔法陣が現れ、水の弾丸が一斉に発射される。

水の弾丸はそれぞれが意思を持つかのように別々の軌道からアイアンデビルの身体へ飛んでいく。

しかし、この水の弾丸もアイアンデビルにダメージを与えることがかなわない。

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