勇者にとって冒険の書は呪いのアイテムです

ハイイロチョッキリ

⑫とうぎじょう(4)

リエルは歩行の練習をしばらくするとあっという間にマスターし、元々の素早さのステータス高さや空間認知の高さも相まって戦闘でも水中と遜色なく実力を発揮できるようになった。

「賢者フラトニール様が示したテレス神殿に向かうためには、もっともっと北上していく必要があります。そして…」

ミリが目の前にある門を見上げた。

「この闘技場を勝ち抜かなければこれより北には進めません」

西の大陸は東の大陸以上に魔物の活動が活発だ。

そして西の大陸の北の方は魔物達が特に強い。 

その為、かなりの実力がなければここから先は通さぬよう近隣諸国の間で取り決めがされている。

目の前の門をくぐるには通行手形が必要であり、それを手にすることができるのは闘技場の覇者のみ。

「1人しか北には行けないってことか?」

ミリにユージーンが尋ねる。

「いえ、闘技場はパーティでの参加が可能です。1人から最大4名ですね。運営側が出す魔物達を倒すことで実力を示す必要があります」

「相手は魔物なのね。でも、それなら私達楽勝なんじゃない?」

リエルがクスクスと笑う。

「…だと良いのですが…」

ミリが顔を曇らせる。

『?』

「なにか気になることがあるのか?」

セツリとユージーンがその表情に疑問を抱く。

「この数年、冒険者達が何百、何千と闘技場へ挑戦していますが、誰一人として北上を許されていません。それが少々気になるのです」

「でもさ、それってつまり、強い北の魔物達が野放しになってるってこと?」

リエルが首をかしげる。

「…そうなります。単に冒険者達が実力不足なら納得できるのですが…」

「まあなんにせよ、やってみればわかるだろ」

ユージーンがにやりと笑う。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く