勇者にとって冒険の書は呪いのアイテムです

ハイイロチョッキリ

⑪かいまひるてです(9)

セツリは全速力で水をかき分け、ヒルテデスに接近する。

それを迎え撃たんとヒルテデスは残り6本の触手と2本の触腕を構える。

ヒルテデスは口から大量の墨を吐き、セツリの視界を奪う。

毒の効果もあるのか、身体がチリチリと痛み、所々赤く変色するがセツリは怯まず、鱗の盾を前に構えて突き進む。

「ゴポポポ…「バルアーダ」!」

ヒルテデスがセツリを拘束せんと魔法を発動する。

セツリの身体の周りに無数の黒い鞭が現れ、動きを止めようとするが、セツリはその一部を水切りの剣で払い、そして僅かな隙間から脱出する。

「ゴポポポ…なに!?」

セツリの予想外の動きにヒルテデスが動揺する。

「「エターニャ」!」

その僅かな隙にリエルが覚えたばかりの魔法をヒルテデスに向けて発動する。

黒い墨が突如大小様々な透明の球体の形に弾ける。

まるで全く見えないシャボン玉のような球体はそれぞれが触れた瞬間に音を立てずに爆発する。

ヒルテデスの身体のあちこちで大小様々な規模の爆発が起こり、決して見逃せない規模のダメージを与える。

「ゴポポポ…ぐ…う…ど、どこだ…!?」

一瞬ヒルテデスがセツリを見失う。

セツリは毒によってボロボロになりながら墨を突き破ってヒルテデスの目の前に現れる。

『真空斬り!』

セツリの剣がヒルテデスの3本目の触手を斬り裂く。

「ゴポポポ…おのれぇぇええええ!!!」

渾身の7連撃!

ヒルテデスの左触手がまずセツリの右斜め下からアッパーの軌道で飛んでくる。

セツリはそれを後ろに下がりながらかわし、かわしざまに水切りの剣で斬りつける。

斬り落とされるのを避けるためにそのセツリを捕まえるべく、ヒルテデスの右触手が摑みかかるが、それを魔法剣が斬り落とした。

ヒルテデスは構わず3撃目の左触手でフックを繰り出すが、セツリはそれを鱗の盾を斜めに構えて、受ける角度を変え、威力をいなす。

鱗の盾を滑るように空振りするその左触手はまたも魔法剣が断ち切る。

「ゴポポポ…ゴポポポ…!!!」

ヒルテデスが泡を吹きながらのたうち回り、連撃に隙ができた間にセツリはヒルテデスに接近し、初撃で斬りつけた箇所に剣を突き立てる。

そして、腕を一周するように泳ぎ、強引に切断する。

「ゴポポポ…がぁっ!」

瞬く間に3本の腕を失い、残り触手が2本の、触腕が2本となる。

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