勇者にとって冒険の書は呪いのアイテムです
⑨ぜつぼうのるーぷ(3)
冒険の書のセーブポイントから再開します。
『おお、勇者よ、死んでしまうとは情けない!』
「…使い所間違うと生き埋めになるな…セツリ?」
ユージーンがこちらを覗き込んでいる。
「?…どうした?」
セツリは自分の状況を一瞬にして把握し、唇を噛む。
またダメだった。
これで12回目の復活だ。段々と破れかぶれになってきている自分がわかる。
2回目の死に戻り以降、何度もセツリ達は作戦を立て直した。
3回目は奇襲で「ホーリ」をかけたセツリとユージーンが後ろから斬りかかり、腕と足を同時に斬り落としたが、次の瞬間、皮膚を突き破って出てきた腕にセツリが貫かれ、死亡。
4回目は開幕でセツリが『稲妻斬り』を放つも、感知され、避けられ、地面を移動してミリが地面に引きずり込まれ、殺される。逆上したユージーンが「赤化」で飛び込むもあえなく殺され、セツリも打つ手がなくなって死亡。
5回目はミリが「イフリ」を試すがやはり効かず、「アガペ」や「ホーリ」を敵にかけてみるという作戦も失敗。ミリがその情報を集めるためにユージーンが死に、セツリもその結果を見届けたところで死んだ。
6回目は『ジーン』および『稲妻斬り』が有効かどうかを試したが、それなりにダメージは与えられるが聖属性で攻撃するほどの威力は得られないことを知ったところでセツリが死亡。
7回目はこの地点から移動し、セツリのみに経験値を集中させ、レベルアップさせる作戦を検討したが、レベルが多少上がったところでどうにもならないことを知っただけだった。
8回目はパンデラをやり過ごすことを考えたが、途中で見つかり全滅。
9回目はミリが氷壁を再度作り、入り口を塞ぎ、その間に瓦礫を取り除いて来た道を戻る作戦を立てるが、途中で氷壁の向こうから黒い矢で射られ全滅。
10回目は万策が尽き、作戦を練れないまま戦闘に突入し、全滅。
11回目はユージーンとミリが囮になり、セツリが影から捨て身の特攻をかけ、パンデラの腕を3本斬り落とすことに成功したが、残りの腕に捕まり、全滅した。
…もう嫌だ。
セツリは涙を流す。
「どうした?セツリ?」
「セツリさん、どうかしたんですか?」
ユージーンとミリが心配そうにこちらを見つめる。
セツリはこれまでの話を2人に全て打ち明けた。
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