勇者にとって冒険の書は呪いのアイテムです

ハイイロチョッキリ

⑧はめつのびょうま(3)

「おおお!」

3人が南の洞窟に入って3時間ほど経過したところで天井が高い開けた空間に出た。

そこはそれほど広くはないが、見晴らしが良く、奇襲も受けにくい場所であったため、3人はそこで休むことにした。

冒険の書が輝いていたため、3人が覗き込むと、ステータスの大幅な更新がなされていた。

「なんだ?ゾンビキラー?」

ユージーンが冒険の書を確認した後、自分の剣を見ると鉄の剣の刀身が水色に輝いていることに気づく。

「名前からして対ゾンビへの威力が高まるのでしょうか?」

セツリとミリが目を輝かせる。

「うわ、かっけぇ!」

ユージーンがおもちゃを得た子どものように刀身を眺める。

「それで?ミリの方の魔法はなんだ?」

「…魔法は本来魔導書を読み込んで構造を理解し、何年も修練してイメージを固め、ようやく発現するものなのですが…こうも一瞬で覚えるとはなんとも複雑な気持ちです…が、使ってみましょう。どうやら強化魔法のようですね」

ミリは長年の苦労を思い出していたのか一瞬顔をしかめたが、すぐに好奇心に負ける。

「「ホーリ」!」

ミリがセツリに向けて呪文を唱える。

セツリの身体の周りをユージーンのゾンビキラーと同じ水色の光が包む。

「なるほど、ユージーンさんの剣も聖属性が付与されてる、ということなのでしょうね。しかし、これは洞窟の調査にかなり役に立ちそうです」

ミリが嬉しそうに笑う。

しかし、セツリだけが悲しそうな顔をしている。

「セツリ…お前、自分だけ新しい魔法とか変わったことが無かったから悲しいのか?」

『…はい』

セツリがしょんぼりと肩を落とす。

「セツリさんがほとんど喋らないのに会話になるのが不思議です」

ミリが苦笑する。

「ただ、これまでの戦闘で、「ジーン」の改良はできたじゃないですか」

『はい』

セツリが頷く。伊達に魔力が尽きるまで「ジーン」を連発させられたわけではない。

『ジーン!』

セツリが呪文を唱えるとセツリの剣が放電を始める。

『稲妻斬り』

セツリの剣がひらめくとその軌跡を轟音ごうおんとともに雷が走る。

壁が大きく穿うがたれ、天井からパラパラと土が降る。

「凄い威力だが使い所間違うと生き埋めになるな」

セツリは鉄の剣を見つめる。

「セツリ?そろそろ行くぞ」

『はい』

セツリは頷き、ユージーンとミリと共に洞窟の先へと進んだ。

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