勇者にとって冒険の書は呪いのアイテムです

ハイイロチョッキリ

④たびのはじまり(3)

セツリは勇者の仲間のフラトニールから冒険の書を託されたこと、魔王を倒す力がこの書にあることを商人に話した。

「なるほど、賢者フラトニール様の作った書だったべか。そして、その話が本当なら凄い書だべ。オラたちは普通モンスターをなんとか倒せてもその経験をアンタたちのように爆発的な成長に繋げることはできねーだ。その力があれば本当に魔王ですら倒せちまうかもしれねー」

「その魔王っていうのはなんだ?俺たちの村ではそんな話聞いたことがないんだが」

『はい』

「まあアンタたちの村はど田舎だから知らないのも無理ねーべ。しかし、常識だから覚えとくだべよ」

商人は語り始める。

はるか昔、突如異世界から魔王エゴールとその手下の魔物たちが現れ、人間たちはなすすべも無く支配されていった。

その時立ち上がったのが聖なる力を持つ勇者ヘンリとその仲間の賢者フラトニール、大戦士ガルド、弓聖ハンナだった。

彼らは魔物との戦い方を試行錯誤の末に会得し、等々魔王エゴールとの対決までたどり着いた。

しかし、彼らの力を持ってしても魔王エゴールを完全に倒し切ることはできず、勇者ヘンリの命と引き換えに魔王エゴールを封印したのであった。

魔王エゴールの封印によって魔物たちの統率は乱れ、人間たちは魔物たちの支配から逃れることができた。

しかし、近年、今まで潜んでいた強い魔物たちが姿を現し、活動を再開し始めた。

多くの強力な魔物は魔王エゴール封印後、勇者の仲間たちによって討伐されたが、それでも逃げ隠れていた魔物たちが今日まで残っていたのだ。

噂では魔王エゴールの封印の力が徐々に弱まっており、復活が近いのだという。

すでに活動を再開した強力な魔物の手によっていくつかの町や村が占領されているという。

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