勇者にとって冒険の書は呪いのアイテムです

ハイイロチョッキリ

③ひとつめのかいぶつ(2)

どうやらこれはセツリの勘違いではないようだ。

『はい』

セツリは今見てきたことを正直にユージーンに話した。

「ちょっと先の未来から戻ってきただって?…にわかには信じがたいな。話の内容からするとお前が死んだらこの時点に戻るってことか?それが冒険の書の力だと、そう言うのか?」

『はい』

「お前が冗談でそんなことを言うとは思えないし、この後ひとつめの怪物と戦うことは間違いないだろう。目を狙う作戦も二手に分かれて逃げる作戦も真っ先に取るだろうな…。うーん…でもまあ少なくともさっきの冒険の書を見てしまうと全くないとは言えないよなぁ」

ユージーンはブツブツと呟く。

「仮にそうだとして、じゃあどうするんだ?完全に手詰まりじゃねぇか」

『………』

「おいおい、マジか。いや、それしかねぇか」

ユージーンは頷く。

「わかった。セツリの言う通り、我慢比べしてみようぜ。確かに商人のおっさんは救援を呼んでくれてるわけだし、2、3日くらい食わなくたって問題はない。ヤツだって腹が減れば洞窟から離れるさ!」

『はい』

そして死に戻りの経験を活かした決死の籠城作戦を開始した。


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