セカンドストーリー ~俺と僕の物語~
僕と俺と再会2
「で、どうしてこうなったか教えて貰おうか?」 
立派な境内の中にひかれた布団の上に功太を寝かし付けた後、俺は虎姫さんと相対するように座った。
「それは昨日の事です。体調が良くなられた功太君を私が簡単に検査をしました」
「検査?」
「貴方が知っているような医療の検査ではありませんよ。功太君の体内に秘めている力がちゃんと機能しているか、をです」
「力ねぇ……何度もアイツに聞かされたけど、俺の世界には無い概念だからなんかわからねぇんだよな」
と言って耳の後ろをカリカリしてみる。おぉ、後ろ足でするってなんか楽だな。近所の野良猫がしているのを見て掻きづらく無いのか?と些細な疑問があったが解消されたわ。
「そうですね。確かに力、と一言で言っても実は深いですから幼少期から学んでないと分からない事が多いと思います。なので、簡単に説明しますと功太君の“道”が切れてないかを調べたのです」
「“道”っていうと、あの《脈動》の事か?」
俺がそう訊ねると虎姫さんは目をぱちくりさせて驚いていた。そりゃあ七年間も話してたら耳には残るわ。険しくは分からないが。  
「聞いていたのですか?」
「まぁ一応。なんか“僕の一族は脈動の力があって地脈から力を借りれるんだって”って昔話してたわ。だが、今でも俺はちんぷんかんぷんだけどな。まず地脈ってのはこの世界にちゃんと目に見えて存在してるのか?」
「はい。存在しています。しかし常人では到底扱いこなすものではありません。厳しい修練をこなし自然と一体になり星の許可が必要です」 
「星の許可か。なんか一気にスケールがでかくなったな」
「それほどに“脈動”という力は希少で難解なのです。ですが、功太君の一族である山名一族は全員この“脈動”を先天的に持っていました」
 
「それはなんでだ? もしかしてただの偶然?」
「そうですね……偶然かも知れませんし、私達竜姫と虎姫を御する為に星が選んだのかもしれません……」 
「星だけが知るって訳か……」 
あっ、なんか顔がむず痒くなってきた。前足で顔を……あぁ、これも近所の猫やってたな。顔を洗うってやつ。
「話を戻しましょうか。それで、私は功太君の“脈動”がちゃんと星と繋がっているかを調べた訳です。そしたら意外な事が分かりました」
「意外な事?」
「それは貴方です。矢岸さん」
「俺が?」
「調べた結果、ちゃんと星と繋がってはいて“脈動”自体に異常はありませんでしたが、その繋いでいる間に奇妙な意思も感じられたのです」
「……意思? それもこの世界じゃ目に見えるのか?」
「目に見えるというか感じたのです。優しい温かな、でもどこか冷たい何かがある、と。そこで私は更に調べたところ貴方という意思が残っていたのが分かったのです」
「……なんか聞けば聞くほど信じられない話だな。俺はアイツを助ける為の力になったんじゃないのか?」
「それは間違いありません。今、功太君の魂は功太君の家族と貴方、そして僅かな自身の魂で保っています。それなのに貴方だけが意思を残して存在するかのかは私でも全くわかり得ない事です」
「神様が分からないとなると……これも偶然なのか奇跡なのか、はたまたこの星の力なのか……ま、考えても分からねえよな」
「そして私はその事を功太君に伝えました。すると、彼は驚いた事を言ったのです」
「……その意思だけを具現化みたいな事は出来ないか、とか言ったんだろ?」
「……流石、別世界であっても同じ人間ですね。その通りです。彼は貴方をこの世界に呼び寄せたいと言いました」
やっぱりか。俺も状況と立場が同じなら迷いなく目の前の神様に頼むな。全く……同じじゃないところが一つぐらいあってもいいのにな。
「で、それは可能なのか?」
「理論上では可能でした。しかしそれに伴う代償もまた必要となります。それで功太君は……」
「左腕を代償としたのか……」
「それだけではありませんよ。彼の不安定な魂と“脈動”の力の一部を私に捧げました」
 
「そんなにかよ……」
「それで成功率は三割程。私は止めたのですが功太君が頑として譲らなくて……」 
「それでやった結果……成功はしたが当の本人はぶっ倒れた、と」
「はい……この後にもう一度検査を行います。それで異常が無ければよいのですが……」 
そう言って眠っている功太を心配そうに見る。俺もつられて見る。
今は安らかに眠っているが、本当に体に異常はないのだろうか?心配だ。
「さて、それはさておき矢岸さん。一つお願いがあるのですが……」 
っ!なにか虎姫様の雰囲気が変わる。この感じ味わった事がある。そう、これは……あの夜の時の感じ!
「な、なんでしょうか虎姫様……?」
「そんな仰々しい呼び方は止めてください。普通に虎姫で構いませんよ。それで頼みというのがですね」
顔が此方に向く。目の奥がハートマークに見えるのは気のせいだろうか?いや気のせいであって欲しい。
「ぜひその体をモフモフさせてください!」
「許可を得る前に飛びかかるなぁ、ぐわぁ!」
まだ動かし慣れないこの体のせいか抵抗もなく捕まる俺。もうしょうがない。礼にもなったし無抵抗でモフらせるとしよう。
「スーハースーハー……ぺろ。ハミハミ」
「おい、モフるのはいいが舐めるな!耳をハミハミするな!」
「いいじゃないですか減るものでもないですから。あ~可愛い~」
それから功太が目を覚ますまで、俺は虎姫さんの気がすむまで玩具にされた。なんか人間の時にあったもん全部無くしちまったよ……  
立派な境内の中にひかれた布団の上に功太を寝かし付けた後、俺は虎姫さんと相対するように座った。
「それは昨日の事です。体調が良くなられた功太君を私が簡単に検査をしました」
「検査?」
「貴方が知っているような医療の検査ではありませんよ。功太君の体内に秘めている力がちゃんと機能しているか、をです」
「力ねぇ……何度もアイツに聞かされたけど、俺の世界には無い概念だからなんかわからねぇんだよな」
と言って耳の後ろをカリカリしてみる。おぉ、後ろ足でするってなんか楽だな。近所の野良猫がしているのを見て掻きづらく無いのか?と些細な疑問があったが解消されたわ。
「そうですね。確かに力、と一言で言っても実は深いですから幼少期から学んでないと分からない事が多いと思います。なので、簡単に説明しますと功太君の“道”が切れてないかを調べたのです」
「“道”っていうと、あの《脈動》の事か?」
俺がそう訊ねると虎姫さんは目をぱちくりさせて驚いていた。そりゃあ七年間も話してたら耳には残るわ。険しくは分からないが。  
「聞いていたのですか?」
「まぁ一応。なんか“僕の一族は脈動の力があって地脈から力を借りれるんだって”って昔話してたわ。だが、今でも俺はちんぷんかんぷんだけどな。まず地脈ってのはこの世界にちゃんと目に見えて存在してるのか?」
「はい。存在しています。しかし常人では到底扱いこなすものではありません。厳しい修練をこなし自然と一体になり星の許可が必要です」 
「星の許可か。なんか一気にスケールがでかくなったな」
「それほどに“脈動”という力は希少で難解なのです。ですが、功太君の一族である山名一族は全員この“脈動”を先天的に持っていました」
 
「それはなんでだ? もしかしてただの偶然?」
「そうですね……偶然かも知れませんし、私達竜姫と虎姫を御する為に星が選んだのかもしれません……」 
「星だけが知るって訳か……」 
あっ、なんか顔がむず痒くなってきた。前足で顔を……あぁ、これも近所の猫やってたな。顔を洗うってやつ。
「話を戻しましょうか。それで、私は功太君の“脈動”がちゃんと星と繋がっているかを調べた訳です。そしたら意外な事が分かりました」
「意外な事?」
「それは貴方です。矢岸さん」
「俺が?」
「調べた結果、ちゃんと星と繋がってはいて“脈動”自体に異常はありませんでしたが、その繋いでいる間に奇妙な意思も感じられたのです」
「……意思? それもこの世界じゃ目に見えるのか?」
「目に見えるというか感じたのです。優しい温かな、でもどこか冷たい何かがある、と。そこで私は更に調べたところ貴方という意思が残っていたのが分かったのです」
「……なんか聞けば聞くほど信じられない話だな。俺はアイツを助ける為の力になったんじゃないのか?」
「それは間違いありません。今、功太君の魂は功太君の家族と貴方、そして僅かな自身の魂で保っています。それなのに貴方だけが意思を残して存在するかのかは私でも全くわかり得ない事です」
「神様が分からないとなると……これも偶然なのか奇跡なのか、はたまたこの星の力なのか……ま、考えても分からねえよな」
「そして私はその事を功太君に伝えました。すると、彼は驚いた事を言ったのです」
「……その意思だけを具現化みたいな事は出来ないか、とか言ったんだろ?」
「……流石、別世界であっても同じ人間ですね。その通りです。彼は貴方をこの世界に呼び寄せたいと言いました」
やっぱりか。俺も状況と立場が同じなら迷いなく目の前の神様に頼むな。全く……同じじゃないところが一つぐらいあってもいいのにな。
「で、それは可能なのか?」
「理論上では可能でした。しかしそれに伴う代償もまた必要となります。それで功太君は……」
「左腕を代償としたのか……」
「それだけではありませんよ。彼の不安定な魂と“脈動”の力の一部を私に捧げました」
 
「そんなにかよ……」
「それで成功率は三割程。私は止めたのですが功太君が頑として譲らなくて……」 
「それでやった結果……成功はしたが当の本人はぶっ倒れた、と」
「はい……この後にもう一度検査を行います。それで異常が無ければよいのですが……」 
そう言って眠っている功太を心配そうに見る。俺もつられて見る。
今は安らかに眠っているが、本当に体に異常はないのだろうか?心配だ。
「さて、それはさておき矢岸さん。一つお願いがあるのですが……」 
っ!なにか虎姫様の雰囲気が変わる。この感じ味わった事がある。そう、これは……あの夜の時の感じ!
「な、なんでしょうか虎姫様……?」
「そんな仰々しい呼び方は止めてください。普通に虎姫で構いませんよ。それで頼みというのがですね」
顔が此方に向く。目の奥がハートマークに見えるのは気のせいだろうか?いや気のせいであって欲しい。
「ぜひその体をモフモフさせてください!」
「許可を得る前に飛びかかるなぁ、ぐわぁ!」
まだ動かし慣れないこの体のせいか抵抗もなく捕まる俺。もうしょうがない。礼にもなったし無抵抗でモフらせるとしよう。
「スーハースーハー……ぺろ。ハミハミ」
「おい、モフるのはいいが舐めるな!耳をハミハミするな!」
「いいじゃないですか減るものでもないですから。あ~可愛い~」
それから功太が目を覚ますまで、俺は虎姫さんの気がすむまで玩具にされた。なんか人間の時にあったもん全部無くしちまったよ……  
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