セカンドストーリー ~俺と僕の物語~

ブタノスケ

僕と虎姫様とこれからの話 最終話

「奪った?」

「はい。奪い、調整し、貴方の体に入れた。簡単に言うと貴方はご両親と山名功太の命を使って生まれ変わったのです」

生まれ変わった? でも僕の体はどこも変化は……あっ!

「気づきましたか? そう貴方は胸の傷以外に腕も無くされていました。しかしそ傷は塞がり腕もある」

「こ、これはどうして??」

「先ほども言いましたが、私の力は奪う力。ですが、それを多少応用することも出来るのです」

「応用ですか?」

「はい。調整もその一つですが、今回私が行ったのは貴方達四人分の命を奪い、それを私から奪って貴方の体に入れたのです」

「っ! それって別の言い方をすれば与える力では無いのですか!?」

「似てはいますが違います。というよりそんな事をしたら私は死んでしまいす。四人分の命、私、それと貴方の体。その三つの要素が奇跡的に合わさって出来た事です。正直、失敗する方が大きかったのですが、貴方以外の三人分の命がとても強い意思……いや覚悟があったので成功したのです」

「強い意思?」

「……《助けたい》」

「っ!!」

「……貴方の父、山名きよし」は願いました。『息子を助けたい』と」

虎姫様がポツリと呟く。僕はそれを聞いて目頭が熱くなる。

「貴方の母、山名美佐子みさこ」は願いました。『この命を使って息子を』と」

優しくそれでいて辛そうに語りかけてくる言葉に僕は涙を抑えられなくなる。

「そしてもう一人の貴方、矢岸隆也は次元を越えてまで願いました。『救いたい』と」

もう、無理だった。
少しずつ流れていた涙が溢れて止まらない。嗚咽もでて、もうどうしたらいいか止め方が分からない。

「……いいんです……それでいいんです」

錯乱している僕に虎姫様は優しく抱き締めてくれた。それはもう昔に味わった母親のように優しくて落ち着く心地好さだった。




「す、すみません……」

「いいんですよ。というよりそれが当たり前の反応です」

時間は分からないが、おもいっきり泣き叫んだら一周回って急に恥ずかしくなった僕は虎姫様から離れて謝る。そんな僕を頭を撫でながら優しい表情で撫でてくれる虎姫様。本当に昔の人はこんな優しい人を邪神と避けすんでいたのか。

「さて、これで貴方が生き返った理由は分かりましたね。何か他に質問はありますか?」

「あ、えと……島の人達はどうしましたか?」

「あぁ、彼らなら皆殺しましたよ」

えっ?

「えっ?」

「だって当たり前でしょう。四人もの命を奪い更には竜姫を連れ戻そうとしたのですから当たり前です」 

さも当たり前のように話す虎姫様に僕は一転して恐怖を抱いた。そうか、彼女は人ではない。それに長年恐れられ封印されていたんだ。島の人間に良い感情なんてもつはずがない。

「……なんて、嘘ですよ」

「ふぇ?」

「彼らに慈悲をかける訳ではありませんが、正直彼らには殺す価値もないと私は感じています。それに私よく力ゆえに勘違いされやすいのですが殺すのは好きではありませんです」

「そ、そうなんですか?」

「はい。生まれつきこの力を持っていますからよく根もはもない噂を撒かれたものです。安心してください。彼らは殺さずに記憶だけを奪いました」

「記憶ですか?」

「昔はこんな細かい事は出来なかったのですが、やはり時間をかけると出来るものですね。貴方以外の島民全員から、今まで行ってきたあの忌まわしい行事と竜姫の記憶を奪いました。これであの子達は追われませんし、島民もなんら代わりのない生活をおくれるでしょう。あ、勿論壊れていた物は全て直しておきました」

それを聞いて凄いと思ったのと何処かホッとした気持ちになった。やはり知った人間が死ぬというのは気持ちがよくないものだから。

「それで、貴方はこれからどうしますか?」

「……これから?」

「はい、これからです」

そんなの……どうしようか。
もうこの島に守るべき人はいない。だけど、外に出ていって自由になってどうする?
僕はまだ八才で小学生だ。保護者もいないし島の外のことなんて殆ど知らない。当てにできる人も……あ、一人だけいる。けど、あの人には竜姫様達の保護を頼んだしこれ以上迷惑をかける訳には……

「……もし考えが浮かばないなら、この島に私と共に暮らしませんか?」

「えっ?」

「貴方はまだ幼い、それに力も知恵もない。だから島の外にでる力と知恵をつけませんか?」

「力を……つける……」

「力をつけたら会いに行きましょう。あの子達に胸を張ってただいま、と言えるように」

僕は虎姫様の案に少し考えて……はい!とちか強く頷いた。
待っていて下さい、先代様、美水。強くなってまた一緒に暮らそう。


コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品