攻略対象たちが悪役令嬢の私を熱く見つめてきます!

夜明けのワルツ

ファーストダンス



舞踏会の会場となるボールルームはそれはそれは豪奢なつくりだった。

三階分の吹き抜けの天井には一面フレスコ画が描かれ、巨大なシャンデリアがいくつもキラキラと輝き、女性陣のドレスに光の雨を降り注いでいる。

エドアルドと理紗の入場が宣言されると場内がさんざめき、その熱気に理紗は気圧されそうになった。数えきれないほどの人々の視線が二人に集まった。

思わず手を置いていたエドアルドの腕をきゅ、と握ると、その手の上に手が重ねられた。ちらりと見上げるとエドアルドが無言で頷いてきた。大丈夫だと言いたげに微笑まれ、理紗も頷いた。

ファースト・ダンスを披露するためボールルームの中央に進んでいく。

緊張により肩がこわばってきたが、余計なことは考えず、目の前のエドアルドにだけ意識をかたむけた。

やがて室内管弦楽による舞踏曲の調べに乗せ、二人はぴったり息のあったワルツを披露した。

昼間のワンピースと違い、舞踏会用のボールガウンドレスであってもエドアルドは巧みなリードで理紗を優雅に舞わせた。

くるくると回る景色のなかでも人々の称賛と感嘆の表情はみてとれた。

やがて曲が終わり、二人に盛大な拍手が送られると、次に続けとばかりに人々が一斉にワルツを踊り出す。

うねるような人混みのなかをすりぬけ、エドアルドが守るようにかばいながら進むが、理紗はその手をそっと外した。

前方から赤いカチューシャが近づいてくるのが見えたからだった。



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