攻略対象たちが悪役令嬢の私を熱く見つめてきます!

夜明けのワルツ

ダンスなんて踊れない





やだ、舞踏会なんて行きたくない。




とっさにそう思った。


心の動きが顔にあらわれていたのだろう。
エドアルドがとがめるような目を向けてくる。


「不参加は認められないぞ。我々は舞踏会でファースト・ダンスを披露しなければならないのだから」


ファースト・ダンス?


それって舞踏会で最高位のカップルが一番最初にダンスを披露するやつよね?
なんで私とエドアルドが…と思いハッとした。


エドアルドは王子だ。学園に通う生徒(?)であると同時に舞踏会の主催者側でもあるのだろう。
そして自分は彼のフィアンセだ。


なんてこと…。


理紗は内心うめいた。
そんな大役気が重すぎる。それに。


「──私ダンスなんて踊れない」


「そんなわけないだろう。前に一度ワルツを一緒に踊ったじゃないか」


それは私じゃなくてメアリローズでしょ、と理紗は思った。


だが同時に、この世界で目覚めた日のことを思い出していた。


理紗にとってピアノと声楽は未経験のことだったけれど、レッスンはなんなくこなせた。
そのことをかんがみると、メアリローズが体得していることは理紗もできるのかもしれない。


でもぶっつけ本番は嫌だ。
踊れるかどうかは舞踏会より前に知っておかなければ。


理紗はソファから立ち上がった。


「エド、悪いけどちょっとつきあってくれない?」





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