攻略対象たちが悪役令嬢の私を熱く見つめてきます!

夜明けのワルツ

かすかな寂しさ





「探したぞメアリローズ。今まで何をしていた」


詰問口調のエドアルドがつかつかと歩みより、ドレイクを見据えた。


「私のフィアンセが世話になったようだ。礼を言おう」


…ぜんぜん感謝してない顔でよく言うわ。


「いえ、こちらのレディが具合が悪そうにしているところへたまたま通りかかりましたので。いまは殿下を探しておりました」


「なんだって? どうしたんだメアリローズ」


不機嫌顔が一転して心配顔になり、理紗をのぞきこんでくる。


「…もうたいしたことないわ。ちょっと立ちくらみがして地面に座り込んでただけよ。──ありがとうございました」


ドレイクに礼を言うと察した相手はすぐに下ろしてくれた。


着地したとたんまたふらつく理紗を今度はエドアルドが抱き上げる。ドレイクほど軽やかではなかったが、しっかりとぶれない腕の感触に案外男らしいのねと理紗は思った。


「…エド、お腹すいた」


「わかった。では行こう」


ドレイクはエドアルドにシュバルツとのことを黙っていてくれた。
最後に礼を言おうと思ったが、彼の姿はもうどこにも見当たらなかった。


「メアリローズ?」


どうかしたのかとエドアルドに問われ、理紗はなんでもない、とつぶやいた。


フィアンセだという男の腕に抱かれながら、まるで迷子の子供のような気分だった。


あの無精髭をつついたときの感覚をぼんやり思い返しながら、かすかに寂しさを感じていた──



















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