攻略対象たちが悪役令嬢の私を熱く見つめてきます!

夜明けのワルツ

ハンドバッグ





リュカの部屋をあとにして廊下を進んでいくと、やがて外へ出られそうなガラス窓を発見した。すでに大きく開いており、そよそよとそとの風を運んでくれている。


そこから漂ってくる焼きたてのパンのような甘く香ばしい香りに誘われ、理紗はふらふらと窓に近づいていった。ぐぅとお腹の虫が鳴る。


窓枠を握り身を乗り出して確かめると下は何もないただの芝生だった。もちろん一階だ。キョロキョロとあたりに視線をやり、人目がないのを確かめると「えいっ」と足をかけ窓から外へ脱出した。こうでもしないと延々と続く廊下地獄から抜け出せないと思うからだ。


理紗はお腹がすいていた。朝食からどのくらいたったのかわからないがもうペコペコだった。
とりあえず香りをたどって食べ物がある場所を目指した。


そこでハタと気づいた。あの小さなハンドバッグがないことに。


あ~れ~? どこにいっちゃったんだろう…。


朝の一連の出来事を思い返してみるがもうすでに記憶が曖昧だ。
シュバルツに横抱きされたときは手に何も持っていなかったから、ぶつかったときに取り落としたのだろう。


探しに行くべきだろうが理紗にはもうそれがどこかわからない。
立ち尽くしてため息をついているときだった。


「あの~、大丈夫ですか?」


背後から心配そうな声が聞こえた。
振り向いた目にまずはじめに映ったのは、あの赤いカチューシャだった。







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