もし次があるなら俺はヒーローになりたい。

久間 迅

あいつ本当にいい加減だな(怒)

 目が覚める。眠たくは無い、それが単純な睡眠から覚めた訳では無い事を物語る。
 ふぅ、取り敢えず成功か。ん?近くに鏡?が有るな、取り敢えず『体』を確認しよう。

 「ん、んんん·····」
 そこに立っていたのは生前の自分とは明らかに違う自分だった。俺は日本人だっが今の俺は、ちょっと背が高め?で普通より痩せてる感じかな、顔は西洋人風。そしてさっきまで話してた奴の着ていたトーガに良く似た物を着ていて髪は銀色、長さは生前と同じ様なちょっと長めだ。

·····あれ?、これちょっと背が伸びて髪伸ばしたら····アイツと結構似てね? 

 「あ、あ、あ、あああぁぁぁぁぁぁ、、、」
 後ろから女の子の嗚咽が聞こえる。振り向くとそこには金髪のショートカットが良く似合う幼い顔付きがとても可愛らしい少女がボロボロの神官服を着て立っていた。

 「信託の書は·····ほ、本物だったのですね!」
 なるほど、その書で俺の転生用の体を作らせた訳か、そう言えば信者共と言ってたな。この子も奴の信者とゆう事か。

 「な、なぁ君。」
 「ひゃっ!ひゃい!!」そ、そんなにビビらなくても良いだろう·····

 「あ、あのさ?その『信託の書』にはなんて書いてあったの?」
 「は、はい!えっとですね。鳳凰の目とデーモンロードの心臓を世界樹から削り出した人型に、なんか上手いことくっつけて祭壇に置いとくと我の息子が汝らを導くぞ♡·····と。」

 我の息子·····何勝手に親名乗ってんだよ。
 (๑´ڡ`๑)テヘって顔をするクロノスが頭の中に浮かぶ。

「な、なるほど。所で君以外に人は居ないのか?」  少女に聞く。信者共と言っていたしこの子1人ではないのだろう。

 「ほ、他の方達は·····」両目に涙を浮かべる少女。も、もしかして·····

 「あ、貴方様のお身体を作る為に·····い、命を··········落としました·····。」
 言うな否や少女は泣き崩れる。鳳凰の目だとかデーモンロードの心臓だとか物騒な物が並んでいると思ったが、あんな奴の思いつき転生の為に命を落とすなんて·····

 いや、違う。確かに命じたのは奴だが彼らが命を賭して造った体は紛れもなく俺の体だ。彼らは俺の為に命を落としたのだ。

  泣き続ける少女。恐らく俺が転生した時に誰か居るべきだとたった1人でここに残され、残り続けたのだろう。
 「クソッ·····」最悪な気分だ、こんな事になるなら俺は転生を望んでいただろうか。

 「·····」さっきまで泣いていた少女がこちらを見ているのに気付く。

 「君、名前は?」
 「あ·····、はい!ティア・ルシューヌです!」
 「ティアが名前?姓がルシューヌかな?」
 「はい!」
 俺は決意する。彼らは命を賭して俺を生み出してくれた。なら俺はそれに見合う、多くの人々を救おう。幸いにもクロノスが言うには俺はヒーローになれるらしいし。
 「そうか·····俺は彩斗 鳴海。クロノスの子供みたいな感じかな。ありがとう、体を用意してくれて。もう君にしか礼を言うことは出来ないけど·····」
 ここで、じゃあさようならとは言えない。せめてこの子だけは·····
 「まずは君から、君を·····俺の持つ力全てを使って幸せにする事を誓う。」
 「?!·········あ、ありがとうございます!!」

 すぐさま土下座をするティア。
 「ちょっ、土下座は禁止!てかあんまり恭しく俺を扱わないで。」 こうゆう扱いは今から幸せにしてあげる子にして欲しく無い。

 「で、ですが·····」申し訳無さそうにするティア。
 「俺が嫌なんだ。気にしないで欲しい。」
 「·····わ、分かりました·····サイト様。」
様も付けないで欲しいが、流石に厳しいか·····。

 

 転生早々にヘビーな事情を突き付けられたが何もしない訳には行かない。1人でも多くの人を救う、我ながら傲慢な目標だがそうでなければ転生した意味が無い。

 

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