もし次があるなら俺はヒーローになりたい。

久間 迅

エピローグ

 パァンッ!!
乾いた銃声が響く。市販はされていない。所持も法律では認められていない。しかし、この不法地帯ではギャング等々により当たり前のように普及している拳銃によるものだ。

  ここでは4日に1度は銃声を聞く。14歳の時、家族旅行でここを訪れ·····運悪く両親を殺され、ここに取り残されてから3年たった今では銃声程度では何も感じない。



 のが普通なのだが今回は違う。まあ、察しがついてるかもしれないが、今回撃たれたのは他でもない·····俺だからだ。

 「い、いてぇ·····」
右の脇腹がとてつもなく熱い。いや痛い。熱さの様な痛みが強烈な苦痛を生み出す。

「もう行こうぜ、女も逃げちまったし。」
「あぁ、そうだな。流石に現場に留まっていちゃ『逮捕』はされちまうしな。」

 俺を撃ったギャングの2人組が何事も無かったかのように俺の前から去っていく。この2人組が俺と同郷·····日本人の15歳くらいの女の子をレイプしようとしているのを見かけてしまい。それを止めようとした結果がこれだ。

 「··········」
 その女の子は俺が止めに入った瞬間逃げ出していた。まあ、それが狙いだったのだから良いのだが·····なんだか寂しい。

 「···············」
 父と母と俺の3人はここが危ないとも知らず、結果両親はここのギャングに殺され、俺は臓器売買の為に捕らわれた。後から知ったことだがその時俺も死んだ事にさせられたらしい。

 「·························」
 俺は解体される前に何とか逃げ出した。そこからは心優い老夫婦に匿ってもらい、窃盗・詐欺·····たまに殺しをする事でこの3年を生き延びて来た。我ながら凄まじい転落劇だ。


 「·································································」
 意識が薄れていく。恐らく助かる可能性は無いだろう。こんな時、俺がテレビで見た『ヒーロー』ならば大丈夫か!!っと助けに来てくれるだろうか。小さい頃はその勇姿に憧れたがそれはテレビの中の事であると俺は既に知っている。

そう現実ではこうやって路地裏で撃たれて死にゆく俺を助けてくれる者は居ない。最早撃たれた痛みは感じない。今はただ寒く、どうやっても抗えない睡魔の様なものに襲われている。寝たら死ぬ。しかしそれを遮ることは出来ない。おやすみ、俺。さようなら、俺。


 こうして俺、鳴海 彩斗は17歳にして路地裏で野垂れ死ぬのであった。

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