受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-

haruhi8128

聖王国との繋がり

「本当に聖女どうこうはいいのか? 一応、ヨルに有利に働くとは思うぞ?」
「世間体的にって話ですよね。うーん……。利用される未来しか見えないので……」
「確かに」

聖女という称号が絶対視されている聖王国と違い、王国ではただの呼び名でしかない。
前回の戦争で王国に味方してヨルは多くの命を救っている。
王国が利用できる人材だと勘違いする輩が出てこないとも限らない。
ただでさえ敗戦国出身なのだ。

「で、なんで不機嫌なんだよ」
「不機嫌じゃないわ」
「いやぁ……」

無理あるだろ。
むくれてるし。
その状態を不機嫌と言わずして何と言うんだ。

「何が不満なんだよ」
「不満なんてないってば」
「そうか、じゃあ俺たちは帰るぞ」
「えっ……?」

固まるアン。

「はぁ……、とりあえず言ってみろって」

結局帰らずに3人でアンの執務室へ。

「今回に関してはライヤは悪くないわ。あのバカ女が今でもライヤを狙っていると考えると不満なのよ」
「不満あるじゃんか」
「ライヤに言ってもどうしようもないでしょ」

それはそうだが。

「彼女が不機嫌だったら誰でも気にするだろ」
「ライヤ……!」

いい雰囲気である。
部屋の端で満面の笑みでご飯を食べるジェスチャーをしているヨルがいなければもっと。

「いたた……。それで、その聖女さんとお2人はどういった関係なんですか?」
「どういった関係って言ってもな……」

一発頭をはたいたらヨルも会話に入ってきた。

「学園の成績優秀者は国外研修があるのは知ってるよな?」
「はい。確か、5年生以降でしたか」

可愛い子には旅をさせよという趣旨の催しだ。

「まぁ、俺たちもそれの対象だったわけだが。折角アンが王女という立場を持ってるから普通に国外の遺跡とかに行くわけにもいかなくてな。聖王国に研修兼訪問って感じで行ったんだ」
「ライヤさんはなぜ?」
「いや、連れて行かれただけ。まぁ、ありがたかったが」

国外研修を許されるのなんて学年に10人もいない。
必然、ライヤ以外は貴族であり、アンについて行かなければ凄いアウェーの中に放り込まれることになっただろう。
アンに巻き込まれた事案の中ではトップクラスにライヤにも利があった出来事だった。

「今思えば、連れて行かなければよかったわ」
「結果論過ぎるだろ……。その代わりに俺が死んでたかもだぞ?」
「ライヤなら逃げるでしょ」
「話が逸れてますよー。それで、聖女様とはどういう関係です?」
「そうか、その話だった」





「まぁ緊張状態にある帝国に行けないっていうのはわかるけどさ……」

2人が5年生のころ。
戦争に行く前。

「何も2週間かけて移動してすることか?」
「国外研修がなくとも国家交流は大事よ」

当時の海洋諸国連合の海岸線の街から大回りして聖王国へと2人は向かった。
万が一にもアンが帝国の捕虜とならないためだ。

「聖王国が帝国と手を組んだらいくらうちでも対応できないわ。それを防ぐには、私たちが出向くしかないでしょう?」
「俺はいらなかったんじゃないか?」
「他の貴族と一緒に遺跡送りでも良かったの?」
「いや、だから。そもそも研修に行かなければ……」
「またライヤの悪評が立つでしょうね」
「……」

ぐうの音も出ない。

「ほら、もう聖王国に入るんだからその辛気臭い顔はしまいなさい。2週間ずっと言い続けてるんだから」
「顔をしまうってなんだよ……」


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