受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-

haruhi8128

ローラー

「ライヤがヨルのことを探してないなんて思ってもみなかったわよ」
「「え……?」」

事情を知らないエウレア以外の生徒たちから疑問の声がこぼれる。

「俺は俺なりに考えてなぁ……!」
「そんなことはわかってるわ! でも、その結果がこれなのに納得がいかないの!」
「生徒たちに心配させるわけにはいかないだろ! もうお前がばらしたけど……」
「心配なんてさせておけばいいの! この間にもヨルや他の子たちがどうなってるかわからないのよ!?」
「……俺の立場じゃ、勝手に動いたらそれを逆手にとられる。それこそ、王家に迷惑がかかるかもしれない」
「……そんなにやらない理由探しが上手かったかしら?」
「……!」

言われて気付く。
確かに、やらない理由しか探していないことに。

「あ、あの、先生……」
「……なんだウィル」
「ヨル先生が攫われたのですか?」
「まぁ、その可能性が高い」
「! なら、先生がこんなところにいていいはずがないじゃないですか!」
「は?」

どういうことだ?

「先生ならヨル先生を見つけられます! 授業なんてして時間を無駄にしてはいけません!」

一応、生徒のことを考えてライヤは出勤してきていたのだが。
生徒に授業なんかと言われてしまった。

「……アン姉さま。先生をよろしくお願いします」
「……もちろんよ。ヨルも見つけて見せるわ」

こうしてライヤは送り出された。




「……俺の判断は間違ってたか?」
「普通の教師なら、正解でしょうね。ただ、ライヤとしては間違いじゃないかしら」

涙をひっこめたアンと共に空を駆けながら話す。

「なるほどなー……」
「そんなことより、今は切り替えよ。ヨルたちを探さなきゃ」
「そうだな。よし、アン、一発殴ってくれ」
「え、いいの?」
「活き活きするな。死なない位程度で」




「よひ」

鼻にちり紙をつめ、頬に氷嚢を当てた状態のライヤが生まれた。

「じゃあ、まずは可能性を潰しておくか」


「先生」
「どうされました? クラブ活動以外でお目にかかるのは珍しいですね……? それ、大丈夫ですか?」
「お気になさらず。それよりも聞きたいことがあるのですが」
「なんでも聞いてください」

訪れたのは魔術クラブの顧問の下。

「この頃起きている生徒たちが行方をくらませていることに関して何か思い当たることはありませんか?」

顔を顰める顧問。
それでもイケメンなのがうざい。

「私も心を痛めています。うちのクラブにいればむざむざ連れ去られることなど無かったでしょうに……」

当初は最も怪しいと思っていた顧問だが、怪しいと思ってフィオナに監視をつけるように頼んでからも行動パターンが変わらなかった。
それまで画策していたとしても、実際に行動に起こすとなれば実行犯が別にいたとしても行動パターンは多少変わらざるを得ない。
それがないという事は、犯人ではない。

実際に話を聞いている感じでも犯人だという感じはしない。

「心当たりは?」
「申し訳ありませんが、ありませんね……。あれば私が自ら鉄槌を下すところでしたのに」
「わかりました。協力ありがとうございます」




「あんな簡単に放しちゃっていいの? もうちょっと絞ったほうがいいんじゃない?」
「物騒なことを言うな。もちろん完全に白ってわけじゃないが、全員を同時に疑い続けてたら進むものも進まないだろ」

で、どうするかって話なんだけど。

「ローラーか?」
「しかないわね。頼んだわよ」

流石のアンも魔力だけで相手を判別できるような域までは魔力制御は上達していない。
ライヤが変態なだけで常人はそんなことできないのだ。

「ルートは?」
「貴族が怪しいと思うから貴族街だな。道までは指定しない。どうせわからないからな」

地獄のローラー作戦が始まった。

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