受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-
テスト終了!
結果は歴然であった。
「な、なにも出来なかった……(パタリ)」
精神的に叩きのめされた8人が床に転がる様は異様である。
学生の証である黒ローブの小さな子たちがそこらに転がっているのだから、外部の人が見たらそれはもう虐待が行われていると判断するだろう。
この場に限ってはあながち間違ってはいないが。
「まぁ、ヨルさんのテスト自体は行えたので良しとしましょう」
この惨状を作った本人はというと、すっきりした顔でわざとらしくそんな批評を行っている。
明らかに物言いがテスト以外の動機があったと言っている。
「ほんとに加減しないのな……」
「あら、ライヤ先生。私たちが加減しなければ2秒で終わるでしょう? できる限り加減しましたよね?」
「2秒はマジで相手を消し炭にすること前提だろ。物騒すぎるわ」
「ただ、ヨルさんは流石ですね」
「無理やり話を……。だが、それは同感だ」
流石に21歳で回復魔法のエキスパートだけあってその行動に迷いがない。
複数人が怪我をしていても並行的な回復で間に合うのか優先順位をつけるのか、そういった判断まで行えていた。
生徒たちがそれなりの手練れだったとしたら悪夢のような状況だっただろう。
一向に敵の人数が減らないのだから。
「先生! 私を過労死させる気ですか!?」
「いや、俺にはまったくそんな意図はない」
「もちろん私にもありませんよ?」
実際アンネ先生がウィルを執拗に狙い、その回復に追われていたので別にヨルを狙っているわけではないのだ。
「……流石アン姉さまですね。ライヤ先生との連携の素晴らしさは及ぶべくもありません」
「そうでしょ! 私たちに勝てるやつなんていないんだから!」
「え……?」
「あ……」
「ふふ……、やはりそうでしたか」
まんまと乗せられたアンの返答に驚く生徒たち。
「1年か……。まぁ、もった方か……?」
ライヤはしたり顔をしているウィルと、その顔が確信の基である「やってしまった」という顔をしているアンを見る。
1年はもったが、そもそもアンがアンネ先生として学園に姿を見せていたことなど両手の指の数より少し多いくらいではなかろうか。
それで見破られるのはセンスがないとしか言いようがない。
潜入ミッションは絶対にやらせてはならないと心に書き留める。
そもそも王女が潜入などすることなどないだろうが。
「ま、いいか。別にばれて困ることじゃないし」
そう言って光魔法による変装を解くアン。
「やっぱりアン姉さまでしたか」
「そうよ。あなたたちは変装魔法を既に使用している私にも負けたってことね」
「ぐっ……」
変装魔法の難易度は高い。
全身に光魔法を使用し、どの角度から見ても不自然でないように偽装する必要があるためだ。
今回の変装は髪色や瞳の色などを変えてメガネを付けただけなの比較的易しいとはいえ、技量が問われる魔法であることに変わりはない。
「ウィル、あなた私のライヤに婚約を申し込んだそうね」
ギラリとウィルを睨み、殺気を放つアンに生徒たちは硬直する。
「……! はい、申し込みました」
それでも、ウィルは引かない。
ここまでくればライヤでも確信を持つ。
少なくとも、アンの殺気を正面から受けられる程度の覚悟を持った発言だったという事が。
「ふぅん、冗談ではなさそうね」
アンは、意外だった。
ウィルはもっと自己主張が弱く、体育祭での宣言でもかなり驚いていたのに。
こんなにも早く行動に移すとは。
ライヤのことだから、というのもあるだろう。
焦る理由は十分にある。
自分の存在だ。
既にほぼ恋仲の自分がいては一刻も早く行動に移さなくてはと考えるのも納得だ。
譲歩するかは別の話だが。
「でも、わかってるの? 国を分ける戦いになるわよ?」
「かもしれませんね」
「おいぃ!?」
国を分かつほどの諍いを視野に入れている2人に対し、ライヤにそんな覚悟はない。
「賢いあんたのことだから、自分がついていけないところに行く前に言っておこうと思ったんでしょうけど」
「……」
他の生徒がいる手前明言はしないが、言うまでもなく戦争である。
学生が動員されるとしてもウィルは1年生であり、実力も足りない。
まず、あり得ない。
「その気概は認めるわ。その上で、姉として、王女としての言葉よ。終わるまでは待ちなさい」
「え……?」
突き放されると思っていたウィルは予想外の言葉に顔を上げる。
「少なくとも今はその時じゃないわ」
「終わってからなら良いと?」
「選ばれるのは私だもの。それにライバルを退けて堂々と自分のものにしないと、気持ちが良くないでしょう?」
自分が負けるなど微塵も思っていない言葉である。
「現状、ライヤの隣は私。文句ある?」
ギュッとライヤの腕を抱き寄せてアンは胸を張る。
ライヤの腕越しではあるが。
そんな様子に男子生徒たちはティムまでも含め、唖然とするのであった。
「ライヤ先生ってモテるんだな……」
「な、なにも出来なかった……(パタリ)」
精神的に叩きのめされた8人が床に転がる様は異様である。
学生の証である黒ローブの小さな子たちがそこらに転がっているのだから、外部の人が見たらそれはもう虐待が行われていると判断するだろう。
この場に限ってはあながち間違ってはいないが。
「まぁ、ヨルさんのテスト自体は行えたので良しとしましょう」
この惨状を作った本人はというと、すっきりした顔でわざとらしくそんな批評を行っている。
明らかに物言いがテスト以外の動機があったと言っている。
「ほんとに加減しないのな……」
「あら、ライヤ先生。私たちが加減しなければ2秒で終わるでしょう? できる限り加減しましたよね?」
「2秒はマジで相手を消し炭にすること前提だろ。物騒すぎるわ」
「ただ、ヨルさんは流石ですね」
「無理やり話を……。だが、それは同感だ」
流石に21歳で回復魔法のエキスパートだけあってその行動に迷いがない。
複数人が怪我をしていても並行的な回復で間に合うのか優先順位をつけるのか、そういった判断まで行えていた。
生徒たちがそれなりの手練れだったとしたら悪夢のような状況だっただろう。
一向に敵の人数が減らないのだから。
「先生! 私を過労死させる気ですか!?」
「いや、俺にはまったくそんな意図はない」
「もちろん私にもありませんよ?」
実際アンネ先生がウィルを執拗に狙い、その回復に追われていたので別にヨルを狙っているわけではないのだ。
「……流石アン姉さまですね。ライヤ先生との連携の素晴らしさは及ぶべくもありません」
「そうでしょ! 私たちに勝てるやつなんていないんだから!」
「え……?」
「あ……」
「ふふ……、やはりそうでしたか」
まんまと乗せられたアンの返答に驚く生徒たち。
「1年か……。まぁ、もった方か……?」
ライヤはしたり顔をしているウィルと、その顔が確信の基である「やってしまった」という顔をしているアンを見る。
1年はもったが、そもそもアンがアンネ先生として学園に姿を見せていたことなど両手の指の数より少し多いくらいではなかろうか。
それで見破られるのはセンスがないとしか言いようがない。
潜入ミッションは絶対にやらせてはならないと心に書き留める。
そもそも王女が潜入などすることなどないだろうが。
「ま、いいか。別にばれて困ることじゃないし」
そう言って光魔法による変装を解くアン。
「やっぱりアン姉さまでしたか」
「そうよ。あなたたちは変装魔法を既に使用している私にも負けたってことね」
「ぐっ……」
変装魔法の難易度は高い。
全身に光魔法を使用し、どの角度から見ても不自然でないように偽装する必要があるためだ。
今回の変装は髪色や瞳の色などを変えてメガネを付けただけなの比較的易しいとはいえ、技量が問われる魔法であることに変わりはない。
「ウィル、あなた私のライヤに婚約を申し込んだそうね」
ギラリとウィルを睨み、殺気を放つアンに生徒たちは硬直する。
「……! はい、申し込みました」
それでも、ウィルは引かない。
ここまでくればライヤでも確信を持つ。
少なくとも、アンの殺気を正面から受けられる程度の覚悟を持った発言だったという事が。
「ふぅん、冗談ではなさそうね」
アンは、意外だった。
ウィルはもっと自己主張が弱く、体育祭での宣言でもかなり驚いていたのに。
こんなにも早く行動に移すとは。
ライヤのことだから、というのもあるだろう。
焦る理由は十分にある。
自分の存在だ。
既にほぼ恋仲の自分がいては一刻も早く行動に移さなくてはと考えるのも納得だ。
譲歩するかは別の話だが。
「でも、わかってるの? 国を分ける戦いになるわよ?」
「かもしれませんね」
「おいぃ!?」
国を分かつほどの諍いを視野に入れている2人に対し、ライヤにそんな覚悟はない。
「賢いあんたのことだから、自分がついていけないところに行く前に言っておこうと思ったんでしょうけど」
「……」
他の生徒がいる手前明言はしないが、言うまでもなく戦争である。
学生が動員されるとしてもウィルは1年生であり、実力も足りない。
まず、あり得ない。
「その気概は認めるわ。その上で、姉として、王女としての言葉よ。終わるまでは待ちなさい」
「え……?」
突き放されると思っていたウィルは予想外の言葉に顔を上げる。
「少なくとも今はその時じゃないわ」
「終わってからなら良いと?」
「選ばれるのは私だもの。それにライバルを退けて堂々と自分のものにしないと、気持ちが良くないでしょう?」
自分が負けるなど微塵も思っていない言葉である。
「現状、ライヤの隣は私。文句ある?」
ギュッとライヤの腕を抱き寄せてアンは胸を張る。
ライヤの腕越しではあるが。
そんな様子に男子生徒たちはティムまでも含め、唖然とするのであった。
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