受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-
看病
「! おいしいですね……」
「そうか? ならよかった」
致し方なくウィルにおかゆらしきなにかを食べさせるライヤだが、流石にフーフーして冷ますなんてことは出来ないのでウィルは少し熱そうである。
少し外で待たされたこともあってある程度は冷えていたのでなんとか食べれているのが救いである。
「はふはふ……」
しかし、美少女がハフハフと口を開いたり閉じたりするのはなんとなく背徳感がある。
どうにかこうにかおかゆを食べきり、横になるウィル。
「先生の前で横になるなんて失礼では……?」
「お前は先生をなんだと思ってるんだ。その程度一国の王女様が気にすることじゃないだろ……?」
「どうしました?」
「いや、よく考えたら今の俺の方が不敬じゃなんじゃないかということに思い至ってな……」
アンに慣れているので気にしていなかったが、王女の寝所を訪ねる男なんてそれだけで要注意人物である。
現在いかにアンの家庭教師という立場を持っているとはいえ、それはそれでウィルの下を訪れていたら問題になりかねない。
「ということで、俺がここに来たことは秘密で……。そういえば毒見してない料理を食べさせるのも中々か……?」
考えれば考えるほどまずい気がしてくるので不思議である。
「ふふ……。えぇ、では二人だけの秘密という事で」
「頼むわ。じゃあ、安静にしてろよ。どうせ俺がいなくなったらすぐエウレアが来るから、何か困ったらエウレアを通してでも言ってくれ」
「あ、ちょっと……」
ワゴンと共に部屋を去ろうとするライヤをウィルが呼び止める。
「どうした?」
「あの、眠れるまで、手を握ってもらってもいいですか……?」
ベッドの掛布団から顔だけ覗かせてそんなお願いをするウィルはいじらしくもあり、同時に年相応でもあった。
「わかった。片手だけでいいか?」
「もちろんです」
ベッドの横の先ほどまでエウレアが座っていた椅子に腰を下ろし、差し出された手を小さな手で握るウィル。
「しかし、意外だな」
「?」
「ウィルがこんなに甘えん坊だなんて」
「……!(先生にだけですよ!)」
「はは、すまん。そう睨むなって」
ライヤの物言いに恥ずかしくなったウィルだが、ライヤが左手でなにかごにょごにょやっているのに気づく。
「先生、それは……?」
「寝るんじゃないのか?」
「そうすぐには眠れないでしょう?」
「それもそうか。これは俺考案の魔力制御の上達法だ」
正確に言えば、ライヤ考案では決してない。
とある作品の修行法を参考にしてみたら、意外とうまく行ったのだ。
「こうやって手に魔力を集めるだろ? そこからこう、指先に魔力の小さな球を作るんだ」
魔力を纏っている右手の指先からポコッと小さな球が出てくる。
「これを手に沿って移動させていくんだ。慣れてきたら数を増やしてみたり、逆向きの球を作ってみたり、お手玉みたいに一度放ってから帰ってくるように制御してもいい。まぁ、最初は1つの球を正確に動かせるのを目標にするべきかな」
「……それはアン姉さまも?」
「ん? あぁ、まぁそうだな。確か教えたのは3年の時くらいだったと思うけど。ちなみに、ウィルもまだこれをやるには早いからな?」
ぎくりとするウィル。
「物事には大抵順序ってものがある。足し算を習った後に引き算をするようにな。そして、基本的には順序に従った方が覚えもいいんだ。焦らなくてもウィルは1年生の時のアンと比べても遜色ないと思うぞ」
「本当ですか?」
「まぁ、1年生の時のアンを知らないから断言はできないけど。少なくとも2年生になる頃には俺と決闘したときのアンくらいにはなると思うよ」
「……ふふ、あのアン姉さまが先生と決闘だなんて……」
「そう笑ってやるな。人間だれしも恥ずかしい過去の一つや二つあるだろう」
アンの中でそれが甘酸っぱい青春の思い出として昇華されているのは置いておくとして、だが。
「そろそろ本当に寝ようかと思います。手を放さないでくださいね?」
「放そうにもウィルが握ってるから俺にはどうにもできないだろう」
「ふふ、そうですね」
話すのをやめ、ライヤの左手をにぎにぎしながらライヤの右手を自由に動く魔力に目をやる。
さきほどライヤ本人が言っていた通り、小さな魔力の球は手に沿って右に行ったり左に行ったり、はたまたちょっと離れて戻ってきたり。
更には磁石の同じ極のように互いに反発していたりもする。
その全てを支配下に置いて独立させて制御しているライヤの技量に寒気すら覚えるウィルだが、同時に安心もする。
これほどの技量を持ったライヤについて行けば自分も強くなれる、そんな気がするのだ。
「おやすみ、ウィル。ゆっくり休め」
先ほど寝ていた時よりもいくらか穏やかな気持ちで、ウィルは眠りに落ちるのであった。
「そうか? ならよかった」
致し方なくウィルにおかゆらしきなにかを食べさせるライヤだが、流石にフーフーして冷ますなんてことは出来ないのでウィルは少し熱そうである。
少し外で待たされたこともあってある程度は冷えていたのでなんとか食べれているのが救いである。
「はふはふ……」
しかし、美少女がハフハフと口を開いたり閉じたりするのはなんとなく背徳感がある。
どうにかこうにかおかゆを食べきり、横になるウィル。
「先生の前で横になるなんて失礼では……?」
「お前は先生をなんだと思ってるんだ。その程度一国の王女様が気にすることじゃないだろ……?」
「どうしました?」
「いや、よく考えたら今の俺の方が不敬じゃなんじゃないかということに思い至ってな……」
アンに慣れているので気にしていなかったが、王女の寝所を訪ねる男なんてそれだけで要注意人物である。
現在いかにアンの家庭教師という立場を持っているとはいえ、それはそれでウィルの下を訪れていたら問題になりかねない。
「ということで、俺がここに来たことは秘密で……。そういえば毒見してない料理を食べさせるのも中々か……?」
考えれば考えるほどまずい気がしてくるので不思議である。
「ふふ……。えぇ、では二人だけの秘密という事で」
「頼むわ。じゃあ、安静にしてろよ。どうせ俺がいなくなったらすぐエウレアが来るから、何か困ったらエウレアを通してでも言ってくれ」
「あ、ちょっと……」
ワゴンと共に部屋を去ろうとするライヤをウィルが呼び止める。
「どうした?」
「あの、眠れるまで、手を握ってもらってもいいですか……?」
ベッドの掛布団から顔だけ覗かせてそんなお願いをするウィルはいじらしくもあり、同時に年相応でもあった。
「わかった。片手だけでいいか?」
「もちろんです」
ベッドの横の先ほどまでエウレアが座っていた椅子に腰を下ろし、差し出された手を小さな手で握るウィル。
「しかし、意外だな」
「?」
「ウィルがこんなに甘えん坊だなんて」
「……!(先生にだけですよ!)」
「はは、すまん。そう睨むなって」
ライヤの物言いに恥ずかしくなったウィルだが、ライヤが左手でなにかごにょごにょやっているのに気づく。
「先生、それは……?」
「寝るんじゃないのか?」
「そうすぐには眠れないでしょう?」
「それもそうか。これは俺考案の魔力制御の上達法だ」
正確に言えば、ライヤ考案では決してない。
とある作品の修行法を参考にしてみたら、意外とうまく行ったのだ。
「こうやって手に魔力を集めるだろ? そこからこう、指先に魔力の小さな球を作るんだ」
魔力を纏っている右手の指先からポコッと小さな球が出てくる。
「これを手に沿って移動させていくんだ。慣れてきたら数を増やしてみたり、逆向きの球を作ってみたり、お手玉みたいに一度放ってから帰ってくるように制御してもいい。まぁ、最初は1つの球を正確に動かせるのを目標にするべきかな」
「……それはアン姉さまも?」
「ん? あぁ、まぁそうだな。確か教えたのは3年の時くらいだったと思うけど。ちなみに、ウィルもまだこれをやるには早いからな?」
ぎくりとするウィル。
「物事には大抵順序ってものがある。足し算を習った後に引き算をするようにな。そして、基本的には順序に従った方が覚えもいいんだ。焦らなくてもウィルは1年生の時のアンと比べても遜色ないと思うぞ」
「本当ですか?」
「まぁ、1年生の時のアンを知らないから断言はできないけど。少なくとも2年生になる頃には俺と決闘したときのアンくらいにはなると思うよ」
「……ふふ、あのアン姉さまが先生と決闘だなんて……」
「そう笑ってやるな。人間だれしも恥ずかしい過去の一つや二つあるだろう」
アンの中でそれが甘酸っぱい青春の思い出として昇華されているのは置いておくとして、だが。
「そろそろ本当に寝ようかと思います。手を放さないでくださいね?」
「放そうにもウィルが握ってるから俺にはどうにもできないだろう」
「ふふ、そうですね」
話すのをやめ、ライヤの左手をにぎにぎしながらライヤの右手を自由に動く魔力に目をやる。
さきほどライヤ本人が言っていた通り、小さな魔力の球は手に沿って右に行ったり左に行ったり、はたまたちょっと離れて戻ってきたり。
更には磁石の同じ極のように互いに反発していたりもする。
その全てを支配下に置いて独立させて制御しているライヤの技量に寒気すら覚えるウィルだが、同時に安心もする。
これほどの技量を持ったライヤについて行けば自分も強くなれる、そんな気がするのだ。
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