転生者、兵器道を極める

山風狭霧

第2章 第8話 スペクトラ

 寝心地の良いベッドから体を起こし、目を覚ます。

 そう、今日はセボンにいる最終日。明日からは学園の寮住まいとなる。

 だから今日の内に済ませることはしておきたい。出なければ次に長期休暇が来るのは3ヶ月後の冬だからだ。

 今日の予定はっと…「回転翼機第陸号機の実験及び採用の可否」と「白露型・秋月型駆逐艦のミサイル駆逐艦化大規模改造」か。




 黒色の軍服に身を包み、大きなグラウンドの真ん中にポツンと佇むヘリコプターを見る。

 部下によると既に制式採用してめいいレベル、だということなので少しばかり期待をしている。

 形状からして戦闘型。しかも魔導式電磁装甲まで付けてある。確かにこれなら通常装甲を薄くし、機動性を高めることも可能だ。

 武装は…設計図によると機首下に半魔導半電動式連装45mmチェーンガンとその間に35mm自動擲弾発射器か。簡単に言うと機関砲とグレポンだな。

 そして機体中央には主翼があり、ミサイルや爆弾、ロケット等が取り付けられる、と。

 エンジンは双発で、パイロット防護の為の装甲や衝撃吸収装置もある、と。

 メインローターはもしもの時のために自動分解機構…つまり墜落しそうになったら自動でバラバラになる。

 ふむ…完璧かね。ただ地球と比べると電子装置の類が低性能で脆弱である、って点かね。

 まぁそこは技研がなんとか開発してくれるだろう。

 「実験を開始します!」

 ギルバルトが仕切り、進行を開始する。

 その瞬間、エンジンが点火し轟音が辺りを包み込む。

 周りの草々は思い思いに激しく揺れ、空気を介して我々にもその迫力と衝撃が波のように押し寄せる。

 そして機体が地を離れ、轟音を伴いながら空へと飛び立つ。

 開発の現場は現代といえども航空機技術は元々1940年代だ…よくここまでやったもんだ。

 次は目標への攻撃実験だ。

 二門のチェーンガンがヘリパイロットの目線と視界を共有しながら目標を睨みつける。

 そして─


 発射速度が毎秒15発を越えるチェーンガン「イーグル」二門が火を噴く。

 榴弾が目標を爆発の渦と化す。

 プシュー、と役目を終えたかのように砲口が一息つく。

 次は自動擲弾発射器「ストライク」の運用実験だ。

 ポンッ、という軽快な音と裏腹に凶悪な爆発物が発射され、爆発が起きる。

 ふむ…運用上問題は無いな。夜間飛行と悪天候時も運用可能となっている。

 これは制式採用もいいだろう。





 昼飯を食堂で済ませ、次は艦艇基地へと向かう。

 そして白露型、秋月型のミサイル駆逐艦改造、と。

 確か第6大型集団ドック、だっけか。

 それにしても…広いな。アダマントと比べても頭がおかしいくらいだ。

 ここにはもう200程の艦艇が在籍しているし、当たり前なのだが。

 …というか200隻の軍艦なぞ、一海洋国家の海軍にも値する。

 そしてそれがここに集結しているのだ。

 …正に、壮観。

 これに正規空母や超弩級戦艦が加わるとなると、気持ちが昂る。

 そしてあそこにいるのは設計局と船舶関係の技研、両方の所長だ。

 「指揮官、お待ちしていました」

 「あぁ、待たせてすまないな」

 「いえいえ、うちにはねぼすけが沢山いますから…」

 「…苦労してるな、すまない」

 「やつら優秀な所が憎めないんですけどね…

 さて、本題に移りますか」

 「あぁ、白露型並びに秋月型駆逐艦の大規模改造、だったか」

 「えぇ、ここの世界の海軍は1隻1隻が弱い、ですがそれを数で補っている」

 「確か隣の領土…ゼル子爵だけでも250隻の大艦隊、だっけな」

 「えぇ。王国…というか王家だけでも3500隻を超えます。そこにもしも奴らが航空機を開発して加わったら…

 …いくらなんでも対処は難しくなるでしょう」

 「…そうだな。そこで高い水準での防空駆逐艦と対艦駆逐艦、か」

 「えぇ。今建造している超弩級戦艦群並びに正規空母群もミサイルや高度な電子装置を装着する予定ではありますが、その力に並びうる随伴艦も必要でしょう」

 「ふむ、そして改造計画の詳細とは?」

 「まず、白露型ですと前方の主砲をル・ファンタスク級と同様な単装砲に。

 そして後部主砲を全てVLSと対艦ミサイルに換装します。

 魚雷は一基を対艦用に据え置き、もう一基は撤去し、短魚雷2基を艦内につけ、甲板には対艦ミサイルをつけます。

 そして高度な魔導電子装置や魔法も使用したレーダーを搭載します。…これが、白露型駆逐艦大規模改造の詳細です」

 「ふむ…前に言っていたイージスシステムの模倣は?」

 「完成はしました。ですがイージスシステムと比べるとどうしても…」

 「いや、それは追々でいい。土台は完成したんだろ? よくやったな」

 「ありがとうございます。

 続けて秋月型に入らして貰いますが…よろしいですね?

 まず、秋月型の前方砲塔2基は据え置きです。魚雷は全撤去。

 そして後部全てを対空ミサイルのVLSにします。

 そして最新のイージスシステム…いやシステムを模倣し、我々が作り上げた『カトブレパスシステム』を採用し、防空力は通常の艦艇の数十倍上回ります。

 対空能力は抜群ですが対艦能力は低下します。まぁ元々が空母の護衛なのであまり影響は無いでしょう。

 そしてCIWSとして機関砲を取り付けます…

 この2つの計画が次世代型駆逐艦です。他にも全ての能力を平均的にした陽炎型駆逐艦計画めありますがまだそっちは煮詰まってないので」

 「ふむ、分かった。それと…不可解な現象が1部の艦で起きているとか」

 「あぁ…私達は『御霊艦』と呼んでいますがね。

 それは推測ですが…未建造だったり沈没だったり何らかの強い無念や、功績があった艦に『何か』が宿ったのではないか、という。艦のアイギスとでも呼べばいいんでしょうか」

 確かに俺も復讐という怒りがアイギスを強くした。

 そして建造中のも含めると観測されている艦は…

 「飛龍」「雲龍」「大鳳」「信濃」「伊吹」「瑞鳳」「グラーフ・ツェッペリン」「大和」「武蔵」「ビスマルク」「ティルピッツ」「伊勢」「日向」「青葉」「雪風」「時雨」「響」「夕立」「綾波」…

 幸運艦と不運艦も含まれるのか…

 そもそも日本海軍とドイツ海軍の艦はほとんどがこの艦のアイギス持ちなのか。…まぁ、そりゃそうだよな。

 確かに建造中であったり、無念の沈没を遂げたり、はたまた幸運艦やおびただしい功績を得た艦であったり…。

 「ふむ…つまり予定されている『第404not found洋上奇襲隊』及び『第416out range洋上遊撃隊』は全てがこの艦…『御霊艦』か。で構成されることになる?」

 「はい。『416洋上遊撃隊』の飛龍型2隻、大和型4隻、瑞鳳型軽空母と伊吹型軽空母…まぁ強襲揚陸艦に改造する予定ですけども。まぁ、主力艦だけでも全て『御霊艦』で構成されますし…日本やフランス・ドイツ海軍の艦艇の殆どは須らく『御霊艦』ですから」

 「ふむ…『スペクトラ』か…」

 「?」

 「いや、なんでもないさ」

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