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世界最強のダンジョン攻略者、学校に入学して普通の人生(スローライフ)を目指す

すかい@小説家になろう

魔族

 一層一層ごとに強烈なモンスターたちが闊歩する中を歩き続け3日ほど経った。
 4日目の途中、50層に到達したところで転移門が発見できた。


「これって……?」


 先を行っていたフローラ姫に声をかけられて俺も確認する。


「調べないとわからないけど、多分ある程度ショートカットできる」


 ダンジョン内の転移門は結構数がある。その多くは先に進むため、あるいは帰りを楽にするために作られており、一方通行のものが多い。


「調べてわかるものなの……?」
「筆記試験になかったか?」


 転移門の魔法陣から転移先を証明する問題はあったはずだ。


「あれ、解かせる気がない問題だったよね……」
「そうですね。流石に資料無しであの場で解析するには時間も足りませんし……」


 フローラ姫とシズクがそう言うが、Bランクくらいの冒険者、ここでいうと引率の講師レベルなら解けるはずだ。
 見たところ30層につながっているところまではぱっと分かる。


「講師の人たちに確認してもらってから来てもらっても?」
「あれ?リカエルくんならすぐ解いちゃうかと」
「それはそう、というかもうどこに行くかはわかってるんだけど、多分いま全員で行くと厄介だから」
「厄介?」
「ダンジョンは10層ごとにボスがいる。で、ここは本来50層のボス部屋だったはずなんだよ」


 だだっ広い部屋には他にモンスターもおらず、各々休息が取れていることからもわかる。
 ちなみにもう魔物料理にも慣れたもので、いまではなんの抵抗もなくみんな美味しそうに食べていた。
 今日のメニューは黒鳥の唐揚げだ。


「なんでボスがいないのかって話だけど、多分51層から来た人間には襲いかからないようになってるからだ」


 一度倒した魔物は一定時間沸かないとはいえ、ダンジョンに潜っていれば復活サイクルに追いつかれることも多い。そのたびにボスが出てきていたら帰る方からすれば迷惑だし、魔物としても敗れるとわかっている相手に何度も挑まされるのは不幸というわけだ。


「なるほど……。じゃあ私達はボス討伐はなしでも帰れるんだね」
「そこなんだけど、この転移門はもしかしたら戻ってきたという判定にならない可能性がある」
「どういうこと?」
「要は、ショートカットはできるけどある意味トラップみたいなもんで、転移した瞬間か、あるいは転移して一息ついたところでボスクラスのモンスターが出現する可能性が高い」


 具体的に言うとつながっている30層のボスが襲いかかってくる可能性が高い。30層のボスは60層の雑魚よりは強い。全員で行けば守りきれない可能性も否定できないという状況だ。


「ということだから、俺が先に行くから、適当に時間を置いて追いかけてほしい」
「リカエルくんだけで行くの?!」
「マリーを連れて行くとプロテクトが維持できないし、俺がそれを維持してたりしても違和感があるだろう?」


 いま他の生徒達はほとんどがマリーのおかげで生き延びていると思ってくれている。
 フローラ姫とシズクも優秀だが、こんなイレギュラーの中、全員を守って助け出せるほど力の差はない。
 それがわかっているからこそ、底知れない実力を持つマリーのおかげという形で納得しているわけだ。


「でも……」
「姫様、私達がついていっても足手まといです」
「それは……」


 シズクの言い分は元も子もないが的を射ている。


「早く並び立てるようになりましょう。いまはまだです」
「わかってる……」


 フローラ姫が渋々という形で引いてくれた。
 その後段取りをあわせて、マリーにも共有した後、俺は1人でこっそり転移門を抜けた。


 ◇


「予想通りだな」


 待ち受けていたのは触手なのか首なのかわからないミミズのようなものの集合体。
 フォルムだけなら八頭竜とかに近いんだが、見た目がなぁ……。


「一本一本切ってても回復されるから、一気に行くしかないけど」


 どんな形で倒すべきか迷っていた次の瞬間だった。


「!?」
「へぇ、今のも耐えるんだ」


 背後から突然殺気を浴びせられ、慌てて対応する。
 相手の蹴りを身体を反転させてガードしたが、その余波だけで先程の触手の化物は吹き飛ばされて息絶えている。


「お前は……?」
「ひどーい!同じグループにずっといたのに、気づいてくれなかったの?」


 言われてみればいた気がする。いや、その時とは全く雰囲気が違いすぎるのだ。
 髪型、服装、顔立ちは変わっていないが、髪色は明るいマロンから黒髪へ、そして同じく茶色い瞳が赤と青のオッドアイに加え、瞳によくわからない紋様が現れている。
 別人と言われたほうがしっくりくるくらいだ。


「ふふ。別に殺しにきたわけじゃなくてね?」
「今思いっきり急所にきただろ」
「それはきっと君ならなんとかするって信じてたし」


 どこまで本気なのかわからない終始へらへらした態度の女子生徒。
 ショートカットの目立たない生徒かと思ったらとんでもない相手だった。


「いままでは隠していたってことか?」
「んー。隠す必要もないといえばないんだけどね。まあでも、面倒でしょ?あなたならわかると思うけど」


 溢れ出す魔力の量が尋常ではない。
 現役だった頃でも見たことがないほどの魔力の量と、そして禍々しいほどに圧縮された密度。
 もちろん30層のボスではない。これは、ダンジョンボスと同格か、それ以上だ。


「鹿王のダンジョンはこんなもんを抱えているのか……?」


 だとしたら本体の鹿王はどんなレベルだという話になる。


「ふふ。外れだよ」
「どういうことだ?」
「魔王様とお話したなら、もうわかってるんじゃないの?」


 魔王……。
 嫌なものを思い出させてくれる。だが魔王と話した記憶などない。


「お前は……」
「私はね、ダンジョンから出てきたんだよ」
「な……?!」


 ダンジョンから出てくる……?
 知能が高い魔物がいるのは、エルとして活動していたときに知っている。魔王は知らないが、その前に出会ったあいつは、感情もあらわにして、意思の疎通が図れるだけの知能があった。


「神に仇なす者たち。あなたなら足りうるかと思ってたけど、やっぱり折られたままなんだね……」
「何を言ってるんだ……?」


 悲しげに、どこか軽蔑するように伏せた目に見覚えがある。思い出せない記憶の中に、おぼろげに浮かんでは消えていく。やめろ。その目で俺を見るな。


「まあまあ、人間には本来難しい話さ。君はそのままでいいよ。僕はもう少しいろんなダンジョンを巡るから」
「待て。それで、どうする気なんだ……」
「決まってるでしょ?」


 それまでの軽い空気が一気に重く、鋭い目つきでこちらを見る。


「あいつを殺す。私達をこんな目に合わせたあいつを……」


 あいつ……?一体誰を指しているのかわからないが、悲しく激しい感情が溢れたことだけが伝わった。


「じゃ、時間切れみたい」
「え?」


 話をするのに夢中になっていて気づかなかったが、もう転移門から移動を開始したようだった。


「おまけ。これで出られるようにしてあげる」
「そんなことができるのか……?」
「君だって、本当はできたんだよ……?」


 またあの悲しそうな表情でそう告げた女は、自ら作った転移門に飛び込み姿を消した。

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