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世界最強のダンジョン攻略者、学校に入学して普通の人生(スローライフ)を目指す

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鹿王のダンジョン

「ダンジョンの基本を復習する。第1層の特徴をまとめろ」


 移動しながらも授業を行うらしい。先頭を歩く講師が生徒を指名した。


「はい。第1層は基本的には危険なモンスターやトラップはなく、そのダンジョンの特徴が随所に記録されており、これらの情報からダンジョン名や攻略難易度を決定します」
「その通り。今わかっている情報はほとんど、第1層の記録魔法を読み解いたことで得られたものだ。一部の例外は何か説明しろ」


 別の生徒を指名した。


「はい。各攻略者、クリア者によってもたらされたボス攻略情報や、ダンジョン深部で新たに得られる記録魔法からの情報になります」
「いいだろう。幸いうちにはそのクリア者であるマリーもいる。最上位の攻略者たちはそう目にかかれるものじゃない。普段は我々では到達し得ないダンジョン最深部で攻略しているからな。今回はチャンスだ、よく学ばせてもらえ」


 一斉に視線がマリーに向く。そのマリーは俺の袖を掴んで影に隠れるように小さくなっていた。必然的に俺に視線が集まる。


「なんだあれ?」
「おい、知らないなら辞めとけ。100人斬りに絡むのは」
「100人斬りってなんだよ……」


 あの日見ていたのとそうじゃないので反応に差はあるらしい。ある程度あの日の試験が役に立ってるのかもしれない。
 マリーとだけならともかく、フローラ姫はもちろんシズクも実は目立つ存在だ。容姿が優れているという意味で。仮に俺がSクラスでも色々文句が出た気がするし、もうなるようになれという感じだ。


「では、今から向かう鹿王のダンジョンの特徴を答えてもらおうか」


 指名されたのはフローラ姫だ。


「はい。鹿王のダンジョンは古くから王国領にある歴史あるダンジョンです。攻略対象のボスは角のある王クラスのモンスターであると伝承がありますが、実際に見たものはいないといわれています。最高到達層は97層、ボス階層は不明。30層を超えると急激に難易度が上がり、現在は29層までしか一般開放されていません。低層からバランスよくモンスターやトラップが並びますが、アイテム量は少ないためアカデミーが教育のために利用する以外はほとんど攻略者が来ない状況です」
「いいだろう。補足する点もあまりないな」
「ありがとうございます」


 完璧王女と小声が聞こえるが、座学も実技もSクラスでトップの王女となれば名前負けもしていないだろう。マリーは例外として、だ。


「今回は3層までの案内を行い、そこから先は自由だ。ここから3ヶ月間は授業であり、試験期間。成果物に応じて評価を決める。アカデミーでは随時講義も行っているがここにいる者たちは参加が自由だ。アカデミーの書籍や記録魔法もうまく活用するように。ダンジョンに限らなくてもよいが、君たちはダンジョン攻略が最も効率が良いだろうな」


 アカデミーの入学を決めたのは色々あるが、こうしてほとんどの期間が自由にアカデミー内の情報を回収できるというやり方を気に入った部分が大きい。もちろん一番は卒業後に得られる身分の保証だが。在学中にある程度のスキルを身に着けていることを証明できれば、仕事に困ることがなくなるわけだ。


「リカエルくん、私達はやっぱり、ダンジョン攻略は……」
「試験はクリアしていかないといけないし、Sクラスの基準は厳しいだろうから、ダンジョンも使おうと思ってるよ」
「いいんですか?!」
「クリアを目指すのとは違うからな」


 フローラ姫の成績を俺の方針のために落としたとなれば批判は避けられないし、個人的にもそれは避けたい。という話もあるが、もともと成績を稼ぐのはダンジョンが一番効率がいいので使う予定だった。
 成績を求めて例えば鍛冶や調理、販売、事務などのスキルに走ろうとすると、かなり危ない橋をわたることになる。卒業が絶対の目的であるので、そこは外すつもりはなかった。


「マリーもいい狩場を知ってるだろうし、そこは心配しないでいいようにする」
「ん。任せて」
「お二人に任せきりというわけにはいきませんから、私達もがんばります」
「王家の威光にも甘えさせていただくつもりだよ」
「できれば私自身がお役に立ちたいのですが……」
「大丈夫。それも心配してないよ」


 一般開放されていない限定ダンジョンであってもフローラ姫とマリーがいればある程度なんとかなるだろう。俺がよく使ってたところはいま封印されているものが多いはずだからな。


「さて、到着だ。第1層に危険は少ないが、気をつけてかかれ。また、これだけ利用されているところでも隠し部屋や隠された記録魔法の発見はよくあることだ。注意深く観察しながらすすめ」


 いよいよ鹿王のダンジョン、攻略が開始された。


 ◇


 攻略開始後、意気揚々と進んでいたSクラス、Aクラスの先鋭を中心とした鹿王のダンジョングループだが、第1層にして早くもだれている。


「退屈だな……」
「俺は早くモンスターを倒したい」
「もう結構すすんだんじゃないのか?いつ2層にいけるんだよ」


 攻略が開始されてもうしばらく経ってはいるが、このくらいで音をあげていたらこれから先攻略者としての活躍は難しいと感じざるを得ない。なまじ力があるから緊張感もない。貴族として甘やかされ続けてきた悲しい末路かもしれない。


「エル。こんなにゆっくり行く第1層は新鮮」
「それは確かにそうだな」
「いかにもダンジョンという感じですよね。わくわくします」
「姫様、あそこの記録魔法は?」
「あれは29個目のメッセージ。確か内容は……」


 うちのパーティーは各々それなりに楽しくやっていた。
 ちなみに引率がいるためパーティーというよりギルド攻略に似た状態になっているが、一応パーティーの意識強化のために必ずメンバーで固まるように指示されている。


「女連れはいいなーくそ!これなら俺もCクラスから持ってくりゃよかった」
「せめてBにしとけよ」
「平民相手が楽でいいんだろ?」


 男だけの3人組のパーティーが下品に愚痴をこぼしあっている。
 流石に周囲の女性陣からの目も鋭くなってきているが、本人たちは3人で盛り上がってしまっている様子だ。ちなみに講師も3名来ているが、安全指導は行ってもこういうことに口出しはしない。


「ここから2層へ移る」


 先頭を行く講師がそう告げると、だれていた生徒たちにも少し活気が戻ってきた。


「やっとか!」
「これで訓練の成果を発揮できるな!」


 言葉に出さずともはじめての本格的なダンジョン攻略へ、期待に胸を膨らませている様子が見て取れる。


「第2層からはモンスターが出現する。また、このダンジョンは2層からも隠しトラップや隠し部屋があることで知られている。不用意なことをしないように。しっかり自分の身を守れ」


 休憩はないようでそのまま進むようだ。もちろん歩き疲れて音を上げるものはここにはいない。
 いよいよ本当のダンジョン攻略が始まった。



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