ペットショップを異世界にて~最強店長の辺境スローライフ?!〜
003 冒険者ギルド
話を聞いたあと、俺たちは別れて冒険者ギルドに来た。
「あの2人も連れてこれなかったんですか?」
「普通はまぁ、怖いって意識が強いんだろうなぁ」
別れた理由はこれだ。今俺たちはハクに跨ってギルドを目指している。
普通に歩くと1時間以上かかるが、ハクなら流しても10分とかからない。
「それはそうと、ほのかの目的としてもちょうど良かったかもしれないな」
「そうなんですか?」
ハクの背中で楽しそうにはしゃいでいるほのかを見ながら話す。
ギルバードとユウリはハクに怯えて距離を置いていたのを考えると、ほのかがいかに怖いもの知らずかよくわかる。
「これから行くのは冒険者ギルドだ。そこに行けば、スキルやら何やらもわかる」
「スキル……!」
ほのかの目が輝く。
さっきのシーンでは直接目にすることはなかったが、人が死んだという事実に免疫がない彼女はショックを受けるかと思ったが、やはり実感がないようだ。
こっちに慣れた俺は人の死にも慣れ過ぎたし、こっちに慣れてないほのかはまだ話だけで実感につなげられるほどの経験がないというわけだ。
ま、いまは好都合だ。
◇
「ここが、冒険者ギルド……」 
「思ったより大きいか?」 
「そうですね。田舎のデパートと言うか、ショッピングモールくらいの広さですか?」 
「さすがにそこまではないと思うけど、まあかなり大きいのは確かだな」 
  
ギルド自治区、南支部。 
ギルド自治区は帝国領土と森に挟まれる、というより、帝国領土を森から守るような位置づけになっている。南北へ伸びた自治区は、帝国の北に位置するルベリオン皇国領土に接する形で北部へとつながっている。
帝国と皇国が敵対関係にある煽りを受けて、南支部と北支部はお互いに過度の干渉を控えるのが暗黙の了解になっている。 
  
「よォ、アツシ。久々に来たと思ったら女連れかよ」
「なんでこんな時間から酔っ払ってんだよ……」
ギルドは入るとすぐ、木製の丸テーブルが並ぶイートインスペースが現れる。ここには常に、ある程度の数の冒険者が集まっており、万が一にもここで犯罪を犯す気にはなれない第一の防壁にもなっている。
昼も夜も休みなく稼働しているため昼前のこの時間でも酒が出るというわけだ。
「アツシさん!この前見つけたモンスターなんですが……」
「面白そうだな。また詳しく聞かせてくれ」
ギルドは入って正面が飲食店。
右手に依頼を出したり受注したりといった、冒険者の活動を支える施設がある。
左手が生活用品や、基本的な装備類、その他様々なものを置いた店になっていた。 
  
真っ直ぐ冒険者登録のためのカウンターを目指しても、必然的に多くの知り合いにすれ違う。
「アツシさん、すごい人気ですね」 
「いや、クラスメイトに挨拶するようなもんだよ」 
  
何人かに声をかけられながら、ひとまず受け付けスペースまでたどり着く。
「久しぶりですね。アツシさん」 
「三日位しか空けてないよな?」 
「ニホンジンは三日会わないと大変なことになるって教えてくれたの、アツシさんですよ?」 
  
冒険者ギルドの受付嬢、リリアさん。
きつねか猫かわからないが、三角形の耳と八重歯が特徴的な獣人族の女性だ。 “チャーム”のスキル持ちではないかと噂されるほど、人を魅了する愛らしさがあった。
<a href="//22612.mitemin.net/i396832/" target="_blank"><img src="//22612.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i396832/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
  
「それで、今日は女の子を連れてきてるんですね」 
「リリアさんまで……」
「道理でアツシさんは私にはなびいてくれないはずですね……そういう子が好みだったなんて……」 
「こら、やめろ。繊細な関係なんだ」 
  
それでなくても警戒されておかしくない状態なんだ……。
「あら、でもそちらの方は……」
予想に反してほのかは俺に身体が触れるほど接近してきていた。
「ふーん?」 
「なんだ……」 
「何でもありません。それで、今日はどんな用件ですか?」 
「色々あるけど、まずは報告だ。できたらギルドマスターを呼んでほしい」
「アツシさんが自ら指名するなんて……よほどのことがあったんですね」
「端的に説明すると、Bランクパーティー『ギルバード緋剣隊』が半壊した」
「えぇ!?」
リリアさんの声にギルドにいた冒険者の目がこちらに向いた。
「失礼しました……。すぐにギルドマスターにお伝えします」
「あぁ、頼む」
リリアさんが消えてすぐ、ギルド内がざわめき立つ。
「あいつ……今度は何をしでかしたんだ……?」
「いい酒の肴だといいけどな」
ほとんどは対岸の火事といった様子だ。
俺も最低限の連絡と、2人が来た時に時間を作っておくようにだけ伝えて本題に入る。
冒険者の命は軽い。昼から酔っ払いたくなる気分も、少しわかったような気がする。
◇
「それで、用事はまだあるんでしたよね?」
改めてリリアさんの元へ戻ってきた。
「あぁ、一番はこの子の登録だな」 
「あれ、拾ってきた子だったんですか?!」 
「人聞きの悪いことを言うな。同郷人だ」 
  
冒険者の登録に必要なものは特にない。本人から伝えられた情報を入力してもらって、身分証になるカードを発行してもらうだけだ。 
冒険者は実力に応じたランク付けをされるが、登録時には全員ビギナーというランクに振り分けられる。一定期間の成果によってランクを決定するが、ビギナーの間は得られる報酬が少ないので、危険な任務は割に合わない。普通は訓練場を利用した認定試験を受けて、とっととビギナーを脱出することになる。
「アツシさんの同郷……ということは、特別措置を取りますか?」 
「そうだな、それがありがたい」 
認定試験はFランクからBランクまで用意されており、それぞれ費用がかかる。それでもビギナーで報酬をカットされるよりは、認定試験に金を払ったほうが効率がいいので、大体の冒険者はFランクだけでも認定を受けて冒険者生活をスタートすることになる。 
特別措置はこのシステムのさらに応用のような形だ。
「特別措置……?」
 
ほのかが首をかしげて見上げてくる。 
特別措置はギルドに所属する鑑定士による手法だ。こちらのほうが手間は少ないように見えるが、普通は依頼料がかかるので利用されない。
ただ、本来の方法では判明しない“スキル”や能力を鑑定してくれるのがメリットだ。
特に回復や味方の強化を行うサポートタイプや、輸送などの特殊なスキル持ちは本来の評価方法ではたいした成果を挙げることができず、また試験を受けても伸び悩む傾向にある。しかし、いざパーティーを組んで戦うとなればその影響力は絶大なもので、こういった不遇なサポートタイプの保障、あるいは、俺のような素性のわからないものの対応のため、特別措置が用意されている。
「冒険者のランクだけが目的ならともかく、スキルが見たいからな。そのためだ」
「でも、お金がかかるって……」
ほのかの心配はリリアさんによって否定される。
「その心配はありませんよ。アツシさんはSランクですから、このくらいはサービスします」
「そうなんですね! すごいですね!」
「いや、まぁ……」
Sランクの優遇措置の中では大したことがないというか、Sランクにもなってる冒険者ならこのくらいの金額で困ることはないんだが、まぁいいか。
ちなみに俺は冒険者より店の仕事を優先しているから金がない。言ってて悲しくなるな……。
「とりあえず、頼んだ」
「はい」
 
ほのかの力は未知数だが、同じ日本人。何の変哲もない俺が二つもエクストラスキルを持っていたのだから、ほのかに何もないと考える方が不自然だろうと踏んでの判断だった。
「あの2人も連れてこれなかったんですか?」
「普通はまぁ、怖いって意識が強いんだろうなぁ」
別れた理由はこれだ。今俺たちはハクに跨ってギルドを目指している。
普通に歩くと1時間以上かかるが、ハクなら流しても10分とかからない。
「それはそうと、ほのかの目的としてもちょうど良かったかもしれないな」
「そうなんですか?」
ハクの背中で楽しそうにはしゃいでいるほのかを見ながら話す。
ギルバードとユウリはハクに怯えて距離を置いていたのを考えると、ほのかがいかに怖いもの知らずかよくわかる。
「これから行くのは冒険者ギルドだ。そこに行けば、スキルやら何やらもわかる」
「スキル……!」
ほのかの目が輝く。
さっきのシーンでは直接目にすることはなかったが、人が死んだという事実に免疫がない彼女はショックを受けるかと思ったが、やはり実感がないようだ。
こっちに慣れた俺は人の死にも慣れ過ぎたし、こっちに慣れてないほのかはまだ話だけで実感につなげられるほどの経験がないというわけだ。
ま、いまは好都合だ。
◇
「ここが、冒険者ギルド……」 
「思ったより大きいか?」 
「そうですね。田舎のデパートと言うか、ショッピングモールくらいの広さですか?」 
「さすがにそこまではないと思うけど、まあかなり大きいのは確かだな」 
  
ギルド自治区、南支部。 
ギルド自治区は帝国領土と森に挟まれる、というより、帝国領土を森から守るような位置づけになっている。南北へ伸びた自治区は、帝国の北に位置するルベリオン皇国領土に接する形で北部へとつながっている。
帝国と皇国が敵対関係にある煽りを受けて、南支部と北支部はお互いに過度の干渉を控えるのが暗黙の了解になっている。 
  
「よォ、アツシ。久々に来たと思ったら女連れかよ」
「なんでこんな時間から酔っ払ってんだよ……」
ギルドは入るとすぐ、木製の丸テーブルが並ぶイートインスペースが現れる。ここには常に、ある程度の数の冒険者が集まっており、万が一にもここで犯罪を犯す気にはなれない第一の防壁にもなっている。
昼も夜も休みなく稼働しているため昼前のこの時間でも酒が出るというわけだ。
「アツシさん!この前見つけたモンスターなんですが……」
「面白そうだな。また詳しく聞かせてくれ」
ギルドは入って正面が飲食店。
右手に依頼を出したり受注したりといった、冒険者の活動を支える施設がある。
左手が生活用品や、基本的な装備類、その他様々なものを置いた店になっていた。 
  
真っ直ぐ冒険者登録のためのカウンターを目指しても、必然的に多くの知り合いにすれ違う。
「アツシさん、すごい人気ですね」 
「いや、クラスメイトに挨拶するようなもんだよ」 
  
何人かに声をかけられながら、ひとまず受け付けスペースまでたどり着く。
「久しぶりですね。アツシさん」 
「三日位しか空けてないよな?」 
「ニホンジンは三日会わないと大変なことになるって教えてくれたの、アツシさんですよ?」 
  
冒険者ギルドの受付嬢、リリアさん。
きつねか猫かわからないが、三角形の耳と八重歯が特徴的な獣人族の女性だ。 “チャーム”のスキル持ちではないかと噂されるほど、人を魅了する愛らしさがあった。
<a href="//22612.mitemin.net/i396832/" target="_blank"><img src="//22612.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i396832/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
  
「それで、今日は女の子を連れてきてるんですね」 
「リリアさんまで……」
「道理でアツシさんは私にはなびいてくれないはずですね……そういう子が好みだったなんて……」 
「こら、やめろ。繊細な関係なんだ」 
  
それでなくても警戒されておかしくない状態なんだ……。
「あら、でもそちらの方は……」
予想に反してほのかは俺に身体が触れるほど接近してきていた。
「ふーん?」 
「なんだ……」 
「何でもありません。それで、今日はどんな用件ですか?」 
「色々あるけど、まずは報告だ。できたらギルドマスターを呼んでほしい」
「アツシさんが自ら指名するなんて……よほどのことがあったんですね」
「端的に説明すると、Bランクパーティー『ギルバード緋剣隊』が半壊した」
「えぇ!?」
リリアさんの声にギルドにいた冒険者の目がこちらに向いた。
「失礼しました……。すぐにギルドマスターにお伝えします」
「あぁ、頼む」
リリアさんが消えてすぐ、ギルド内がざわめき立つ。
「あいつ……今度は何をしでかしたんだ……?」
「いい酒の肴だといいけどな」
ほとんどは対岸の火事といった様子だ。
俺も最低限の連絡と、2人が来た時に時間を作っておくようにだけ伝えて本題に入る。
冒険者の命は軽い。昼から酔っ払いたくなる気分も、少しわかったような気がする。
◇
「それで、用事はまだあるんでしたよね?」
改めてリリアさんの元へ戻ってきた。
「あぁ、一番はこの子の登録だな」 
「あれ、拾ってきた子だったんですか?!」 
「人聞きの悪いことを言うな。同郷人だ」 
  
冒険者の登録に必要なものは特にない。本人から伝えられた情報を入力してもらって、身分証になるカードを発行してもらうだけだ。 
冒険者は実力に応じたランク付けをされるが、登録時には全員ビギナーというランクに振り分けられる。一定期間の成果によってランクを決定するが、ビギナーの間は得られる報酬が少ないので、危険な任務は割に合わない。普通は訓練場を利用した認定試験を受けて、とっととビギナーを脱出することになる。
「アツシさんの同郷……ということは、特別措置を取りますか?」 
「そうだな、それがありがたい」 
認定試験はFランクからBランクまで用意されており、それぞれ費用がかかる。それでもビギナーで報酬をカットされるよりは、認定試験に金を払ったほうが効率がいいので、大体の冒険者はFランクだけでも認定を受けて冒険者生活をスタートすることになる。 
特別措置はこのシステムのさらに応用のような形だ。
「特別措置……?」
 
ほのかが首をかしげて見上げてくる。 
特別措置はギルドに所属する鑑定士による手法だ。こちらのほうが手間は少ないように見えるが、普通は依頼料がかかるので利用されない。
ただ、本来の方法では判明しない“スキル”や能力を鑑定してくれるのがメリットだ。
特に回復や味方の強化を行うサポートタイプや、輸送などの特殊なスキル持ちは本来の評価方法ではたいした成果を挙げることができず、また試験を受けても伸び悩む傾向にある。しかし、いざパーティーを組んで戦うとなればその影響力は絶大なもので、こういった不遇なサポートタイプの保障、あるいは、俺のような素性のわからないものの対応のため、特別措置が用意されている。
「冒険者のランクだけが目的ならともかく、スキルが見たいからな。そのためだ」
「でも、お金がかかるって……」
ほのかの心配はリリアさんによって否定される。
「その心配はありませんよ。アツシさんはSランクですから、このくらいはサービスします」
「そうなんですね! すごいですね!」
「いや、まぁ……」
Sランクの優遇措置の中では大したことがないというか、Sランクにもなってる冒険者ならこのくらいの金額で困ることはないんだが、まぁいいか。
ちなみに俺は冒険者より店の仕事を優先しているから金がない。言ってて悲しくなるな……。
「とりあえず、頼んだ」
「はい」
 
ほのかの力は未知数だが、同じ日本人。何の変哲もない俺が二つもエクストラスキルを持っていたのだから、ほのかに何もないと考える方が不自然だろうと踏んでの判断だった。
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