幼馴染の妹の家庭教師をはじめたら疎遠だった幼馴染が怖い 〜学年のアイドルが俺のことを好きだなんて絶対に信じられない〜

すかい@小説家になろう

久しぶりの幼馴染

「お邪魔しまーす」
「あ! 康貴にぃ! はーやーくー!」


 玄関先で挨拶すると、上の部屋からまなみが呼んできた。
 もうすでに細かいやり取りはなく直接まなみの部屋に向かうのにも慣れてきている。元々勝手知ったる人の家というのもあるが。


「やっほ! もう始めてるよ!」
「お、おう……」


 テスト期間に差し掛かったところで、俺の勉強を心配してくれたおばさんから家庭教師はお休みの提案をしてもらっていた。
 ただすでにまなみの家庭教師も予定に組み込んでいたためどうしたものかと思っていたところで、ちょうどまなみから勉強会の提案を受けたのでこうして高西家にお邪魔している。
 なんだかんだ人に教えることで勉強になる部分は多いので来れて良かった。


 ただ、予想外のことが2つ。
 1つは――


「なに……?」
「いや、何もない……けど……」


 部屋にはすでに愛沙の姿があったこと。
 相変わらず不機嫌を隠さない表情と冷たい声音で、目を合わせずに声をかけられる。


 そしてもう1つの予想外は――


「な〜に〜? 康貴にぃ、お姉ちゃんがいるから緊張してるの〜?」


 ニヤニヤ笑うまなみのあまりにもあまりにな薄着だ。
 タンクトップのせいであちらこちらの肌が露出しており、ショートパンツがちらっと見えるが角度によっては履いてないようにすら見えてしまう。
 幼いとはいえ間違いなく美少女ではあるまなみの無防備な姿に思わず反応してしまいそうになって必死に目をそらした。


「まなみ。この男すごい顔で貴方のことみてるわよ」
「えっ? お姉ちゃんがいるから緊張してるんじゃないの?」


 どちらも外れではないのがつらい。今の俺に出来ることは黙って耐えるだけ……。
 幸いなことにほどなくして下の部屋から助け舟がもたらされた。


「ごめんなさいねぇ。テスト前だって言うのに」


 ケーキと紅茶をお盆に載せたおばさんが救世主に見えた。


「いえいえ、良い復習になるので良かったです。すみませんケーキまで……」
「いいのよそんなの。よろしくねぇ、いつもの倍いて大変だろうけど」
「私を数に入れないで!」


 まなみと同じ扱いに不満を持った愛沙から抗議の声が上がる。
 まあ確かに、一緒にされるのは癪だよな。愛沙の成績は俺より遥かにいいし。


「ふふ……。そうね。愛沙は康貴くんのために一緒にやるんだものね?」
「適当なことも言わない!」
「はいはい。じゃあ3人とも、がんばってね」


 愛沙が怒るがさらりと交わして部屋を出たおばさんに代わり、愛沙の怒りはなぜか俺へと向く。


「全然そんなんじゃないから。勘違いしないで」
「大丈夫、わかってる」


 愛沙が俺のために参加するわけなどないとわかっていることを伝えたが、それでも愛沙の不満は収まらず一層厳しい視線をこちらへ向けていた。


「まぁまぁ。でもお母さんの言ってるのも、全く嘘ではないんだな〜」
「ん?」


 まなみがそういうとバツが悪そうにする愛沙の姿が目に入った。


「なに?」
「いえ……」


 俺は何も言ってない。


「はぁ……。ほら、康貴にぃ、1学期風邪で休んでたときあったでしょ?」
「ん? あぁ、そういえばあったな」
「その時のノート、誰かに見せてもらった?」
「一応……ああそうか。もしかしてそれを愛沙が……?」


 休み明けに暁人から借りたは借りたが、あいつは休み時間の終わり間際から寝るようなやつだ。言われてみればその時の授業内容は3割も頭に入っていなかった。


「ふん」


 そっけない態度を取りながらも丁寧に書き込まれたノートを机の上に出してくれる愛沙になにか懐かしいものを感じて思わずまじまじと眺めてしまった。


「な……なによ」
「あ、あぁ、ごめん。ありがとな」


 素直にお礼を言う。いつもみたいに冷たくあしらわれるかと思ったが、か細い声が返ってきた。


「そ、そう。役に立てるなら……良かったわ」


 顔を赤らめて目を背ける愛沙に何故かドキッとしてしまう。いつもとギャップがありすぎて動揺しているんだと自分に言い聞かせるが、久しぶりに見た幼馴染の柔らかい表情は思いのほか魅力的に映った。


 愛沙ってこんな、可愛かったんだな……。

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