この異世界において「奴隷」は天職である。

古賀 圭司

国は腐る

 「この国を変えるためだ」

 シュバインは奴隷を買った理由をそう答えた。
 
 「聞いておいてすまないが全くわからな

い。奴隷を買ってどう国を変えるんだ?

奴隷1人が変わる国があってたまるか。 

しかもこの国は奴隷を買う文化はあるかも

知れんがそれ以外はなんの問題もないよう

に感じたぞ。もちろん俺はさっきこの地に

降り立ったばかりだから外観がイメージの

大半を占めているがそれでもこの国は活気

のあるいいところだと思ったんだが、」

 

シュバインは俺の言っていることを納得し


たようだった。そして俺にこの国のシュバ


インが変えるべきだと思うところを説明し


始めた。

 「確かにこの国は外観は素晴らしい。

観光名所としてたまに名前が上がるぐらいだ。

だがそれは外部の、短期間しかこの地に滞在していない者の抱く淡い幻想だ。

この国は客をもてなすために国民が血を吐きながら生活している。

もちろんそのことは公に出さないように隠されている。

包み隠さず言えば多額の税金を必要以上に国が巻き上げ、

病院などの設備も整備されていないような状態だ。

こんな発展の遅れた街だからこそ占い師と
して仕事があるのも少々否めないが、

俺はそれを実感する時、

この仕事に憎しみを覚えている。

頼るものがなく無くなり、どれだけ努力して仕事をも報酬の大半は国に吸い取られる。

そんなんじゃあ自分はどうやって生きていけばいいのか教えてくれる存在を欲するんだろう。

この憎い仕事は大嫌いだが、


それで少しは気を楽にしてくれる人々がいる。


だから続けている。」

 ひと昔前の世界の歴史の授業を受けていた

ような感覚になった。

こんなわかりやすいほど国民の権利が尊重

されていない国は大昔の村の独裁者の話の

ようだ。

正直ありきたりだと思ってしまった。

だが、国民は実際苦しい生活をしているのだろう。

唯一の稼ぎ柱である観光業の質を落としてこれ以上に苦しい生活にならないよう、


よそ者には活気のある街を演じていたのだろう。

 少ない給料とは言え大事な家族を守るために必死に生きているのだろう。


国はこの外観を保ち最低限客を楽しませるものだけを整備し、

普通なら国民の支援に当てられる資金を丸々自分の懐に入れているのだろう。

絵に描いたようなクソどもだと実感した。

なんだかよく言えないが少なくともいい気持ちではなかった。

 「なるほど俺が国民のために大きい仕事を果たそうとしているのはわかった。

俺はお前の奴隷として何か手伝うんだろ?こき使われないって言ってくれていたが、


少しくらい無茶な仕事も受け入れてやるよ」


 アキラはかっこいいからと思って少しやる気になっていたが、そんな風に思われたら恥ずかしいので、クールさを装って、
 
 「まぁ、少々の報酬があるならだかな」


 そう、ドヤ顔を決めてやった。


 シュバインはその一連の流れを見て少しだけ口角を上げて、 


 「ありがとう、なら今から俺の家で作戦を練るか」




 そう言って俺を受け入れてくれた。

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コメント

  • 古賀 圭司

    アドバイス頂けると嬉しいです。

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