この異世界において「奴隷」は天職である。

古賀 圭司

占い師

 「……俺は奴隷扱いされないのか?」

 何度も同じことを聞いた。

 シュバインは印象とは全く異なる笑顔をして、答える。
「さっき言っただろアキラ、俺はお前をこき使うことはないぞ。」

 積んだと思っていた異世界人生だったが、そんなことはなかったようだ。

 だが疑問に残ることはたくさんある。

 「シュバイン、あなたは勇者なんでし  ょ?なら奴隷を買おうと思ったのはなぜだ?」

 敬語で話すべきか、タメ口で話すべきか分からず微妙な言葉使いになった。

 「タメ口でいい。正直上下の関係を作るつもりは全くないからな。名前も呼び捨てにしてくれ。」

 気を使ってくれた言葉をかけくれた後、シュバインは本題の回答をした。

「まず前提としてこの国の常識を理解してもらおう。俺はさっき国を守る勇者だと言ったが、アナザーワールドで思われているようなものではないんだ。アキラの世界では職業の一種だと思われている勇者だが、この国においては勇者はただの称号のようなものだ。勇気のある行動をして多くの人々にとって利益のある結果を残したものに与えられる称号だ。二つ名のような感覚で使われていてなんの効果や権力も持たない。ただ少しばかり有名になるぐらいだ。」

 「なんとなくはわかったよ。じゃあシュバインの職業は何なんだ?てっきり勇者だと思ってたんだが違うんだろ?まさかその服装でニートってことはないだろ?」

 中々に失礼なことを聞いた。元いた世界で絶賛引きこもりをしていて面と向かって人と話すことは皆無だったこの俺にコミュニケーション能力があるわけがない。
 だがシュバインはそんなことを気にはしていないようで
 
 「占い師が俺の職業だ。」

 そう俺に告げた。
 
 「占い師?」

 ついさっき聞いたばかりのことを聞き返した。正直ピンと来てなかった。職業占い師とはどんな人なのだろうか、たまに街の商店街の隅っこで怪しげに座っているような人が一番イメージしやすいが、あんな稼ぎ方ではシュバインのように立派な服装や奴隷を買うなど出来るとは思えない。彼の仕事内容には単純に興味が湧いてきた。
  
 「俺の職業にしている占い師は大体の街には1人はいる存在だ。主には政治をする人へ助言をしたり人生の選択を迫られた人の未来を見て少しでもいい方向に進むよう導くのが主な仕事で街の人にもよく頼りにされているよ。」

 少し誇らしげに語ったシュバインはどことなく優しい雰囲気になっていた。シュバインがとても人の役に立つ仕事をしているのはわかった。だがまた一つ新しい疑問が湧いてきた。

 「あんたの仕事は何となくだが理解できたんだが、どうしてそんな人が奴隷なんか買う必要があるんだ?正直召使い程度にしかつかえなさそうだが俺をそんな扱いするつもりもないんだろ?」

 シュバインは答えた。
 
 「この国を変えるためだ」

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