現実

　俺はたった今シュバインという奴に買われた。全くもって納得出来ない、理解できない異常な現実を俺は恨んでいた。

　「なんなんだよ、俺の第2の人生って
　　とてつもなく悲しいな！」

　そう言っている俺はさっきまでの牢獄とは違い、かなり豪華な客室に招かれた。　

「そこに座ってご主人を待て」
　と、ぶっきらぼうに言われた。どこまでもこの異世界は憎たらしく感じるがもう慣れつつある。

　「ふう。どうゆうことなんだよったく」

やっと落ち着ける場所にこれたのだから安堵の息も漏れる。

 だが、そんなにゆっくりも出来ない。今俺は奴隷という状況、シュバインという全く知らない奴に買われたという事実があることは変わらない。
　
　そんなことを考えている間に俺の今からのご主人になるシュバインが到着したようだ。

　ここで俺のこれからの奴隷人生を共にするであろうシュバインの特徴を押さえておこう。　　　　　
　
　見た目としてはがっしりとした体型で、顔は少し怖い。目つきが悪いのがその原因だろう。どう見ても何人か殺っている顔である。その強面の下にある首には何やら傷があるようだが、羽織っているローブに隠れて目立たない。身につけているのは短剣とも言えない長さの刀を腰に差していて、小さな盾を持っている。首には薄汚れて入るが綺麗な柄の首飾りを掛けている。　

相手の観察をしながら俺は思った。

「俺の異世界人生積んだな」すると、

中々怖い様子のシュバインは俺の目をしっかりと見て話し始めた。
「我が名はアルバルト・シュバイン今この時を持ってお前の主人になる。」
 
中二病チックな名乗りをシュバインがすると、俺とシュバインを取り囲む魔法陣が出てきた。
「なんだこれ！？」
驚く俺をほっておいてシュバインは喋り続けた。
「我に名を示せ。さすれば契約の義を終了する。」
そう俺に語りかけた。
少しだけ魔法陣などのオタク意識を刺激された俺はこの悲しい現実を忘れたようにノリよく答えた。

「我が名はアキラ！これよりあなた様に仕える者である！」

もうヤケクソである。このシュバインとか言う奴と俺は異世界生活をする事を覚悟した。

俺の語りが終わると魔法陣は光りながら消えていった。

そして間も無くシュバインはさっきより少し親しみのわくような穏やかめな声で俺に語りかけてきた。

「アキラ、お前は俺の奴隷になった。
俺は一応この国を守っている勇者だということになっている。俺もお前と同じ世界からきた。安心しろお前を奴隷とはいうもののこき使うことはしない。」

 「へ？」
　予想もしなかった言葉が次々と聴こえてきて、俺は思わず何とも言えない声を出した。
　まず第一にやはり俺はシュバインの奴隷になってしまったようだ。
　第二にあんな強面のシュバインは国を守っている勇者なんだと、
　第三にシュバインも俺のように転生されてこの世界に送り込まれてきた。
 　そして、最も驚いたのは、俺は奴隷扱いされない奴隷になったのだという事だ。
　全く訳の分からない急展開に俺は驚きを隠せず主人であるはずのシュバインにタメ口で口をきいた。
「俺を奴隷扱いしないのならなぜ奴隷を買ったんだ？勇者なら仲間ぐらいいるだろ？しかも奴隷扱いされない俺の役目はなんなんだ？」
　

　これからシュバインが答えた内容が俺の異世界人生への価値観を大きく変えた。