どこにでもいるニートが異世界転生したら色々カオスになった

ごぼうチップス

ep:2 バカにつける薬はねぇ!2

「危ない!」

無意識に車道に出て、トラックが直ぐ横まで迫っていることに気付いたときにはもう手遅れだった。
当然、絶望的な状況に、俺は死を覚悟する。

その時だった。

「蔵斗ォーーーーー!!」

ドーーーーーーン!!


俺は友人が俺を呼ぶ声と共に、意識を失ってしまう。


ツンツン。ツンツン。
ツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツン。

「やめろーーーーー!俺の体に穴が開くだろうがぁッ!!」

ツンツン。

「えっ?もういいから。ツンツンしなくていいから。意識戻ったから」

「おっはー」
「だ、誰?」
「神、神様」

ん?
神様?

「ご、ご冗談を。そ、そんなのいるわけないじゃないですかー!神様って・・」

目をパチクリとすると、そこには小さな女の子が座り込み、俺を覗き込んでいた。

「おっはー」
「わかったから、もういいよ。それより、ここどこ?たしか俺、近所のコンビニから家に帰ろうとして、それで・・・あっ、春樹は!?春樹はどうなった!?」
「春樹?それって、あの子?」

女の子は指を指す。
俺はその指先をたどり、視線の先に一人の人物が倒れていることに気付く。

「うぅぅぅ」
「まさか、春樹?なのか?」
「たぶんそう。あなたと共にここへ来た」

俺は春樹の元へ走る。

「お、おい、春樹!だ、大丈夫か!?」
「・・・く、蔵斗。俺は」
「二人とも死んだ。だからここへと、転生できたらいいねステーションまで昇ってきた」
「て、転生できたらいいねステーション?」
「そう。転生できたらいいねステーション」

な、なんなんだ。そのとてつもなく頭の悪い名称は。

「・・そ、それって、俺たち、もう元の世界に戻れないってことか?」
「は、春樹。大丈夫か?無理するなよ」
「大丈夫だ。それより」

女神はなにやらうーんと考え込みだし、しばらくした後、口を開いた。

「つまり、あなたたちは、元の世界に戻りたい。そういうこと?」
「できるのか?それなら」

春樹は戻りたいのか?
だが、俺も同感だった。こんなわけのわからない状況で、ずっといるのは堪えられない。夢であってくれとも願う。

「結論から言うと、それはできない。だって、あなたたちはとっくに死んでしまったのだから」
「そ、そんな・・・」

トラックに轢かれて数日が経ち、二人の葬式も行われ、肉体は灰になったと、この少女は俺たちに説明してきた。

「納得できない」
「でも、事実。確認してみる?」
「確認?できるのか?」
「うん。ほら」

そう言って、少女が持ってきたのが、2つのテレビだった。

「ブラウン管テレビじゃないか!」
「しくしく・・・蔵斗お兄ちゃんーー!」
「春樹、なぜお前は・・・うっ」

「!?」
ほら、あなたたちはとっくに死んでいる」

見えてきたのは、俺や春樹の遺影らしきものに泣き叫ぶ家族の姿だった。
俺たちは本当に本当に、死んでしまったのか?

「それで、どうする?」
「えっ?」
「あなたたちは死んだ。だけど、このままと言うわけにはいかない。神界にもルールがある。それは、死んだ生き物たちの魂の事後処理」

そう言って少女は、2つの提案を示してきた。

「一つが私たちのいる神界で、神様見習いとして暮らすこと。でもこれは色々手続きが煩雑しててかなり面倒。主に私が。主に私が」

なぜ2回言った?

「もう一つは?」

春樹がそう問う。

「もう一つは、異世界に転生すること。これはこの場で、ちょちょいと簡単な質問と手続きで実行することができる。私はこちらを強くオススメする。こちらを強く、オススメする」

だから、なぜ2回言う。

「よし、異世界に転生しよう。蔵斗」
「えっ?ちょっと待て。そんなにあっさり」
「いや、この・・」
「私は女神。女神エストア」
「そう、俺たちのせいで、エストア様のお手を煩わすこともないしさ」
「おお、理解が早くて助かる」
「待てって、春樹。そんな簡単に決めていいことじゃないだろ」
「だが、女神様が困っているんだ。それに異世界の方が楽し・・いや」
「おい、春樹。本音がもれていないか。なあ?」
「まあ、いいじゃないか。どっちにしろ、そう変わらないと思うぞ。うん」
「やっぱり、お前ってバカだろ」






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