白の血族

九条一

幕間一(01)

 男はリックと名乗った。私たち神代家の一族とは全く別の血統の無垢人だった。おそらくはゲートを越えてきた異世界人だろう。
 ゲートは各世界に用意されている。使いこなせるならば使ってもいいことになっている。ただ、本来温和な農耕民族が暮らすこの世界には、この男は強烈過ぎた。引き連れていた無垢人たちはいずれも屈強であり、野蛮であった。
 彼は没落した大名に婿入りし、勢力が入り乱れていた尾張地区を瞬く間に統一してしまった。その後、彼は自らの子供たちを婚姻の道具として使い、勢力を拡大していった。まだ無垢人が稀少な時期だったこともあり、容姿に恵まれていた彼の子供たちは珍重されたという面もあるだろう。
 また、彼の勢力は独自の武器を所持していた。十字弓という、扱うのに特別な技術を必要としない弓を農民に持たせ熟練兵に対抗させた。小国では抗えない圧倒的な兵力を作り出し、侵略を繰り返していた。

 ――なぜあの日、忠告を破ってしまったのだろう。後悔しない日はなかった。

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