白の血族

九条一

第一章(32)

「……もう大丈夫だ。ありがとう、綺華」
「お、お礼なんていいよ」
「千梨はもういないけど、杏奈がいる。大事な宝物だ。オレひとりで育てるのは不安だから、綺華も手伝ってくれよな」
「もちろんだよ。姪っ子ってことになるけど、妹みたいなものだもん。かわいい家族が増えたんだよ。これから楽しくなるね」
「そうだな。……今杏奈はどうしてる?」
「もうぐっすり。わたしのベッドで寝てもらってる。わたしは下にふとんを敷いて寝るから」
「そうか。よろしくな」
 そう言って綺華のおしりをぽんっと叩く。
「……統詞くん、そのクセなんとかならないの?」
「ん、何がだ?」
「統詞くんがわたしと話す時、やたらわたしの身体を触るよね?」
「ん、ああ、別にいいだろ?」
「良くないよ! それってセクハラだよ!」
「セクハラは相手が嫌がってる時に成立するもんだ。お前は喜んでるじゃないか」
「――喜んでないっ! 統詞くん、いつか捕まるよ」
「安心しろ。オレが気軽に触るのはお前だけだ」
「………………はぁ。おやすみ、統詞くん」
「ああ、おやすみ」
 綺華は複雑な表情をしながら出ていった。
 
 綺華はもう高一になるが、彼氏ができた、という話はついぞ聞いたことがない。かなりモテるという噂も聞くが、交際の申し込みは全て断っているようだ。
 綺華のクラスメイトの女の子たちがよく遊びに来るが、少し探った感じでは、綺華は男に全く興味を示さないそうだ。
 ……ブラコン、なんだろうなぁ。まあ、変な虫が寄ってくるよりマシか。

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