白の血族

九条一

第一章(24)

『私は榊家に婿入りしてから、榊家一帯の地質調査をしたことがある。裏庭には廃屋があるが、その土台に火山灰が降り積もっていたのだ。そこに建てられた柱は現在もあの廃屋を支え続けている。少なくともあの廃屋は、獄災の時も燃えずに現在まで残っているのだ』
 確かに裏庭の廃屋は相当古い建物だが、まさかそんなに前のものだったとは……。
『そして、あの古井戸の壁面にはこう刻んであった。生命之泉、と。今はもう枯れてしまったようだが、あの古井戸には何か、生命の源となるようなものが湧いていたのではないか、と推測している』
 ……やはりな。昨晩地下室に入ったオヤジは、あの光る水には気づいていない。オヤジが出てから湧いたか、気づかなかっただけか。少なくともここ最近湧いたことは間違いないだろう。
『また、鹿児島が原産地とされているサツマイモが、獄災直後の地層から出土した。痩せた土地でも育つ作物をいち早く取り入れていたことがわかる。サツマイモが本州で本格的に生産されたのは十八世紀に入ってからだ。それを鑑みると、榊家は明らかに独自の技術を保持していたと考えられる』
 農作物の角度からのアプローチか。それは全く思いつかなかった。
『以上のように、この榊家は他の周辺地域とは別の文化を持っていたのは確実だ。そして、榊家の先祖には無垢人が数多く存在している。……これは偶然なのか?』
 無垢人である千梨がいた古代遺跡の洞窟。同じく無垢人の母さんがいた榊家での異文化の痕跡。偶然で語るには、共通点が多すぎるな。

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