白の血族

九条一

第一章(04)

 ――神代千梨(せんり)。オレはこの名前をよく知っている。千梨が……死んだのか……。
「……心当たりがあるみたいだねぇ、統詞くん」
 動揺したのを気取られてしまった。綺華はTシャツの襟首を両手で締め上げる。それを見て杏奈は、ひっ、と声を上げた。
「――あ、杏奈ちゃん、オヤジは何か言ってなかった?」
「……え、えっと、これを渡してくれ、って」
 杏奈はワンピースのポケットから鍵束を取り出した。鍵は三本あり、そのうちのひとつには見覚えがある。
「……こっちのはオヤジの書斎の鍵だな。残りの二本は見たことがない。……とりあえず、書斎に行けってことか」
 オヤジの書斎は、母さんが死んでから入れてもらえなくなった。オヤジが施錠するのを何度か見たことがある。今になってそこへ行かせるというのは、何かしらの意味があるのだろう。

「……綺華、杏奈を見ててくれ。オレは書斎に行ってくる」
「え、わたしも――」
「いや、お前も知っていると思うが、オヤジはあの部屋にオレたちを近づけさせないようにしていた。あそこには何か秘密がある。オレひとりで行ってくるから待っててくれ」

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